第58話 残念な生き物たち
古龍のギガズは、その存在の前に縮こまって平伏していた。
「役目を果たしたのだな」
その巨大な存在が威圧を込めて尋ねた。
ギガズは更に小さくなって地面に頭を付けた。
「我が主。崇高なる真祖アケマドーレ様。どうかお怒りをお納めください」
古龍ギガズが請願する。
「貴様はこの娘が持つあの代物を作った本人に我の伝言を確かに伝えたのだな」
真祖アケマドーレと呼ばれた存在が、足元の小さきモノを見ながら念を押した。
古龍ギガズはアケマドーレの視線に誘われてそのモノに視線を向けると途端に目がハート型に変わる。
「馬鹿者が!」
アケマドーレが吠える。
ぎゃー!
古龍ギガズが慌てて地面に頭をぶつけるように下げた。
「申し訳ありません」
ギガズが鳴き声を上げる。
「アケマドーレ殿。許して差し上げてくださいまし」
二人の話に割って入ったのはアケマドーレの足元のちっぽけなモノだ。
「ハイエルフの姫よ。そなたには関係の無いこと」
毅然とした態度でアケマドーレは言う。
ハイエルフの王女シアは、そんなアケマドーレの姿にため息をついた。
「あなた方はどうしてそうなのでしょう」
人の言うことを全く聞こうとしない。それは種の特性と言っても良いのだろう。
シアの目には、より大きな龍が威圧で相手を従わせようとしているが、それはうまく機能していないと見える。
「ギガズさん。あなたアッシュ様にどのように伝えたのかしら?」
試しにシアは尋ねてみる。
ギガズはシアから視線を避けたまま答える。
「貴殿の親友の娘を預かっているので早々に迎えに来るよう伝えた」
その回答にシアは首を傾げて見せる。
「本当ですか? 威圧して迎えに来なければわたくしを殺すなどと言ったのでは?」
核心をついて尋ねた。
ぐっと詰まるギガズだったが、助け舟が入る。
「わははは、流石にこやつもそれほど馬鹿では無かろう。それほどの宝物を創造するような稀代の大魔術師にまさか喧嘩を売るほど馬鹿ではない」
アケマドーレが笑い飛ばす。
古龍ギガズの目が慌ただしくあちこちに動く様を見て、シア王女はため息をついた。
「それならいいのですが……
アッシュ様を怒らせてはなりませんよ。あの方を怒らせると何が起こるか誰にも分かりません」
しかし残念ながら、シア王女の目の前の巨大な存在たちは、彼女の忠告を素直に聞き届けるような素直な存在ではなかった。
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