表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/16

新学期

柚子達もいよいよ2年生。


学校内の話ですが、新しい出会いや、新しい展開も出てきます。



拙い文章ではございますが、お楽しみいただけたら幸いです。

「え~と、は、は………」


クラス名簿を順番に眺めていく。


「あ、あった!」


羽山柚子、13歳。

今日から、中学2年生。



-4月-


「柚子ちゃん!おはよ!」


「おはよう、愛」


今年も私はA組だった。

ちなみに愛も一緒だ。


「仲いい男の子みんな離れちゃったね~」


「あー…そう、ね」


啓ちゃんはB組、明宏と賢ちゃんはC組だったらしい。


夏々や莉保ちゃん、あかりさんも違うクラスなので、クラスメイトで仲がいいのは愛となっちゃんだけ…だろうか。


ガヤガヤと騒々しいクラスを見回す。


昨年のB組率が高い。特に男子。


合唱コンの時に騒がしかった例の男子も同じクラスだ。

あいつは一樹をこき使っているらしい。


…正直、不安しかない。


「このクラスで修学旅行行くの……」


「不満そうですね」


「当たり前でしょ」


馬鹿ばかりというのは困り者だ。

私が楽しくない。


「まあまあ、由東先生もいるから大丈夫ですよ!」


「そうよね」


愛の意見に賛同する。

が、あまりいい予感はしなかった。



「それでは、各学年、クラスを担当される先生方の紹介です」


始業式の終盤、いよいよ、各学年担当の先生がわかる。


自分のクラスの担任に関しては、昇降口前に張り出されていたクラス名簿に載っているため、この場で感動は全くない。


…が


「3年進路担当、由東晃亮先生」


3年?進路担当??


前に出てきた彼を見て、聞き間違いでないことを確信する。


「…何それ、聞いてないんですけど」


地声でぼそりと呟くと、隣に座っていた男子が驚いた顔でこちらを見た。


だって私、由東先生と修学旅行行く気満々だったのに。


壇上で紹介を続ける校長を恨めしく睨み付けるも、無論、私の思念が届くはずもなかった。



「どうしてあなたがここへ?」


始業式が終わり、私はB組に来ていた。


「久しぶり!柚子ちゃん」


私に向かって手を挙げる彼は、2年前と何ら変わりない屈託のない笑顔を見せた。


高野蒼司(たかのそうじ)先生。


B組の先生で、今年赴任してきた。

実は小学校時代に、5・6年生の学年担当を持っていてくれた先生で、当時からとても仲が良い。


「先生は小中学校の免許を持ってるからな!」


「いやそういうことじゃなくて」


私の棒読みに楽しそうに笑う彼は、相変わらず冗談が好きな人だ。


「柚子ちゃん、高野先生と知り合いなの?」


例の如く、彼女が話に参加した。


「はい。小学校時代にお世話になった先生です」


「ふーん…じゃあ、井山と吉原も知ってるのね」


「はい。3人とも、5・6年は同じクラスだったので、高野先生に直接担任は持ってもらってないんですけど…」


「あぁ、そうなの」


「柚子ちゃんとは仲よかったんで、なんでも知ってますよ!」


彼女に対して自信ありげに、高野先生はガッツポーズをつくった。


「ふーん、そう」


穏やかな声で彼女も返す。


大雑把な高野先生が気付いたかどうかは知らないけれど、彼女の眉間に少しだけシワが寄った。


「付き合いは浅いけど、私も柚子ちゃんと仲いいから」


捨て台詞のようにそう言って、彼女は下の階へ行ってしまった。


「噂に聞いていた通り、かっこいい先生だなぁ」


高野先生の呟きに、私は


「知れば知るほど、可愛らしい先生ですよ」


と返しておいた。



-5月-


「…でまあ、例の如く怪我したんですけど」


今日は体育大会。

天気は快晴で絶好の運動日和だが、私の気分は全く晴れていない。


「あー、これはまたひどい転け方ね…」


理由は多々あるが、今一番気分が晴れないのは、先程の競技でまさかの味方と正面衝突して転ける、なんてアクシデントがあったからだ。


ずる向けになった左肘を見て、秋谷先生は顔をしかめた。


「…だから嫌いなんですよ、この行事」


「まあまあ、文句言わないの」


「次の競技、絶対手ぇ抜いてやる…」


「こらこら」


消毒液がしみるのと、怪我をした苛立ちで思わず悪態をつく。


「はい、完成」


「ありがとうございます」


きっちり巻かれた包帯は、動かしてずれることもなく、痛くもなかった。


「ま、手は抜きすぎずに頑張ってきますよ」


ハチマキをヒラヒラ振って、救護テントを抜けた。



「あれ?柚子ちゃん?」


観戦ブースの自分の席に帰る途中、彼女に会った。


「先生」


私の左肘を見て、顔をしかめる彼女。


「なに、えらく派手にやってるけど…」


「台風の目で前にいる男子とぶつかった拍子に転けまして…」


へへっと頭をかくと、彼女はため息を吐いた。


「気を付けなさいよ、ヴァイオリニスト。あなた、手に傷なんか付けちゃ痛々しいんだから」


「はーい」


口は少々悪いが、彼女の優しさを感じる。


「全く…あ、そろそろ戻らなきゃね」


「そうですね」


次は"人間橋"という競技だ。クラスで1人、上を駆けていく人と、2人が伴走者になり、残りのメンバーが文字通り()になって速さを競い合う。


実行委員の方で上を走る人を決めたらしく、それは彼ら彼女らのお友達がすることになったのだけれど、体重的に一番軽いのは私だ。

ヴァイオリンと重ねて――一昨年までの話だけど――ずっとバレエと新体操をやっていたから、多分クラスで体幹がいいのも私だ。


でも言わなかった。

決まってしまったことはもう仕方がないし、何よりも私にやる気がない。


明宏とか啓ちゃんもいないから、丁度いいとか思って。


だけどまあ、どちらにせよやる気がない。

クラスのせいとは敢えて言わない。


たまたま気分が乗らなかっただけ。

私ってそういう人間。


「柚子ちゃん大丈夫なの?今更だけど」


「何がですか?」


「ほら、クラスであなたが一番軽いだろうし、小学校までバレエと体操やってたんでしょ?だから、むしろ下はしんどいんじゃないかって思って」


「ご心配なく。そこまで非力じゃないんで」


「そう?なら、頑張ってもらわないとね」


ふっと笑って、彼女は私の頭の上に手を置いた。


身長162㎝の彼女からしたら、145㎝あるかないかの私の頭の位置は非常に手が置きやすいらしい。


だからいつも、ぽんぽんとされるのだけれど。


「同じブロックとしてあなたの健闘を祈りますわ、お嬢様」


落ち着くアルトボイスでそう告げると、彼女は悪戯な笑みをこぼした。


「…じゃあ、頑張ります」


不意打ちと照れで耳まで赤くなっているのを感じながら、そう答えた。


兎に角彼女が言うのだから仕方がない。


「まあでも、包帯外れない程度にね」


しっかり巻いてある包帯をそっと撫でて、彼女はメインステージの方へと行った。


きっと今から審判の仕事があるんだろう。


「私も戻ろう」


左に巻かれた包帯にそっと触れる。

触れても、動かしても外れない。


所作が綺麗な女の人って、すごく好きだな。


1人でふっと笑う私であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ