第101話 ロリ様初陣!!精霊の力とは!?
塔の入り口をくぐると、そこは円形の広場になっていて、その左手奥にどこかへと繋がっている通路の入り口が見える。多分、あそこから上に登っていくんだと思う。
「目的は最上階なんだし、途中の敵は無視して駆け上がるんじゃ駄目なの?」
別に扉が閉まってるとかじゃないんだから、やってやれないことはないと思うんだけど。
「ここは普通の場所じゃないんです。下の階の魔物を倒さないと、いくら先に進んでも次の魔物が出てこないんですよ」
「なるほど……。そのまま進んだとしても最上階のベビーベアは出てこないってわけね」
魔物のようなもの、というのはそういうことね。
実態があってここに住んでいる生き物というのではなく、本当にゲームみたいに実態が無くて、倒しても次に来るとリポップしてるっていう。
各階層のクリア条件は敵の全滅のみ。
最上階は10階。
死ぬような怪我をした場合は強制的に退出させられるけど、欠損した部分は戻らない。
それなら心臓や頭部のような即死級の怪我の方が良い、と。
ヤバい!!このままだと腕がちぎれるかも!!
よし!それなら頭をかじらせよう!!
――とはならんやろ!!
そんな脱出方法怖すぎるわ!!
怪我をせずに進むにこしたことはないということだね。
「大丈夫です。タイセイさんの腕や足に、もしものことがありそうな場合は私がその心臓を一撃で――」
「絶対に止めてね!!」
敵がどこに潜んでいるのか本当に分からないものだな……。
「で、1階には敵はいないの?2階からが本番?」
フロアを見回してみても敵の姿も気配も無い。
まあ、ここは入り口だから、上がった先からがスタートかな?
「いえ、1階の敵はトゥウェルブモンキーズという猿型の魔物のはずです」
ん?それ大丈夫?訴えられたりしない?
俺たちはゆっくりと周りを警戒しながらフロアの中へと進んでいく。
ちょうどその3分の1ほどのところまで進んだ時、フロアの中心から光が放たれ、その光の中から無数の影が現れた。
「あれか!」
「あれです!」
「あれですね!」
「あれでしょうか?」
語彙力の無い俺たちは、そんなことを言いながら同時に戦闘態勢に入る。
俺は剣を抜き、タマちゃんは弓を構え、ロリ様が突進しようとしているのをバックスさんが羽交い絞めにする。
大丈夫かこのパーティー?
「ロリ様、落ち着いてください。初めて見る相手ですから、むやみに飛び出したら危ないですよ」
城では兵士を吹っ飛ばしたというから、早くその力を実戦で試してみたいんだろうね。
ダンジョンの時から好戦的な気はしてたけど、このお姫様に恐怖心と言うものは無いのだろうか?
「まず俺たちが様子を探ります。ロリ様は初めての実践ですから、落ち着いて敵の動きを観察してください」
「分かりましたわ!でも、私の分も残しておいてくださいね!」
トゥエルブモンキーズを買ってきたケーキみたいに言わないであげてほしい。
光の中から現れたのは、モンキーとは名ばかりのゴリラサイズの猿たちだった。
その数13匹。
――12とは!?
え?1匹1匹の名前がトゥウェルブモンキーズなの!?
複数形っぽい名前なのに!?
え?最初に名付けた人が数え間違えたから仕方なくそうなったって?
新しい星を見つけた時みたいな権利あるんだ……。
「ウホホほほほほぉぉぉ!!!」
一斉にドラミングをして威嚇を始める『トゥウェルブモンキーズ』ズ(複数形)。
――モンキーとは!!
それゴリラだよね?いや、見た目もゴリラだなあとは思ってたよ?でも、モンキーっていうから、ゴリラっぽいけど、よーく見たら猿なんかなあって思っちゃったじゃん!
「……タマちゃん」
「良いんですか?」
「1匹だけ残してくれたら良いよ……」
疲れた顔をした俺を不思議そうに見ていたタマちゃんだったが、息を一つふうっと吐くと、『トゥウェルブモンキーズ』ズ(複数形)に向けて矢を放った。
弓につがえた矢は3本。一射で3本の矢が飛ぶ。
それを高速で三射、都合12本の矢が一瞬にしてトゥウェルブモンキーズを射抜いていった。
「ウキィィィ!?」
自分の身に何が起こったのかも分からずに悲鳴を上げるトゥウェルブモンキーズたち。
そんな猿っぽい声を出しても今更だぞ?
あっという間に残りは1匹。
見た目はアレとして、強さ的にはDランク位なのかな?
まあ1階だし、最初はそんなもんか。
「ロリ様。あれなら練習にちょうど良いと思いますよ」
仲間が一瞬でいなくなってしまったことの意味が分からないのか、あれ?みんなどこ?みたいな感じでキョロキョロしているトゥウェルブモンキーズ(単体)。
どんな攻撃をしてくるのかは分からないけど、ロリ様のレベルを考えたらDランクの魔物に後れを取ることは無いと思う。
ステータス管理の世界って、こういうところが便利だよねえ。
「分かりました。思いっきり行ってきます!」
力強くそう宣言してトゥウェルブモンキーズ(単体)に向かって歩き出すロリ様。
その手にはバックスさんから受け取った杖を持っている。
パワーアップした精霊魔法的なものを見せてもらおうじゃないか!
臆することなく向かっているロリ様。
それを動かずにじっと睨みつけている虚偽申請猿。
2人の距離は5メートルを切ってなおも縮まっていく。
近すぎない?そろそろ相手の間合いに入ってるんじゃない?
ロリ様、魔法使うなら離れた距離の方が……。
そんな心配をしていると、やはりというか当然というか、トゥウェルブモンキーズ(単体)がロリ様に向かって跳びかかってきた。
太い腕を広げ、開いた口の中には鋭い牙が見える。
「ロリ様!!」
俺は思わず叫んで走り出す。
やっぱり初めての戦闘だったから直前で怖くなったのか?
いくらレベル差があるとはいえ、無防備な状態での直撃はマズイ!!
間に合うか?それかロリ様逃げて!
あ、タマちゃんに頼んだ方が早かったか?いや、ロリ様との距離が近すぎるから、もしロリ様が動いたら危ないか。
慌てて飛び出した俺だったが、その距離は遠すぎた。とても間に合わない。
スローモーションのように見える視界の中で、トゥウェルブモンキーズ(単体)の丸太の様な太い腕がロリ様に迫る。
そしてそれを迎え撃つように杖を振りかぶったロリ様。
……え?杖を振りかぶった?
そのまま杖を一気に振り下ろすと、その先に付いていた宝石のような部分がトゥウェルブモンキーズ(単体)の顔面に炸裂した。
「ウキィィィ!?!?!?」
悲鳴と共に地面に叩きつけられたトゥウェルブモンキーズは、そのまま静かに姿を消していった。
「タイセイ様!!私殺りましたわ!!」
無邪気な笑顔で跳ねまわるロリ様。
うん。あれは杖じゃなくてメイスだね。
タマちゃんといい、ロリ様といい、どうしてこの世界の女性はすぐに暴力に訴えるのだろうか……。
ちらっと妻子持ちのバックスさんの方を振り向くと、バックスさんは哀しそうな顔で頭を振っていた。




