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追放された魔無しの俺にだけ、世界最強の魔法がひざまずく  作者: seisei


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第2話 天才の集う学園だろ? 変態の集う学園かも……

「長かった……」


 遥かに連なる行列の最後尾を見ながらアッシュは言った。


 彼の目の前に、名門エバンス魔法学園の試験会場のドアがある。


 そここそが、世界最高峰の魔法学府だった。


 掛け値なしの天才しか入れない。


 そして――


 魔なしの俺が、


 魔法を証明するのに、絶対に入らなければならない場所だ。


 アッシュは、不安を胸に会場に入っていった。


 会場は大勢の人でごった返していた。


 彼の視線の先には今まさに入試を受けようとしている人が見えた。


 その受験生は、見るからに強そうに見えた。





「受験番号3260番、アルデバラン・キュラスト」


 受験生が名乗る。


 その名はアッシュも聞いた名前だ。


「救国の英雄バランか。歯応えのありそうなのが来たな」


 試験官の学園教授も期待を持ったのか、少し嬉しそうに言った。


「この水晶に触るんだ。合格ならお前だけにそれが分かる。場合によっては別途水晶が指示を出す。

 そん時は、水晶の指示に従え。

 不合格なら直ぐに分かる」


 救国のバランは少しムッとした顔で頷いた。


「ああ、知ってますよ。不名誉な音でけなされるとか。安心してください。そんなことにはなりませんよ」


 自信満々に答えるバラン。アッシュは感心して聞いていた。


 救国の英雄バランは、優雅な身振りで水晶に手を伸ばす。


 彼の手が水晶に触れた瞬間。


 魔力量が表示された。


 5630、大変な魔力量だ。


 次の瞬間。


 プーーー


 魔の抜けた音が受験会場に鳴り響いた。


 有名な奈落プーと呼ばれる水晶の判定。


 あれほど高い魔力量でも落ちる。あれほど高名でも落ちる。


 アッシュはその結果に驚いてしまった。


 観衆達も意外だったのだろう、首を傾げる者もいる。


 さっきまで悠然としていた救国の英雄バランも残酷な結果を受けてその場に膝を付いていた。


 教授は困った顔でバランを見る。


「邪魔、邪魔……奈落プーが聞こえたろう。後がつかえてんだよ。おい、そいつを放り出せ」


 警備兵に命ずる。


「待て! 何かの間違いだ!」


 救国の英雄バランが叫ぶが警備兵は容赦なく彼を連れ出してしまった。


 なんとも無情としか言えない。


 あんなに強そうな、しかも知名度の高い人が落ちるのかとアッシュは、非常に驚いていた。


「次の人」


 教授が叫ぶと、ある方向の受験生達がざわめいた。


 なんだろうとアッシュもそちらに視線を向けた。その視線の先の受験生達が、サッと左右に分かれた。


 その向こうから颯爽と歩いて来るのは今までの受験生とは隔絶した存在だった。


 彼女は数人の騎士団を共として引き連れていた。


 彼女も騎士の甲冑を身に纏っている。


「姫様。本気でこのような衆目の中、受験する気ですか? 不名誉な結果を大衆の面前で晒してしまったらどうするのです」


 共の一人。他の騎士とは全く雰囲気の違う、身分の高そうな中年紳士が早口で捲し立てているのがアッシュの耳にも入ってきた。


 彼女は、姫騎士と呼ばれる王女アテナだ。ここローデン王国で彼女を知らぬ者などいない。


「構わぬ。必ず合格して見せる。武王陛下にもそのように言って来た。安心して見ていろ」


 姫騎士はそれだけ言うと中年紳士を通り越して試験官の教授の前に立った。


 その瞬間、空気が揺らぎ何も無かったはずの教授の横に、老人が忽然と立っていた。


「おお! 転身の大魔法だぞ」


「あれは大賢者様だ」


「学園長が現れたぞ!」


 観衆と化した受験生たちがザワザワと騒いでいた。


 空間から幻のように現れた老人は、姫騎士が近づくと嬉しそうに笑った。


「久しいなアテナ嬢。しばらく見ないうちに美しい女性に成長したな」


「マリウス学園長。御壮健でなによりです」


 アテナは、そつ無く言うと優雅にカーテシーを披露する。


「ふむ、立派な『恩恵』が現れておられる。さすがに武王の血を最も強く引かれておられるお方だ」


 マリウスは姫騎士の頭上をチラリと見て言った。


「左様ですか。城でも恩恵を感じられる魔法使いはおりませんから」


 マリウスの言葉に嬉しそうにアテナは答えた。


「魔法の恩恵を持つ受験生は、この学園でも稀な存在じゃ。恐らく数年に数えるほど。

 楽しみな生徒が来てくれたものよ。

 さあ、さっさと受験を済ませてワシの部屋でお茶でもしよう」


「大賢者様も、お気の早い」


 姫騎士は含み笑いを漏らす。


「ではさっそくに、水晶に触れてみなさい」


「はい」


 アテナは短く答えると躊躇いも見せずに水晶の上に手を乗せた。


 水晶の上には魔力量が表示された。なんと堂々の万超えだ。恐らく世界でも屈指の魔力量だろう。


 次の瞬間、彼女の耳には澄んだ鈴のような音が聞こえた。


 合格の合図だ。その音は合格した者だけにしか聞こえない。


 そして……


「最大の攻撃魔法を放て」


 大きな受験会場の中にいる人達全員の頭の中にその言葉は響いた。


 それは水晶から発せられているようだ。


 アッシュの耳にも聞こえた。


 ザワリ。


 人々が一斉に体を硬直させた。


 見ると姫騎士は剣を抜いてそれを頭上高くに掲げていた。


 そのポーズは、王国最大最強と言われる広域殲滅魔法の予備動作だと王国民なら誰でも知っている。


 姫騎士が掲げる剣の先に、彼女の魔力が集中する。


 次第に凝縮された魔力から光がほとばしり始めた。


「姫様! こんなところでそんな大魔法を放っては大変なことに……」


 中年紳士が必死に叫んで止めようとした。


 しかし姫騎士は彼を無視した。


「ドラグスレーザー!」


 姫騎士はそう叫びながら剣を前に振り下ろした。


 受験会場に屯していた落第生達が蜘蛛の子を散らすように我先に逃げようとする。


 アッシュはその波から離れて見守っていた。


 押し倒して逃げ惑う者、人の上に乗り掛かり逃げようとする者、様々だ。


 姫騎士の振り下ろした剣先からドラグスレーザーの魔法の奔流が奔り出る。


 試験会場は阿鼻叫喚の地獄絵図の様相を呈した。


 発射された膨大な魔力は遥かな彼方に向かって飛んでいった。


 ここは巨大な試験会場だが、さすがに壁は直ぐ先にある。しかしそんな事実など無視するかのようにドラグスレーザーの魔法は遥かな彼方にまで飛んで行き、そして大爆発した。


 大きく広げられてまるで別世界のような巨大空間になった会場は、全てを真っ白に染め上げられた。


 そして巨大空間は再び静寂が訪れた。


 直ぐに巨大空間は元の大きさに縮んだ。


「見事!」


 大賢者マリウス学園長がアテナ姫騎士の魔法を絶賛した。


 会場の観衆達がようやく全ての出来事を理解したかのように絶賛し始めた。


 アッシュも目を輝かせて姫騎士の見事な魔法に称賛を送った。


 これが合格者の実力。アッシュは感心した。





 姫騎士を伴って大賢者マリウス学園長が転身の大魔法を使って姿を消す。


「さあ、受験の続きだ。次の受験生、さっさと来い。日が暮れちまうぞ」


 何事も無かったかのように教授が言った。


 それから何人もの奈落プーの音を聞かされた、そして……


 ザワ。


 またまた会場の空気が変わった。


 受験生でごった返す大勢の見物人が大きく二つ分かれた。


 その先には異様な風景があった。


 異界のモンスターの行列と見紛う複数の謎の生物が練り歩いてきたのだ。


「ほう。また変なのがきやがったな」


 教授が面白そうに呟いた。


 アッシュもその受験生を見てギョッとした。


 異界のモンスター達が勢揃いしていたのだ。


 一歩、一歩歩調を合わせてズン、ズンと進んで来た。


 まるで大名行列のようだ。


 先頭の異界のモンスターが水晶台の間近まで来るとモンスター達は2列に分かれた。


 その2列に分かれた先に彼は立っていた。


 騎馬に跨っている。しかもただの騎馬では無い。それもまた異界のモンスターだった。


「世は魔導王バインドである。頭が高い、控えおろう」


 彼はそう叫びながら馬の歩みを進めた。


 左右に分かれた異界のモンスター達が口々に魔導王バインドを褒め称え拍手喝采を送り始めた。


「またすげぇのが来やがったな」


 思わず教授も驚いていた。


 アッシュはあまりにも変な光景にあんぐりと口を開けて見ていた。





 アッシュの目の前で様々な受験生たちが水晶に触れては悲喜劇を繰り広げる。


 アッシュはまるで映画でも見ているかのようにその光景にどっぷりと集中していた。


「次、受験番号5003番」


 アッシュの番号が呼ばれた。


 遂に自分の順番だ。


 ようやく試験だ。


 しかし、自分の順番になった今、どうしても確かめたいことがある。


 水晶に異変がある。


 いや水晶その物にでは無い。


 なぜ誰もその異変について言及しない?


 アッシュはその異変に向けて一歩ずつ進み始めた。

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