第57話 伝言
アッシュを始め、ハイエルフの里の人々は空を埋め尽くすほどの巨大な龍を見上げていた。
「お前が代表か?」
その存在がアッシュを睨み付けて言う。
「え? なんで俺?」
驚きで目を丸くして自分を指差すアッシュ。
「アッシュ君。いいから話を聞いてよ」
アッシュの耳元で魔眼のソフィアが叫ぶ。
「え?」
アッシュがソフィアに驚きの視線を向けるのを無視して、ソフィアはアッシュの背中を龍の方に押しやった。
「あ、とと……」
変な声をあげて皆から前に飛び出すアッシュ。
頭をかきながら空を見上げる。
「やあ、どんなご用かな?」
龍は明らかに顔を顰めて口を大きく広げる。
「ふざけるな人間よ。
さっさと来なければお前たちの大切な姫君の命は保証せぬぞ。
ここより遥か北の山岳地帯だ。
よいか、一刻も無駄にせずにすぐに救いに来い」
龍はそれだけ言うとアッシュの言葉を聞こうともせずに凄い速さで飛び去って行った。
アッシュは「何だったんだ?」と言いたげな顔で後ろを振り向く。
しかし、ハイエルフの里は大混乱に陥っていた。
「おひい様が連れ去られたのか?」
「シア様が……」
「なんだと、お前たちおめおめと帰ってきて……」
生き返ったハイエルフが怒号をあげる。
阿鼻叫喚の渦だ。
アッシュは頭をかきながら、クラスメイトのところへ戻って呟いた。
「大変だね」
「「「「お前が言うな!」」」」
クラスメイトの全力ツッコミが炸裂するのだった。
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