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パーティを追放された俺が魔王城をリフォームしたら魔国が強くなった件  作者: 一雲一人


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第12話 イリスへの贈り物

南領地に戻った誠たちを待っていたのは、街をあげての大歓声だった。


 弱小と蔑まれていた南領地校の快進撃。そして、新設された『柔道科』を含む十人のチームが優勝を果たしたという快挙は、瞬く間に国中へと轟いたのだ。


 だが、そんな熱狂の余韻に浸る暇もなかった。


 ほどなくして、魔王城から南領地の四天王であるイリスのもとへ、一通の書状が届いたのである。


 その内容は――なんと、魔王からの強烈な無茶振りだった。


「我が中央都市の学校にも、即刻『柔道科』を設立せよ!」


 大会で披露された実戦柔道の圧倒的な強さに感銘を受けた魔王が、「中央都市にも柔道科を作れ」と駄々をこね始めたのだ。


 当然ながら、まともに柔道を指導できる人間は誠しかいない。


 しかも、南領地の学校での授業もある。


 こうして誠は、南領地と中央都市という二つの都市を行き来しながら、両方の学校で柔道を教えることになってしまった。


 そこで活躍したのが、イリスが展開する『転移陣』だった。


 とはいえ、イリスの転移陣でも、一度に送迎できるのは誠一人が限度である。


 結果として誠は、南領地と中央都市を何度も往復する、超多忙な日々を送ることとなった。


  ※    ※      ※


しかし、誠の悩みは尽きなかった。


 中央都市での指導に加え、南領地の学校でも柔道科への入部希望者が殺到し、生徒数はあっという間に三十名を超えていたのだ。


(いくら転移陣で移動できても、俺一人で二校の生徒全員を教えるのには限界がある。必要なのは、俺の代わりに『教える』ことのできる、優秀な指導者だ)


 柔道の技術が高いだけでは足りない。


 自分の持つ技術や知識を理解し、それを生徒たちに分かりやすく伝えられる――そんな「指導者としての能力」を持つ人材を育てなければならない。


 そう考えた誠は、中央都市と南領地の両方で、柔道科の指導者、すなわち教師を目指す者を広く募集することにした。


 そして、その適性を見極めるための採用試験を実施することを決意する。


 教師を目指して集まってきた、意気込みに満ちた青年たち。


 彼らを前に、誠の新たな挑戦――『指導者育成プロジェクト』が、静かに動き始めるのだった。


  ※    ※      ※


そんな時だった。


 食料枠の激増、補充時間の短縮、そして新たに出現した『無名ボックス』に驚いていた俺は、ふとステータス画面に目をやった。


(……いつの間にレベル3に?)


 よく見ると、もう一つ大きな変化が起きていた。


 レベル2の時にはずっと空っぽで、何日経っても一向に更新されなかった二つの『特殊装具』枠。


 それが今、激しくピカピカと虹色に発光していたのだ。


「……うわ、出た! まさかのガチャ枠か!?」


 この特殊装具枠は、どうやら定期的に補充される食料や工具とは違うらしい。


 何日も沈黙したかと思えば、たま~に出現する、いわゆる『ランダムガチャ枠』だった。


 画面をタップすると、光の中から見慣れない金属製の指輪が二つ現れた。


 説明文によると、これは装着者の潜在能力を極限まで引き出す武具らしい。


【武具名:限界突破の指輪《リミット・ブレイカー》】

【効果:装着者が本来持つ潜在能力を7倍に極限まで引き出す】

【特殊効果:身体能力・魔力を大幅に強化】


 魔法が使えない者が身につければ、簡単な火を起こしたり、身体能力を底上げしたりできる。


 そして、魔法が使える者が身につければ、その潜在能力を7倍の他に特殊効果でバフを増幅させるという。


(魔法が使えない俺が持っていても便利だが……いつ出るか分からない激レア品なら、イリスに持たせたほうが絶対いいよな)


 ちょうどその日の夜は、俺がイリスと出会ってから丸一年となる節目の日だった。


 そこで俺は、一周年記念のプレゼントとして、ガチャ枠から手に入れた指輪をイリスに差し出した。


「これは……指輪か? 誠からこのようなものをもらえるとは……」


 イリスは驚いたように目を見開くと、どこか愛おしそうに指輪を受け取った。


 そして、さっそく自分の指にはめる。


「ありがとう、誠。大切にするよ」


「実はそれ、お揃いなんだ」


 そう言って俺が左手の中指にはめた同じ指輪を見せると、イリスはどこか照れくさそうに、それでいて心底嬉しそうに微笑んだ。


 胸がいっぱいになったイリスは、喜びのあまり指輪へほんの少しだけ魔力を込めた。


 そして、夜空に向けてささやかな魔法を放とうとした――その瞬間だった。


 ――ズドドドドォンッ!!!


 まばゆい光とともに、夜空を覆い尽くすほどの超巨大な極大火炎魔法が打ち上げられた。


 遥か上空の雲が一瞬で吹き飛び、空一面が黄金色の炎に染まる。


 その凄まじい光は、街全体を昼間のように眩しく照らし出した。


「……な、なんだ今のは……!? 魔力が……桁違いに跳ね上がったぞ……!?」


 自分の手を見つめたまま、固まるイリス。


 ただの記念品、あるいはお守りのつもりで渡した俺もまた、想像を絶するガチャの『大当たり』の威力に、ぐうの音も出ず震えるのだった。


  ※    ※      ※


翌日、イリスの転移陣を利用して中央都市の魔王城へと到着した俺は、中央校での『柔道科設立』に向けた準備会議に臨んでいた。


 会議室に集まっていたのは、魔王城の教育部門を取り仕切る幹部たちと、中央校の関係者たちだ。


 ひと通りの挨拶を終えると、俺はさっそく本題へと入った。


 そして、今回の件で俺が最も懸念していたことを口にする。


「中央校でも柔道を教えるとなると、俺一人では到底手が回りません。俺がこちらに付きっきりになれば、南校で教える者がいなくなってしまいます。ですので、俺と一緒に柔道を学び、将来的には各校で指導者として教壇に立てるような人材を数名、選抜していただけないでしょうか」


 俺の提案に、会議室の幹部たちは顔を見合わせた。


 やがて、それぞれの立場から指導者候補について意見が飛び交い始める。


 こうして、柔道科の設立だけでなく、その未来を担う指導者を育てるための人材選抜が、いよいよ始まろうとしていた。

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