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人質王女は幼馴染の国王の執着から逃れられない  作者: 狭山ひびき


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3/7

国王になった王子様 2

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 それから数日後、お兄様の戴冠式は無事に終わったらしい。

 人質であるわたしは、その晴れやかな場に参加することは許されなかったので、離宮の部屋で、お兄様が盛装に身を包んで王冠をかぶる様を想像するしかできなかった。


 盛装は、事前に見せてもらったの。

 アーネストお兄様が、見てみたいとぽつりとこぼしたわたしに、わざわざ見せに来てくれたのよ。

 戴冠式に着るアーネストお兄様の盛装は、白地に金糸で刺繍の入った豪華なもので、その上に緋色のマントを羽織る。


 代々戴冠式を行って来た大聖堂で、国のために身を捧げる覚悟を誓うの。

 アナスタシア様は、戴冠式より前に、お兄様の命令で北の離宮へ移された。

 これには、大臣やお兄様の弟である第二王子グラッドウィン殿下も難色を示したみたいだけど、モーガン先生が作った診断書を理由に強行したんだそうだ。

 アナスタシア様は最後まで、陛下が亡くなったのも、自分が離宮に追いやられるのも、全部わたしのせいだと激怒していたみたいだけど……。


 そして今日は――


「荷物はたったこれだけしかないのか?」

「ええっと、それほど持ち物は多くないので……」


 トランクを前に眉を跳ね上げるアーネストお兄様に、わたしはおろおろと答える。

 アーネストお兄様は以前、わたしが城で暮らせるように手配すると言っていたけれど、本当に実現させてしまった。

 今日はそのお引越しの日だ。

 わたしの荷物がトランク三つ分しかないのを見て、ものすごく怖い顔になっている。


「そんな馬鹿な話があるか! 君はもう八年もここで生活しているんだぞ? 八年もいて、トランク三つ? あり得ない!」

「え、えーっと」


 わたしの荷物が少ないのには、もちろん理由がある。

 人質であるわたしの生活費は、フェアクロフト国とノウェスナー国の両国から出ている。

 祖国であるノウェスナー国からは半年に一度、一定額が、フェアクロフト国からは毎月生活費が支給されていた。


 だけど、フェアクロフト国から支給される生活費は……その、アナスタシア様が、「敗戦国の姫に出すお金はない!」と、離宮の使用人を通じてわたしに回らないように手配していて……。


 だからわたしは、半年に一度送金される祖国からのお金を生活費に充てていたんだけど、食費はともかくとして、ドレスや日用品を購入すると、いつの間にか部屋の中からなくなっていくことも多くて……。

 それがアナスタシア様のご命令なのか、使用人がこっそりと売り払っているのかはわからないのだけど、アーネストお兄様が知ると激怒しそうだから言いにくい。


 ……アーネストお兄様からプレゼントされたものは、ちゃんと手元に残っているし。


 わたしが購入したものはいつの間にか消えることが多かったけれど、アーネストお兄様が贈ってくれたドレスやアクセサリーなどはどこにも消えずに手元に残っているの。

 それは、アーネストお兄様がたまに「以前私があげたドレスを着てほしい」とか「あのネックレスをつけたカレンが見たい」とか言ってくれるからだろう。

 アーネストお兄様に乞われて身に着けようとしても、それがどこにもなかったら、きっとお兄様は使用人を疑うもの。そうなったら処罰されるから、誰もお兄様からのプレゼントには手を出せなかったのだと思うわ。


 ……わたしも、なんで勝手にわたしのものを持って行くのって腹が立ったし悲しくもなったから、告げ口したい気持ちはちょっとくらいはあるんだけど……。


 ただ、お兄様の怒り方がいつも苛烈で、間違いなく使用人は厳罰に処されるから、言いにくいの。

 実際、わたしの世話を怠ったメイドや、わたしを殴ったり蹴ったりした使用人は、罪の度合いによってお兄様が長期間の労役につかせたり一家郎党国外追放にしたりしたのよ。

 もし、使用人がわたしの私物を盗んだなんて知られたら――、ああ、ほら、部屋の隅で青くなっているメイドが数人いるわ。たぶんだけど、わたしの私物がなくなった問題に関与している人たちね。


 ……でも、お兄様はとっても賢いから、わたしが黙っていても気づくわよね。


 どうしたらいいかしら。

 アナスタシア様は「敗戦国の姫に教育なんて不要」と言ってわたしから教育係を取り上げたけれど、アーネストお兄様が手を回してくれたから、最低限、一国の王女として身に付けなければならない教育は終わっている。

 だからね、わたしは何も知らない子供のままではないし、主人のものを盗んだ使用人にどういう罪が適用されるかは知っている。


 ……軽い罪なら鞭打ち、重い罪なら労役もしくは国外追放。盗んだものの価値の大きさによっては、最悪処刑にもなるわね。


 わたしの私物にはたいした価値なんてないでしょうから、処刑にはならないだろう。

 だけどアーネストお兄様のことだから、盗んだ回数によっては労役か国外追放を適用しそう。

 鞭打ちも怖いけど、労役や国外追放なんてことになったら、この国での人生は終わったも同然だ。家族までまとめて憂き目に遭う。


 離宮の使用人たちはわたしのことが嫌いなのか、それとも目を光らせていたアナスタシア様が怖かったのか、わたしと仲がよかったわけじゃない。

 むしろ小さな嫌がらせはずっと続いていて――正直なところ、わたしはこの離宮の使用人が好きではなかった。

 だから、庇ってあげる必要はないと思う……んだけど、彼女たちがわたしの生活の面倒を見てくれていたのも本当だから、もし労役刑や国外追放なんてことになったら後味が悪いし胸が痛い。


 いつもわたしに冷たい目を向けてくるメイドだけど、今なんて青ざめてわたしを凝視しているし。

 きっと、庇ってほしいんだと思うわ。

 わたしが庇ったところで、お兄様はきっとすぐに真実にたどり着くでしょうけど……。


「お兄様、わたしは、お兄様が下さったものがあれば充分でしたから。ほら、子供の頃に頂いた小さなドレスはもう着られなくなったからって、お兄様が回収して言ったでしょう?」

「ああ、ちゃんと俺の部屋に保管してある」


 保管?

 保管って言った?

 子供用の古着のドレスを保管してどうするのかしら?


 ちょっとした疑問が頭の中に沸いたけれど、今はそれを追及している場合じゃない。


「だから、その、わたしの荷物は少ないんです!」


 とっても苦しい言い訳だったけれど、荷物のほとんどがお兄様から頂いたものだから、嘘を言っているわけではないのよ。

 お兄様は熟考する顔になった。

 どうやら納得してくれたのかしら、と思った矢先。


「八年分のカレンの収支報告書を持ってこい」


 お兄様が、そんなことを言い出した。

 メイドたちは蒼白を通り越して白くなってしまっている。


 ……ああ、ダメみたい。


 これはもう、何を言ってもお兄様は止まらないだろう。

 わたしは、離宮の使用人たちの罪が軽いものになりますようにと、祈ることしかできなかった。





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