第2話 天才の集う学園だろ? 変態の集う学園かも……
「長かった……」
延々と続く行列の最後尾を見上げ、アッシュは深く息を吐いた。
目の前には、世界最高峰――エバンス魔法学園の巨大な門。
天才しか入れない場所。だがアッシュには都合の良い研究施設にしか見えていない。
――楽しみだ。
彼は胸の奥で静かに決意を固め、熱気に満ちた入試会場へ足を踏み入れた。
★
「受験番号3260番、アルデバラン・キュラスト!」
呼ばれたのは、救国の英雄バラン。アッシュも良く知る有名人だ。
「この水晶に触れろ。不合格なら……まあ、すぐ分かる」
教授の言葉に、バランは自信満々に手を伸ばす。
【魔力量:5630】
群を抜く魔力量に、会場がどよめく。だが次の瞬間――。
プーーー……ッ。
間抜けな音が響き渡った。
それはエバンス名物、不合格の音――“奈落プー”だ。
「な、何だと!? 私は英雄だぞ!」
「後がつかえてる。次!」
バランは警備兵に引きずられ、観衆は震えた。
それほど有名人でも不合格。
――この学園の基準は、常識の外にある。
しかし、アッシュはそんな一部始終にはあまり興味を示さず、周囲をキョロキョロと見回していた。
「なんだ? 変な感じ……」
アッシュは誰にともなく呟く。
★
次々と受験生がバランの後を追って不合格になっていく。
アッシュの表情もスッキリとしない。受験の様子に集中できないでいた。
そんなアッシュの耳に、教授の声が飛び込んできた。
「次、来い!」
教授の声と同時に、空気が一変した。
受験生たちが左右に割れ、その中心を銀の甲冑の少女が進む。
ローデン王国の至宝、姫騎士アテナだ。
「姫様、もし不名誉な結果が出れば……」
「構わぬ。私は必ず合格する」
騎士と何やら言い合っている姿も格好良い。
アッシュも彼女の佇まいに思わず意識を集中する。
彼女が水晶の前に立った瞬間、空間が揺らぎ、老人が忽然と現れた。
「学園長……大賢者マリウス様だ!」
会場が沸く中、老賢者は目を細めて姫騎士を見た。
「では王女殿下、水晶に触れてください」
アテナは頷くと迷わず水晶に触れる。
【魔力量:12800】
万超え。次元が違う。
次の瞬間……
リン、リン、リン
それは合格を知らせる鈴の音だ。
一瞬の沈黙の後に全員の脳内へ水晶からの命令が届く。
『最大攻撃魔法を放て』
アテナは迷わず剣を掲げた。
「ドラグスレーザー!!」
白光が空間を引き裂き、虚空の彼方で大爆発。
受験生たちはひれ伏し、学園長は満足げに頷いた。
アッシュだけは、食い入るように術式を凝視していた。
「……面白い、よくもまぁあんなのを安定させてるな」
周囲の熱狂とは別のベクトルでアッシュは目をキラキラさせて姫騎士の魔法を熱心に見入っていた。
しかし、次の瞬間、アッシュは強い違和感を感じた。
「やっぱ変だな」
アッシュは呟いて会場を見回した。
★
強者の合格の後は奈落プーの音だけが続く。
だが、再びどよめきが会場を揺らした。
異界のモンスターたちが列をなして歩いてくる。
「また変なのが来たな」
教授が目を丸くして呆れた声を上げる。
モンスターたちの先頭には、異形の騎馬に跨った男。
「世は魔導王バインドである。控えおろう!」
魔物たちが喝采し、会場はもはや“異界のパレード”と化した。
アッシュは呆れながらも、モンスターの魔力構造を観察していた。
「……あれは召喚? それともクリエイト? よくもあんなに……」
アッシュは魔物の群れを興味深く見つめる。
バインドが魔獣から飛び降りて水晶に手を翳した瞬間、アッシュの目が光った。
「あ、こいつか?」
アッシュは、そう言いながら嬉しそうに微笑んだ。
彼はじっと水晶に視線を向け続けていた。
★
「次、受験番号5003番!」
ついに呼ばれた。
アッシュは歩き出す――が、視線は一点に釘付けのままだ。
水晶の“内部”が揺らいでいる。
魔力の波形が乱れている。いや、違う。
“何かが中にいる”。
なぜ誰も気づかない?
アッシュはその異変を確かめるように、水晶へと歩み寄った。
――この瞬間、世界の基準がまた一つ崩れ始めていた。
第2話を変更しました。
主人公を中心にした内容に変更しています。




