第4話 なんで水晶が分裂して踊ってんの!? しかも俺の真似が下手なんだが?
あの水晶が二つに割れて会場の床に転がっていた。
割れたのは剣鬼と呼ばれる有名な受験生が、試験で放った一振りのせいだ。
二つに割れた水晶をアッシュは見つめていた。
アッシュは例の派手なローブを着ている。
二つに割れた水晶を両手で包み込むと祈るように目を瞑った。
眉間に皺が寄り、目尻は僅かに上がっている。
アッシュはサッと水晶から離れると踊り始めた。
それは前世で見たブレイクダンス。
いかほど練習したのか。見事なリズム感とキレのある動きが秀逸だ。
ブレイクダンスはこの世界には存在しない。
機械的な独特のムーブ、後ろ向きに進むムーンウォーク、次第に躍動感が増し無機物が意志をもって動きだしたかのようだ。
ブレイクダンスはやがてクライマックスに。
背中を床に全身をグルグル回す。一転して床に最後のポーズを取って立つ。
派手なローブが空中に大きく広がり美しい模様を露わにした。鳳凰図。赤と金糸で彩られた一幅の絵画が現れた。
「よし!」
アッシュはそれだけ言うと試験会場のホールを後にした。
静寂。
空気が止まる。
次の瞬間、水晶に変化が起きた。
突然の破裂音と共に水晶が無数の破片に割れた。それは何かのエネルギーに突き動かされたような破裂だった。
水晶の変化は止まらない。一つ一つの破片が無数の小さな女の子に変化していった。
女の子の一人一人は、微妙に違う女の子達だ。
それぞれが個性のある変な踊りを狂ったように踊り始めた。
ひときわ大きな女の子が真ん中に立ってふんぞり返った。
それを見た一人の女の子が言う。
「あなた、あれができる?」
「簡単よ」
真ん中の女の子はそう言うと、先程アッシュが踊っていたブレイクダンスを踊り始める。
しかし微妙に下手だ。
アッシュのように洗練されていない。
呆れて首を振る女の子達。
「私たちが踊る」
そう言うと、周りの女の子達が狂気のようにアッシュの踊りを真似ようとする。
しかし真ん中の女の子よりも下手だ。
真ん中の女の子が首を振り、踊り始める。
しばらくすると真ん中の女の子は床に崩れ落ちた。
周りの女の子達も崩れ落ちてそのままうずくまった。
女の子達は真ん中の女の子を非難するように指差したり、床を踏んで不満を露わにする。
真ん中の女の子は大きく頷くと周りを手招きした。
すると女の子達はまた水晶の破片に戻り、真ん中の女の子に吸い込まれていった。
女の子は次第に大きくなり、試験の時にアッシュと出会った時の水晶の化身に戻った。
彼女はその場に片膝をついた。
アッシュが出て行ったドアに向かって静かに頭を深く深く下げた。
「やはり、王……」
水晶は確信したかのように言うと笑みを顔いっぱいに浮かべた。
学園の初日が始まる。
生徒達が今年のナンバーワンが誰かを競う日だ。
化け物のような学園生達が大暴れして学園が火の海に包まれたとまことしやかに噂される。伝統的な学園の裏行事が始まろうとしていた。
☆★☆
コトリ
その音が怪物たちの戦いの合図となった。
ハイエルフのシア•ソレイユ王女は、額に両手を添えると、額から眩い光線が迸る。
その光線は、姫騎士アテナ•ローデン王女に向けられていた。
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