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人質王女は幼馴染の国王の執着から逃れられない  作者: 狭山ひびき


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国王になった王子様 3

お気に入り登録、評価などありがとうございます!

本日二回目の更新です。

明日からは一日~二日に一度更新くらいの頻度になろうかと思われます。

どうぞよろしくお願いいたします。

 八年分の収支報告書に何が書かれていたのかは知らないけれど、分厚いそれを確認したアーネストお兄様は大激怒した。


 わたしは城の部屋に移されて、離宮の使用人ではない別の女性を紹介された。

 なんでも、アーネストお兄様の乳兄妹なのだそうだ。

 名前をダイアナ・バークと言い、バーク伯爵令嬢だそうだ。年は二十歳だという。

 ダイアナはこれからわたしの専属侍女になるらしい。お兄様がダイアナに無理を言ったみたいよ。


 アーネストお兄様はダイアナを紹介すると、離宮の使用人を厳罰に処すと息巻いて出て行ってしまったわ。


「あらあら、国王陛下になられたというのに、子供みたいですわね」


 ダイアナが怒りをあらわに部屋を飛び出していったアーネストお兄様を見て困ったように笑う。

 それから、改めてわたしに向き直った。


「アーネスト殿下……いえ、陛下の掌中の珠にようやくお会いできて嬉しく存じます。どうぞダイアナと呼んでくださいね。今後、姫様の身の回りのことはわたくしが取り仕切らせていただきます。手癖の悪いものは決して近づけませんので、どうぞご安心を」


 ふふふ、とダイアナが微笑む。

 赤い髪に琥珀色の瞳を持つダイアナは背も高くて迫力のある美人だ。


「陛下の掌中の珠」というのがよくわからなかったけれど、フェアクロフト国では嫌われることが多いわたしに対して、嫌悪感を持っていないというのは伝わって来た。


 ……離宮では誰とも仲良くできなかったから、嬉しいわ。


 人質という立場上、誰かと仲良くしたいなんて願うのはおこがましい。

 アーネストお兄様が気にかけてくれるだけ、わたしはとても恵まれているのだ。

 そう思ってこの八年間を生きて来たけれど、やっぱり、寂しかったし悲しかった。

 人質期間はあと二年だけど、その二年の間、ダイアナのような人が側にいてくれるなんて。アーネストお兄様には本当に感謝だわ……!


「あの様子だとしばらくは戻ってこないでしょうし、引っ越しで疲れたでしょう? お菓子でも食べてゆっくりしてくださいませ」


 ダイアナがそう言って、メイドを呼んでお茶とお菓子を用意させる。

 お菓子なんて、アーネストお兄様が遊びに来てくれる時くらいしか用意されなかったのだけど、食べてもいいのかしら?

 運ばれてきたのはみずみずしい桃を使ったタルトで、見ているだけですごくお腹がすいてくる。

 ダイアナに促されてソファに座ると、いい香りのする紅茶とケーキが目の前に置かれた。

 そして、毒見のつもりなのか、ダイアナが紅茶とケーキをそれぞれ一口ずつ口にする。


 ……そんなことをしてもらって、申し訳ないわ。


 だけど、実際にわたしは微量の毒を盛られたことがあるので、食べるものにはちょっと神経を使ってしまうのだ。

 人質であるわたしを殺害すると問題になるので、死なない程度の毒なんだけど、過去に数回、食事に毒物が混入していたことがあったのよ。

 だから、申し訳なくもあるけれど、ダイアナが毒見をしてくれるとホッとする気持ちもあるの。だって、伯爵令嬢でアーネストお兄様の乳兄妹であるダイアナが口にするとわかったら、不用意に毒物なんて混入できないでしょう?

 そんなことを考えてしまうわたしは、とっても打算的なのかもしれないわ。


「ありがとう、ダイアナ。……いただきます」

「ええ、お代わりもありますから、好きなだけ食べてくださいませ。ああでも、晩餐は陛下がご一緒したいと言っていましたので、夕食が入るくらいはお腹をあけておいてくださいね」


 ふふっ、もう!

 いくらなかなか食べられなかったお菓子だからって、そんなにお腹がはちきれるくらい食べたりしないわよ。


 こういうことを言うと、とっても不謹慎だし、とっても性格が悪いかもしれないけれど――わたしは、「降ってわいた幸運」という言葉を噛みしめながらケーキを口に運ぶ。

 だって、お兄様が国王陛下にならなければ、きっとわたしは、人質期間が終わるまであの離宮で過ごしていたはずだもの。

 こうしてお城にお部屋をもらえて、ダイアナみたいな素敵な女性を侍女につけてもらえて、何よりアーネストお兄様と同じ建物内で生活できるなんて、夢を見ているみたいよ。


 ……こんな風に考えてしまうから、きっとわたしはアナスタシア様に嫌われるのね。人質のくせに、なんて図々しいのかしらって。


 でも、あと二年。


 二年しか、わたしはこの国にはいられない。

 アーネストお兄様の近くにいられるのは残りたった二年なのだから、少しくらい、この幸運を噛みしめたい。


 あむっと口の中に入れた桃のケーキから、じゅわっと果汁があふれ出して、わたしはついつい、ふにゃりと頬を緩めた。





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