国王になった王子様 8
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大量に購入したドレスは、一度に納品せずに分納にするとダイアナが言った。
お買い物をして三日後の朝。夏物のドレスが一着と下着が二着届いたので、わたしはさっそく届いたばかりのドレスに袖を通した。
最初に届いたのはイヴリン先生がお勧めしてくれた淡い緑色のドレスだ。
このドレスはふんわりした柔らかいシフォン素材のオフショルダータイプのドレスである。
これまで首元まできっちり詰まっていたドレスばっかり着ていたわたしには、最初はこのくらいの露出から慣れた方がいいだろうとイヴリン先生が言った。
確かに、肩は大きく出ているけれど、出ているのは鎖骨より少し下までで、胸元が大きく開いているわけではない。
今まであったところに布がなくなって心もとないには心もとないけれど、びっくりするほど恥ずかしいわけでもなかった。
ダイアナに着替えさせてもらって、そわそわしながらアーネストお兄様が朝食をとりにわたしの部屋にやって来るのを待つ。
部屋の外に立っている衛兵がアーネストお兄様の到着を教えてくれて、扉が開いた。
「カレン、おはよう。少し遅くな――」
お兄様が中途半端なところで言葉を止めた。
わたしを凝視して固まっているみたいだけど、どこか変かしら?
わたしはソファから立ち上がって、お兄様に向かってちょこんとドレスの裾をつまんでカーテシーをする。
「おはようございます、お兄様。どうですか? ついさっき、この前注文したドレスが到着したんです」
「あ……ああ」
……ああ? え? それだけ?
もっと「大人っぽくなったな」とか「似合っているな」というような感想を期待していたんだけど、わたし、浮かれすぎていたみたいね。
考えてみたら、ちょっとドレスが変わったくらいでわたしが大きく変わるわけでもないもの。
アーネストお兄様が立ち尽くしたままなので座るに座れず、どうしようかしらとダイアナに視線を移す。
ダイアナがこほんと小さく咳ばらいをした。
「さあカレン様、こちらのお席へ。朝食はすぐに運ばれてきますからね。陛下は彫像になったようなので、放っておきましょう」
「ええ⁉」
彫像にはなっていないと思うわ。だって、瞬きしているもの。いえ、そもそも、人間が彫像になるなんてあり得ないんだけど。
ダイアナに促されて、わたしとお兄様が朝食を食べる時に使っている丸テーブルへ向かう。
テーブルには真っ白なクロスがかけられて、中央に一輪挿しが置かれている。今日の花は、ピンク色のガーベラだ。
席についてお兄様を見たけど、お兄様はまだ扉の近くで立ち尽くしたままだわ。
……変なお兄様。
今日はいったいどうしちゃったのかしら?
気になったからしばらく見つめていると、お兄様がふるふると首を横に振り、それから、キッとダイアナを睨みつけた。
「ダイアナ、これはどういうことだ」
「何がでしょう」
「何が、ではない! どうしてカレンが、このように露出の高い服を着ている⁉」
……露出が高い?
いえお兄様、このドレスは、妙齢の令嬢が着るドレスにしては露出は少なめだと思います。以前のドレスよりは、多いですけど。
ダイアナはあからさまなため息をついた。
「何を言いだすかと思えば。これくらい普通です。いえ、少ないくらいです。ちょっと肩が出ているくらいで大袈裟な」
「ちょっと? 全部出ているではないか!」
お兄様は叫ぶと、わたしのクローゼットを勝手に開けて、薄手の白いショールを取り出した。
「カレン、これを羽織っていなさい」
「何馬鹿なことを言っているんですか」
わたしが受け取る前に、ダイアナがお兄様からショールを奪い取った。
「陛下、カレン様がおいくつなのかご存じですか」
「十六だ」
「ちゃんと年がわかっていて言っているんですね?」
「……カレンには露出はまだ早い。変な虫がついたらどうするんだ」
「陛下がお払いになればいいのでは? はいはい。メイドが朝食を運んで来たようです。とっとと座ってください。立ったままでいられたら邪魔ですから」
ダイアナに邪魔者扱いされて、ぶすっとした顔になったアーネストお兄様がわたしの対面に腰を下ろした。
……ふふっ。
つい笑ってしまうと、お兄様が怪訝な視線を向けてくる。
「どうした?」
「いえ、ダイアナと仲良しだなって」
さすが乳兄妹である。お兄様とあんなにポンポン言葉の応酬ができるなんて。
すると、アーネストお兄様とダイアナが揃って顔をしかめた。
「「仲良くはない(ありません)」」
見事に重なった二人の声に、わたしはさらにおかしくなる。息もぴったりだ。
朝食がテーブルの上に並べられてメイドが下がると、お兄様がちらっとわたしを見て――
「カレン」
「はい?」
「……似合っている」
ちょっと照れた顔で言ったお兄様に、わたしはぱっと笑った。
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☆あらすじ☆
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ISBN-13 : 978-4867949917









