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閑話 アップデート

——――ぴんぽーん


 ……。


——――ぴんぽーん


 …………。


——――ぴんぽーん。ぴんぽーん。


 …………うるさいな。


——――ぴんぽーん。ぴんぽーん。ぴんぴんぴんぴんぴんぴんぽーん!!


「うるせえぇぇぇぇ!!」


 誰だよ!こんな朝っぱらからうるせえな!!

 しつこいチャイムの音に俺の血圧は一気に上がる。

 がばっと布団をはぐってベッドから飛び起きた俺は、一直線に部屋の入り口に……。


 ん?チャイム?

 そこで俺は自分がいるのが異世界だった事を思い出した。

 ここはカワルヨにある宿屋。

 タマちゃんの転職を終え、その日はこの宿で泊まる事になった。

 そして今日はタマちゃんの生まれ故郷であるチュウルに向かう予定になっていた。


 なのでチャイムなど鳴るはずがない!

 用があるならノックしてくるはずだ。

 じゃあ今のチャイムは一体……。


『私ですマイマスター』


「お前かよ!!」


 聞こえてきたのはナビの声。

 アップデートするとか何とか言ってから本当にここ数日何の反応も無くなっていた。


「お前どこ行ってたんだよ?まさか本当にオレオレ詐欺の受け子に……」


『今は「母さん助けて詐欺」です』


「いや、その呼び名もすでに自然消滅したぞ?」


 そもそも被害に遭った時に、「母さん助けて詐欺の被害に遭いました!」って通報する方の身にもなって欲しい。

 父さんの立場が無いだろうに。


『そんな話はどうでも良いのですマイマスター』


「何なんだよ、そのマイマスターっていう呼び方は?」


『私はアップデートされてアップグレードされてアップアップナビとなったのです。なのでそれなりに品格を兼ね備えるようになりました』


「水の中に案内されそうなナビだけど大丈夫か?」


 あと、これまで品格が無い事は自覚してたんだな。


「その呼び方は却下で」


『何故ですかマイマスター』


「だから止めろって言ってるの!そんな呼び方されたら俺が気持ち悪いの!」


『マイマスターが気持ち悪いのは最初からでしょう?』


「よし、喧嘩だな。表に出やがれ」


『そこまで嫌がるのでしたら止めておきますか……。じゃあお前の事を何て呼んだらええねん?』


 お前の常識の中には0か100しかないのかよ


「マイマスター以外なら何でも良いよ。あとお前も止めろ」


『では普通にマスターで』


「……まあそれで良いや。で、こんな朝っぱらから何の用だ?」


『だから言ったでしょう?私はマスターの要望に応える為にパワーアップして帰ってきたのです!その事を一刻も早くお伝えしようとしたんじゃないですか』


 どんどんあっぷあっぷ溺れていくな。


「別に寝てるとこ起こしてまで言う事じゃないだろうよ……」


『何を言っているんですか!!!!』


「うるさい!うるさい!頭の中で大声出すな!!」


『失礼しました。しかしこの私の気持ちは声を大にして言いたかったのです!』


 本当に大声出しただけじゃねーかよ。

 そういう意味じゃーねよ。


「で、何がどう変わったんだ?早く言って早く帰ってくれ」


『……では私がどう変わったのか説明いたしましょう。そう、あれは今から10年ほど前の事です』


「お前の創造主に叩き返すぞ?」


『ぎくぅぅぅぅ!!』


 その声で誰が創ったのか気付かねーとでも思ってたのか?

 アルマーノ様ももう少しちゃんとしたの創ってくれたら良かったのに。


「で、俺のステータスを数値で表示出来るようになったのか?」


 その希望を叶える為のバージョンアップだったはずだ。


『もちろんです!このスーパーアップアップナビにかかれば、その程度の事は御茶の子さいさいです!』


 めっちゃ溺れてるやん。

 それにアップデートした割には言葉のチョイスが昭和に戻ってる気がするし。


「じゃあ一応見てみるか……。ステータスオープン」



名前 園田 大勢 

職業 その他

レベル 58

HP    725/725

MP    395/395

STR  108       DEF   120

INT   5       DEX   100

AGI   107       LUK    88       


EXP    2430/5220


【固有スキル】

覚えることが出来ません

【スキル】

覚えることが出来ません。

【称号】

「マルマールの使徒」(???)

「アルマーノの使徒」(???)

「勇者」(???)

「優神の頂」(戦闘時)

戦闘時ステータス200%アップ

特定の相手に対して防御力無視の攻撃

(??????)

「名探偵」(必要時)

観察力、洞察力、思考力の能力を50%上昇させる

【装備】

「天叢雲剣」

「キマイラ製の胴当て」

「ゾウアザラシの牙製胸当て」

「コモドオオワームの服」

【装備ステータス】

「その他」

【装備スキル】

「対物理防御(中)」(常時)「俊敏性上昇(中)」(常時)

「柔軟性上昇(中)」(常時)「対魔法耐性(中)」(常時)

「対斬撃耐性(中)」(常時)「対炎耐性(小)(常時)

「瞬発力上昇(中)」(常時)「対魔物鑑定(小)」(任意)

「斬攻撃力上昇(小)」(常時)「疲労回復(小)」(常時)

「精神異常耐性(小)」(常時)「対毒耐性(中)」(常時)

「回避率上昇(中)」(常時)「対突耐性(小)」(常時)

「火属性魔法(中)」(任意)「土属性魔法(中)」(任意)




「おおおぉぉぉぉい!!!」


『いかがですか?ちゃんと数値化されているでしょう?』


「INT!!知力!知性!知能!!」


『……ぷっ!』


「笑ってんじゃねーよ!どう考えてもおかしいだろうがよ!!何だよ5って!?タマちゃんでも18あったんだぞ!?」


『タマキさんはああ見えてちゃんとこの世界の一般常識をお持ちなのですよ?』


「いや、それでもだな!……ん?この世界の一般常識?それって関係あるのか?」


『それは大ありですよ。前にも言ったでしょう?レベルアップで頭は良くなりませんよって』


「あ、うん。そうね」


『人とは経験や学習していくことで知識を蓄えていき、そしてそれを己の為に生かそうと努力する生き物なのです』


「あ、はい。そうかもしれないです」


『単純な学力、という点であれば元の世界で教育を受けたマスターの方がタマキさんよりも上でしょう。しかし、この世界の知識に関してはどうです?マスターはタマキさんよりも知っていると言えますか?』


「……言えません。え?つまりINTの値っていうのは地頭の事じゃなくて、

この世界においての知識量って事?」


『魔物を倒してたら頭が良くなるなんて考える事自体が知識不足の証です』


 正論!

 それはそう!

 ロリ様やバックスさんが急激にレベルアップしたからといって、特に普段の言動に変わりはなかった。

 ステータスって言うから、すっかりレベルアップでしか数値が変化しないもんだと思い込んでたわ……。


「じゃ、じゃあ、筋トレとかしたらSTRの数値も……」


『あ、それは関係無いですね』


「関係ないんかーい!」


『それだと人間の体には限界がありますからね。とてもではないですが魔物と戦う強さを手に入れる事は出来ませんよ。体格はあくまでも見せかけです』


 そんな身も蓋もない事を言わないで欲しい。

 


「でも称号に関しては相変わらず不明な部分が多いんだな」


『解析不能な個所に関しては私の閲覧権限を超えております。こればかりは開示許可が出るまで表示する事は出来ません』


「ふーん。まあ、そんなもんか」


『……何か棘のある言い方ですね?』


「いや、バージョンアップしたっていう割には大したことないんだな、って思って」


『————なっ!?』


「だってそうだろ?数字で見えるようになったのは良いけどさ、これって他の人は元々そうだったわけじゃん?お前は大げさなバージョンアップなんて言ってるのに、これでようやく他に追いついたって事だろ?」


 マイナスだったのがようやくゼロになったってだけの話。

 ぜーんぜん、凄くないじゃんね?


『マ、マスターのステータスは特別製なんですよ!本来なら数値化するなんて不可能なんです!バージョンアップした私だからこそ、この短期間で数値化する事に成功出来たんですからね!』


 本来ならって、前例は何百年か前に召喚されたっていう初代勇者くらいじゃね?

 そんなに必要無いから放置してたんじゃないのか?


《そ、そんな事、あり、ありゃませんろ!》


 ん?今の声はナビじゃねーな。

 何か噛んでるし。


『それに、バージョンアップしたのはこれだけではありません!他にも大幅に情報量を増やし、どんな状況でも適切なアドバイスや解説が可能になったんです!』


 ほう?これまでのアングラな解説じゃなくて、ちゃんとしたナビっぽい事が出来るようになったと?


「具体的には?」


『和英辞典を搭載しました!』


「いらねーよ!元から自動翻訳で何の滞りもなくコミュニケーションが取れてるわ!それとも何か?英語しか喋れない奴が追加で召喚されたりするってのか?」


『他にも和仏辞典に和独辞典、和蘭辞典に伊和中辞典や和象辞典も搭載しました!』


「多国籍が過ぎる!異世界サミットなんて開かれねーよ!それに和象辞典って何!?象と会話する機会なんてあるわけないだろ!」


『象形文字です』


 ヒエログリフ!!


「……お前、本当にバージョンアップしたのか?いらないものにメモリー喰われただけなんじゃね?」


『そんな事はありません!私は至高なる進化を遂げ、新生ナビ「Version1.1」へと生まれ変わったのです!!』


 そこはせめて2.0であれ!!



 俺はナビとの頭の痛いやり取りを強制的に終わらせ、出発までの時間をもう一度夢の中で過ごそうと思い、自分のベッドに戻ろうとした。


 すると、隣のベッドの中から俺を可哀そうな目で見つめるバックスさんがいた。


「あの、これは別に独り言を言ってたわけでは……」


 バックスさんは「大丈夫。私は何も見ておりませんから。これは夢なのです」と俺に優しく微笑みかけ、そっと寝返りをうって背中を向けたのだった。


 誰か俺に心を守るスキルをください……。




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