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追放された少年はとんでもない存在に王と勘違いされて今日もやらかす(旧題:追放された魔無しの俺にだけ、世界最強の魔法がひざまずく)  作者: seisei


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第59話 アーマー

 アッシュは、大勢の人達に囲まれ、絶賛困惑していた。


「アッシュ様。この面倒な奴らを全て消しましょうか?」


 顔を顰めて悪態を付いたのはレディだ。


 アッシュは肩をすくめて見せる。


「ダメだよ」


 力強く否定するアッシュだが、本心では目の前の群衆を排除して欲しいと心より思っていた。


 どうしてこうなったと、問いたい。


 自分は何もしていないといつものように否定した。


 面倒事に巻き込まれないための知恵と言うよりも、本気で何もしていないから自分は無関係と信じている。


 それなのにこの有様は解せない。


「マリア。君のお客さんだよ」


 離れたところから群衆に巻き込まれているアッシュを見ているマリアに言う。


「いえ。皆様、アッシュ様にご用ですわ。アッシュ様が誠意を持ってご対応されないとダメです」


 アッシュは顔を顰めて天を仰いだ。


 何が起こっているか?


 それは名付けだ。


 ハイエルフは生まれると共に真名まなを授けられる。


 それは親からだったり、重役だったりするのだが、今回は特殊な状況だ。


 ハイエルフの里の復活した人々は生まれ変わったわけで、真名まなは復活させたアッシュが名付け親となって欲しいと願い出ているのだ。


「こんなにたくさんの名付けなんてできるはずがないよ」


 アッシュはさっきから一人一人丁寧にお断りしているのである。



☆★☆



 ようやく、全ての人にお断りして解放されたのは翌日のことだ。


「早くシアを助けに行かないと」


 アッシュは気が気ではない。


 ところが当の母親である女王がとんでもない厄介ごとを言い出す。


「シアはもう諦めました。村の恩人をシアのために危険に晒すわけにいきませぬ」


 女王の声には有無を言わせぬ力がある。


「アッシュ、許してくれ。これはこの里の掟なのだ」


 精霊王子が説明する。


「君たちの気持ちはありがたいけど、俺は何よりも縛りを掛けられるのは苦手なんだ。

 自由にやりたいようにやるって生まれる前から決めているんだよ」


 アッシュは前世の死ぬ前の決意を説明する。


「アッシュ殿。ではせめて、最高の準備を整えて行ってくれ。我が里は可能な限り協力させてもらおう」


 精霊王が深く頭を下げて言った。


 アッシュはなんとも居心地がよろしくない。


「精霊王陛下。お願いですから頭を下げないでください。

 俺なんか吹けば飛ぶような無位無冠の若造になどそんな礼は本当に不要です」


 アッシュは苦り切った顔で言う。



☆★☆



 やりにくい!


 アッシュは絶賛困り果てていた。


 なぜならアッシュの工房に無数の人達が入り込んでアッシュの一挙手一投足の全てを目に焼き付けようと鋭い視線を向けてくるのである。


 気詰まり極まりない。


 しかし、この熱狂的な歓迎ムードにも良い点がある。


「アッシュ様。ご要望のミスリル銀の鉱石をお持ちしました」


 そう言ってハイエルフがアッシュの前に大きな鉱石を置いた。


 ここは、伝説のハイエルフの里なのだ。伝説級の素材が山ほど存在する。


「ありがとう。大切に使わせてもらうよ」


 アッシュは礼を言って早速作業に取り掛かる。


 そこは変態的なこだわりを持つアッシュだ。


 細部にこだわり、技巧を凝らす。


「アッシュ。お主は私のプロポーションに興味があるのか?」


 ニヤニヤしながら姫騎士アテナが尋ねた。


 そのアテナの腕を引っ張って遮ったのは魔眼のソフィアだ。


「ないない。アッシュはただ殿下の服を最高の仕上げにしたいだけ。

 聖女様にはもっと細かなデータを要求していたわよ」


 と、裏事情を説明した。


「何? ならば私は聖女よりも興味がないと? 確かに聖女のものには負けるが……」


 姫騎士が聖女と自分の胸を見比べながら言う。


 笑いながらソフィアは手を左右に振って見せる。


「あなた様のも十分な代物ですよ。

 聖女服とアーマーの違いのせいでしょう。

 アーマーのように硬い素材をあんまり体にフィットさせられないからでしょうね」


 魔眼のソフィアが答えた。


 ほぼ満点の回答である。


 アッシュは、二人の話などそっちのけで姫騎士のアーマーに意識を集中している。


 職人魂に火がついたようで、机の上は様々な設計図が散らばっている。


 アテナは興味津々に完成予想図と書かれた紙を見た。その瞬間にアテナの目がハートに変わる。


「アッシュ。こんなに素敵なアーマーが本当にできるのか?」


 アテナがアッシュの腕を取って尋ねた。


 アッシュは驚いてアテナを見上げた。


「え? ああ、それは少し前の予想図だから今は違う形だね」


 それを聞いた途端アテナの輝いていた目がどんよりする。


「そうか、まあ仕方ないだろう。これはあまりにも非現実的だからな」


 アッシュはアテナの嘆息混じりの言葉に首を傾げる。


「もう少し、設計に時間が掛かるから待っててね」


 アッシュが言う。


「ん? ああ。よろしく頼む」


 アテナは名残惜しそうに完成予想図を何度も見ながら工房を後にする。


 アテナの両肩は少し下がり、元気がない。


 その後ろ姿を見た魔眼のソフィアがニヤニヤと笑う。


「アッシュ君。この完成予想図の方は何が気に入らなかったの?

 とても良さそうじゃない?」


 アッシュはソフィアの持ち上げた紙をチラリと見ると首を左右に振る。


「ダメだよ、そんなのじゃ。このラインも曖昧だし、アテナのような格好いい女の子が着るんだよ。

 めちゃくちゃ格好良くしないと」


 それからアッシュのアーマーの構想のレクチャーが始まる。


「あ、そうだ」


 話の途中で何かを思い出したみたいにソフィアが叫ぶ。


「ごめん。ライドと約束してたんだよ」


 それだけ言うとソフィアは慌てて工房を出ていった。


 ドアをくぐる時にソフィアは一言。


「聞いた私がバカだったわ」


 と呟いていた。


物語のタイトルを変えてみました。

ご意見があれば聞かせてください。

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