第11話 やり過ぎ公子様、桜事件に続き飛竜退治 「どこまでやるのか」と批判の声も
その生物は強い違和感を持ってとある方向に視線を向けた。
魔眼を発動し見極めようとした。
巨大な顎が大きく下がる。顎に押し潰された岩が弾け飛ぶ。
大きく開いた口から咆哮が放たれ、大地を震わせた。
それに恐れをなして一匹の卑小な生物が平伏した。
その卑小な生物は、巨大な存在に向け、怪訝そうに視線を投げかけた。
それを見た巨大な存在は、吠える。
《馬鹿め、あれが分からぬか? 何事か探って来い!》
巨大な存在が強い思念を投げつけると、卑小な存在は慌てて飛び去った。
☆★☆
飛竜の襲撃。
王都は騒然としていた。
ザカンス王国始まって以来の大事件だ。
サイレンが鳴り響き、人々は慌てて室内に逃げ込んだ。
飛竜が超音波の咆哮を放つと、家屋が吹き飛ぶ。
突然の騒ぎに子供が泣き叫び、商人達が慌てて商品を抱えて店をたたむ。
王城から騎士団が隊列を組んで市中に繰り出してきた。
アッシュは呑気に手を額に被せて日除けを作って眺めた。
彼らは裏山の桜の木の下から一部始終を見ていた。
「アッシュさん。逃げなくても良いんですか?」
商人の息子のエディがアッシュの背後から顔を覗かせて尋ねた。
「どうかな。でもなんかこっちに視線を向けている気がするんだよね」
「ええ? ダメじゃないっすか。逃げましょうよ」
エディが叫ぶ。
「ああ、きちゃったよ」
あれよあれよと目の前には飛竜が飛んでいる。
「やあ」
アッシュが馬鹿な挨拶をしている。
その時、飛竜の鋭いくちばしから爆音のような声が飛び出した。
「お前は何だ?」
アッシュはその問いに首をひねった。
「人間だよ?」
「なんで疑問形なんです? それにそんな答えじゃ」
後ろからエディが突っ込んでくるがそれどころではない。
「嘘をつくな。人間如きにこれほどの魔法を成せるはずがない」
にべもなく飛竜が言うとアッシュ達に長いくちばしを突き刺してきた。
エディが悲鳴をあげた。
アッシュはそのくちばしを片手で持った。
《む、人間の癖に凄い力だな》
飛竜の思念がアッシュ達に届く。
「アッシュさん。何をしているんですか?」
エディが尋ねた。
「実験だよ」
アッシュが答えた。
「なんでこんな状況でそんなことしてるんです? やっつけられるならさっさとやっつけてくださいよ」
《人間。放せ》
飛竜は地面に降り立ち大暴れし始めた。
羽を大きくたわめるとアッシュに向けて打ち込んでくる。
しかし、アッシュは何もしない。
バン!
大きな音がするがアッシュもエディも被害ゼロだ。
背後にレディが現れた。
「アッシュ様。このブンブンうるさいハエを退治してもよろしいですか?」
水晶の化身レディが冷たく言い放った。
「やあ、レディ。その必要は無いよ」
そう言いながらアッシュはくちばしを放した。
飛竜は、己が体を強く後ろに引いていたのか、激しく後ろに倒れた。
斜面だったこともあり、ゴロゴロと後ろに向かって転がり落ちて行った。
ギャー!
耳が痛くなるような鳴き声を上げると飛竜は飛び去る。何度も後ろを振り返って。
「おい」
アッシュが呼びかける。
ビクッと飛び上がりそうなほど驚く飛竜。
「また来いよ」
アッシュが笑いながら手を振った。
飛竜は前にも増して凄い速度で脇目も振らず飛び去った。
「アッシュさん。何をしたんです?」
エディが尋ねた。
「あいつ、物理法則を無視してるから、ちょっと真似してみたんだよ」
アッシュは答えた。
「アッシュさん。何をどう真似たんです」
エディが目を白黒させた。
「え? 魔法に決まってるでしょ」
アッシュは、なぜそのような質問をするのか、理解できないと言う感じで聞き返す。
「はい? 魔法? 手でくちばしを持つのが?」
エディは口を極限まで開いて突っ込んだ。
「さすが、我が王」
一方のレディは、アッシュを崇拝するように腰を折って頭を下げる。
校舎から人々が走り寄って来た。
「おい。またあの変な奴が暴れてるぞ」
「あれな」
「なんか飛竜を弄んでたぞ」
「ほんとか?」
「どんだけ凄いんだ?」
「規格外だ」
「レディ。エディ。さあ授業の時間だよ」
人々をその場に残してエディとレディを伴って校舎に向かうアッシュ達だった。
☆★☆
《巨大な色鮮やかなトレントの巨木が根から人間を生やし、俺のくちばしを掴んでめちゃくちゃに投げ飛ばしました》
《巨大なトレントだと。伝説の世界樹か……
しばらく様子を見る。飛竜達よ。我が同胞に警告を。我が同胞を集めよ》
巨大な翼を大空に向けて広げるとその巨大な存在は大きく咆哮した。
その咆哮に魔物の大森林が凍りついたように静かになる。
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