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追放された魔無しの俺にだけ、世界最強の魔法がひざまずく  作者: seisei


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第12話 花見に軍団はダメですわよ。うむ任せておけ──全軍出陣の準備!

「いいこと思いついた」


 最後部の窓際から叫び声があがる。


 その声にクラス中がビクリと過剰反応した。


「アッシュ君。もう懲り懲り。次は何をするつもりなの?」


 前の席から魔眼の少女ソフィアが非難する。


「ただの花見だよ。桜には花見がつきもの」


 その言葉に食い付いたのは聖女マリアだ。


「花見ですか? あのご神木の花を拝むのですの?」


「あはは、大袈裟だなあー」


 アッシュは笑う。


 自分の実験の失敗で出してしまった桜。拝んでどうする。


「花見は誰でも参加が伝統だよ。独り占めなんてやっちゃう人もいるけどさ、実はたくさん人がいる方が楽しいんだよね」


 アッシュは言った。


「そうなのですか。では一般の市民の方も呼ぶのですの?」


 聖女マリアが尋ねた。


「そうそう。みんなで花の下でムシロを広げて座りながら飲み食いするんだよ。

 皆が平等に美を楽しむ。それが文化さ」


 アッシュは花見について説明をした。たくさん人が飲み食いして騒ぐ村のお祭り。


 そんな説明だ。


「村のお祭りですか? 一般の庶民の方々も参加させて施しを……」


 聖女は、庶民への施しと誤解し始めている。


「アッシュさん。このお祭りには何か深い意味があるのですか?

 経済効果が理解できません」


 商人の息子エディが尋ねた。


「ははは。楽しいだけじゃダメ?」


 ザ庶民顔のエディがトレードマークの平凡すぎる顔を大きく歪ませて絶句する。


 それでも平凡だった。


「もう止まりそうもありませんね」


 ため息混じりにエディは言った。


「やだな。単なる花見に大層な」


「おう、楽しいだけで十分だ! それにアッシュのことだ、それだけで終わらないだろ?

 金は俺が分取ってきてやる」


 剣鬼が元気良く叫ぶ。


「だから、ただの学園祭だって」


 しかしアッシュの言葉など誰も信じない。


「花の下で見知らぬ民とうたげか。なかなか風流だな。予算の件は我に任せておけ。親父殿に有無を言わさず出させてやる」


 自称魔導王バインドが言った。


「・・・」


 もはやアッシュも反論をやめた。見れば分かる。


 クラスの皆は次第に乗り気になる。アッシュが大したことが無いと言うほどに皆の期待が高まる。


「俺が言い出しっぺなので企画するよ」


 アッシュが最後に言った。


「楽しい学園祭にしようね」


 ハイエルフのシア王女の後から精霊王子が耳打ちした。


「姫。これは今までで一番大きな騒ぎに発展しそうです。我々は不参加としてはいかがですか?」


 精霊王子をキッと睨みつけるシア王女。


「わたくしはアッシュ様を身をもってお守りします。領事館に支援をお願いしてくださいますか?

 この方の暴走はわたくしが止めないと……」


 シア王女が決然とした表情でささやき返した。


 しかし彼女の口角が僅かに上がっているのを隠せてはいなかった。





 凝り性のアッシュが本気で企画すると少しばかり大袈裟になる。


「みんな聞いてよ。ご近所にも声掛けしないとね。

 おじさんが、酔って歌を歌ってくれなきゃ地味すぎるしね」


 アッシュは手に持ったたくさんの招待状を振りまわしながら言った。


「それはアッシュさんが?」


 たったの一日なのに凄い数だ。驚いた商人の息子エディが尋ねた。


「いやあ、レディが分身の術で10人に増えてくれて助けてくれたんだよ。

 花見は賑やかなのが一番」


 アッシュの後で水晶の化身のレディが偉そうに腕を組んでうんうん頷いている。


 考えられる限りの招待状を作ったらしい。


「アッシュ。一度お父様が会いたいと言っているので連れてきてもいいか?」


 姫騎士アテナが尋ねた。


「もちろんだよ。でも当日は無礼講だからね。王様だろうと平民だろうと身分を捨てて裸の付き合いをするのがルールさ」


 アッシュの説明に興味津々の姫騎士だ。


「しかしアッシュ。身分がなくなると混乱が生じないか?」


 身分の無い世界は姫騎士には想像も及ばないようだ。


「皆にはハメを外しても常識は外してはダメだと注意するよ」


 そんなので大丈夫なのか。


 と皆は不安な顔色だ。


 大勢の見知らぬ者が身分に関わらず集合し、無礼講で騒ぐ。何も無いはずがない。


「じゃあ、この招待状を皆も片っ端から渡して来てよ」


 アッシュは招待状を皆にばらまいた。


「アッシュ様。この相手先の白紙の招待状を頂いても? お父様にプレゼントします」


「え? 武王陛下に宛てた物じゃなくていいの?」


「その方が都合が良いのです。たまたま参加する形です。わざわざ招待されて参加では招待側の負担が増えます」


 アテナが説明した。


「そう。アテナの好きにしなよ。でも国王陛下に特別待遇は全く無いとちゃんと言っておいてね。

 そこは言葉の綾だとか後で言わないでね。

 国王だけに特別待遇はしないからね」


 アッシュらしくなく念を押す。


「もちろんよ。嫌なら来ないはずよ。それにお父様は見た目が怖いから失礼なことをする馬鹿はいないわよ」


 そんな話をしながら皆は手渡された招待状をそれぞれ手にして出掛け始める。



☆★☆



「ここはなかなか大きな屋敷だが、どんな職業の人の屋敷かな?」


 そんな呑気な声で大門の前に佇むアッシュ。連れはレディ一人だ。


「ごめんください」


 アッシュが大声で呼ぶ。魔法が発動されて声が屋敷を包む。魔法防御の結界など無視して魔法が発動された。


 暫くして……


 ギギギーと音を立てて巨大な門が開き始めた。


 真ん中に黒ずくめのスーツを着た大男とその背後に老人が佇んでいた。


「どちらの組織の方かの。可愛らしい娘さんとお坊ちゃん?」


 老人が不思議そうな顔をして穏やかに尋ねた。


「こんにちは。俺はアッシュ・グレック、隣の学園の一年生Sクラスの者です」


 アッシュが名乗ると老人の右の眉が僅かに上に上がった。


「あの?」


 老人は桜の木を指差した。


「そうそう。お騒がせしました」


 アッシュが頭をかきながら言った。


 その瞬間、空気が重くなった。


「なるほど。単身同然で乗り込んで来られるからどんな益荒男ますらおが来られたのかと。竜殺しのアッシュ君か……

 我が家にどのような御用かな」


 穏やかな声音とは裏腹に老人からは辺りを圧倒する覇気が発せられていた。


 背後のレディが一歩前に出た。


「ご老人。私はレディ、なぜ覇気を纏っているのか聞いても?」


 レディは強い防御壁を両手に展開しつつ尋ねた。


「待てやこ”ら”あ”!」


 ズイと黒ずくめのスーツの大男がドスの効いた声をあげながら前に出た。


「ダメだよ。レディ、挑発しちゃ」


 アッシュがレディの腕を取って退がらせた。


「すみません。レディが怒らせちゃって。これを渡しに来たんですよ。学園で花見をするんです。是非参加してください」


 アッシュは招待状を突き出して頭を下げて言った。


 老人は黒ずくめの大男を目力だけで退がらせると一歩前に出て招待状を手に取った。


 封を開いて一読。


「ん、身分は不問。老いも若きもご近所一同集合して花の下で胸襟きょうきんを開いて歓談かんだんするか……

 坊主、これは何を意図しての催しか?」


 老人の目が鋭くアッシュを見る。


「やだなぁ。そんなに睨まないでよ。花見は花の風流を分かち合うだけの催しさ。

 そんな難しいことは抜きにして集まって楽しむだけだよ。

 参加資格は特にありません。

 基本は先着順。でも足弱、幼児、ご婦人は少し優遇するよ。それが許せるなら是非参加お願いします」


 アッシュはそう説明して頭を下げた。


 不思議な誘いに、老人は目を白黒させる。


「なんだ、粋な誘いじゃないか。是非参加させてもらいますよ」


 老人は纏っていた覇気を収めるとゆっくりとアッシュを真似て腰を折った。


「総長、何、なさってるんです。こんなガキに頭下げるなんて」


 黒ずくめの大男が慌てて叫んだ。


「若頭。あんたほどのおとこでも分からないかね。この子の心は無心だよ」


 老人が笑いながら言った。老人の長年の経験からつちかわれた直感が老人をそう判断させたようだ。


「いやしかし噂の超絶新入生ですぜ。なんの魂胆も無いなんて考えられませんぜ。

 ドラゴンの次はうちをターゲットにしてんじゃねぇんですか」


 若頭と呼ばれた大男は納得いかないらしい。


「無理にとは言わないんで、喧嘩しないでください。俺が皆さんに届けたいのは笑顔っすから」


 アッシュは満面の笑みで言った。





「行っちまったな」


 老人がポツリと呟いた。


「なんか胡散臭い奴でした。歳不相応な愛想。我々を見てもケロッとした態度。

 さすがにエバンス学園と言うとこか。しかしエリート面しないのは良かったが」


 若頭が感想を述べた。


「あの歳で本年度のナンバーワンに選ばれ、あんな巨木を創世する大魔法やドラゴンを片手で放りなげるやら……僅か3日の出来事にどれほどの超人かと思っていたら……

 あれは飛び抜けた異端児だね。我々常識人にはその高みの一端すら想像すらできない……

 末恐ろしい……」


「は? 総長が常識人ですって?」


 若頭が驚愕の叫び声をあげた。


「お黙り。絞めるよ」


 老人は脅威的な覇気を発揮しながら呟いた。


「へいへい。総長はそう来なくっちゃ。

 奴が本当に無心なら完全武装の幹部総動員で行きやしょう。

 奴の吠え面を拝ませてやりましょうか」


「運用は任せると言ってるだろ」


 老人は冷たく言うがその口角は僅かに上がっていた。


 またアッシュを誤解する人達が発生し増殖し始めているが、本人やクラスメイト達はそれに気付い

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