第102話 階段の怪談 そして2階へ
ロリ様に戦闘指導という名のお説教をした俺たちは、長い階段を上って2階へと向かう。
「87、88、89……」
うん。階段の数を数えながら上がる人いるよね。
でもバックスさんはそういうタイプのキャラじゃないと思うんだ。
どっちかというとタマちゃんとかがやることでは?
そう思って隣を歩くタマちゃんを見ると、その顔は真剣そのものだった。
考えてみれば、この試練を一番重くとらえているのは間違いなくタマちゃんだろうから、当然といえば当然のことなのかもしれない。
俺はロリ様の件で少し緩んでいた気持ちを引き締め直した。
そして2階のフロアに到着する。
そこは1階と全く変わらない広い空間があり、今度は中央右手の壁に、3階へと続いているだろう入り口が見えた。
「にゃー、にゃー、にゃー」
「タマちゃん?」
先祖返り?
「今の階段……222(にゃーにゃーにゃー)段でした」
……どうやら真剣に頭の中で数えていたらしい。
「私が数えたのは188段でしたが……」
バックスさんとの差異が大きい!!
せめて誤差は1~2段くらいにしておいてほしい。
「え?私が数えたのは、せん――」
「ロリ様、それはない」
チベットの修行僧でもそんなには登らない。
むしろそんなに登ったら降りるの大変。
「段数はどうでも良いから。で、タマちゃん。この階の敵は?」
「あ、ええと、2階にいるのは『エレファントマキマキ』ですね」
これも初めて聞く魔物だな。
名前からすると象の魔物っぽいけど、この世界でその思い込みは禁物だということを俺はこれまででちゃんと学習しているのだ。
『しかしステータスのINTの値は伸びていませんが?』
それはお前の匙加減じゃね?
アップロードされたんだから、その辺りはちょっとはいじってくれても構わんのだぞ?
「それってどんな魔物なの?とぐろを巻いている象みたいな魔物?」
言っておいて全く想像が出来ないけどね。
とぐろ巻くってどの部分がよ?鼻?
「いえ、私も見たことが無いんですけど、襟巻を巻いた象の魔物と聞いてます」
襟巻――マフラーを巻いた象?
いやいや、マキマキってそういうことか?。
そんなことを話していると、フロア内へと進んでもいないのに、中央部から光が放たれ、その中に巨大な影が浮き上がってきた。
どうやらここはフロアに到着することがスタートの合図になっているようだ。
バックスさんが素早く前に出て盾を構え、俺は剣を抜き、タマちゃんは弓を構える。
そしてロリ様はメイスを両手でしっかりと握りしめて振り上げ――た手に、俺はそっと自分の手を当て、その目を見ながら軽く首を振った。
それはそういう持ち方じゃないよね?
光の中から現れたのは、大きな象の魔物。
昔動物園で見たインド象よりも二回りほど大きな体をしている。
「パフォォォォォン!!」
長い鼻を持ち上げて威嚇するように大きな鳴き声を上げるエレファントマキマキ。
本来なら両脇に垂れるようにあるはずの耳が、その顔の回りにパラボラアンテナのように広がっている。
昔動物園で見たエリマキトカゲのように見えなくも……ないか?どうよ?
威嚇するなら鼻か声か耳かのどれかだけで良いんじゃないか?と思うのは生物学的に失礼なんだろうか?
「かなりの大型の魔物ですな!タイセイ殿、いかがいたしますか?」
盾を構えながら言ってくるバックスさんの表情には余裕がある。
確かに大型の魔物だけど、多分バックスさんも大体の強さを感じ取っているんだと思う。
こいつは大きいけど、今の俺たちにとっては敵ではないと。
それにこれよりもデカいキマイラと対峙したこともあるから、それほどそのサイズは脅威ではなかった。
「そうですね……」
俺は考えるフリをしながらロリ様の方へと視線を送ると、ロリ様はキラキラした目で俺の方を見ていた。
「今度はちゃんと精霊の力を使って戦うと約束出来ま――」
「もちろんです!!」
食い気味でそう答えるロリ様。
これから先のことを考えると、俺としても早めにロリ様の能力について把握しておきたい。
「じゃあ、十分に気を付けてくださいよ?バックスさんは一応念のために盾役として一緒に行ってください」
「了解しました!この身に変えましても姫様をお守りいたす所存でございます!!」
一々覚悟が重いバックスさんに苦笑しながらも、俺とタマちゃんは2人が前に出て行くのを見送った。
2人が近づいて行くと、エレファントマキマキは前脚をかくようにして突進準備を始める。
それ牛じゃね?象もそんなことするんだっけ?
そして地響きが起こるほどの踏み込みで2人へと走り出したエレファントマキマキ。
その巨体がもの凄い勢いで盾を構えているバックスさんへと向かっていく。
「シールドバッシュ!!」
バックスさんの持っている盾が巨大化し、ガンッ!という大きな音と共にエレファントマキマキの突進をその場で食い止めた。
普通、そういうのって盾のエフェクト的な何かが広がって壁になるとかじゃないんだっけ?
物理的に盾が大きくなるもんなの?
「姫様!今でございます!!」
「風さん、私の声を届けて!――ワアァァァァァァァァァ!!!」
ロリ様の叫んだ声が、風の力を借りた強烈な衝撃波となってエレファントマキマキを襲う。
いわゆる、ただの大声だ。
しかし、これはエレファントマキマキにとっては最悪の相性だった様子。
普通は耳の内側にあるはずの外耳道が、こいつの場合は音を収集する為なのか、パラボラアンテナの中側にあった。つまりこちらに向いていた。
「ぱふぉおぉぉぉん!!」
情けない声を上げてひっくり返るエレファントマキマキ。
鼓膜を直撃した大声は、そのまま敵に絶大なダメージを与えることに成功していたようで、エレファントマキマキはそのまま地面へと消えていったのだった。
「やりましたわ!!」
またまた無邪気に飛び跳ねるロリ様と、それを誇らしそうな顔で見ているバックスさん。
「タイセイさん……。あれが精霊魔法ですか?」
「……半分精霊で、半分は声量かな?」
「何か、凄いですね……びっくりです」
多分その半分はいきなりの大声のせいだと思うよ。
「俺はこの世界で驚くことがまだあったことにびっくりだよ……」
おかしな魔物には慣れたと思ってたけど、まさか味方に驚かされることになるとはね。
『まだまだこんなものではありませんよ?』
お前がフラグ立てんなよ!!




