羽をもがれた最愛(SIDEアーネスト) 2
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次の日から、アーネストははやる気持ちを押さえて慎重に動いた。
まだ、カレンの安全を確保していない。
この段階で派手に動けば、カレンを人質にとられる可能性があった。それだけは何としても避けたい。一番優先されることは、カレンの確保だ。
アーネストは宰相マガリッジ伯爵とギブソン公爵に協力を要請し、信用が置ける者たちだけでカレンの捜索に移らせた。
人海戦術で大々的に探せるなら楽だったが、グラッドウィンやラングトン公爵家派閥の連中に気づかれずに動くとなると、こちらの行動はかなり制限せざるを得なかった。
アーネストが、いっそのことグラッドウィンを殴りつけて吐かせたい衝動に駆られたがぐっと耐えて情報を集めていると、ある町からノウェスナー国宛の手紙が出されたという一報が入った。
フェアクロフト国からノウェスナー国へ手紙が送られることは、戦争が終わった今ではさほど珍しいわけではない。だが、宛先があまりにも特殊すぎて、国に確認の連絡が入ったのだ。何故なら、送り先がノウェスナー国の国王宛てだったのである。
(見つけた!)
転送されて来た手紙を確認したアーネストは確信した。
レターセットが、この国でカレンしか使っていないものだったからだ。これは、アーネストが特注で作らせたカレン専用のレターセットである。市場に出回っていない以上、カレン以外が使うことはまずない。
アーネストはすぐさま手紙が出された町に使いを遣った。
すでにその町にカレンたちはいなかったが、それほど時間が経過していなかったため追跡は容易だった。
カレンたちの移動経路に予測が経ったアーネストは、宰相を説得し、自らカレンを迎えに行くことにした。
グラッドウィンの言葉を信じて、黙っていなくなったカレンには思い知らせてやる必要がある。
アーネストの元から消えるとどうなるのか、しっかりとわからせてやらなければならない。
(勝手に出て行くような子は、いっそ閉じ込めてしまわないとな)
この世の誰も、たとえカレン自身でも、アーネストからカレンを奪ってはならないのだ。
そして、カレンの身柄を確保しようと、宿の近くで待機している時だった。
宿に不審な男たちが出入りしはじめたことに気が付いたアーネストは慌てた。
明日の朝、カレンが出発する前に捕まえようと思っていた予定を変更し、連れてきていた騎士たちと共に宿に突入する。
宿の夜番の人間が悲鳴を上げかけたが、騎士の一人にすぐさま口を覆われて取り押さえられた。どうやら、宿の夜番の人間は、先ほど入って行った男たちに買収されたようだ。いよいよ怪しくなってきて、アーネストはカレンが泊っている部屋に急いだ。
アーネストがカレンが泊っている最上階の部屋まで階段を駆けあがったとき、不審な男どもがカレンの部屋の鍵を開けて中に入ったのが見えた。
アーネストはすぐさま騎士を連れて部屋に飛び込んだ。
部屋には複数人の男と女が一人いたが、特別な訓練を受けた者ではなかったのだろう、身柄を拘束するのはたやすかった。
だが問題は、カレン自身の姿がないことだ。
女と男たちを尋問しても、部屋に入った時からカレンの姿はなかったという。
窓に鍵はかかっている。出入り口の扉の鍵もかかっていたようだ。
ほかに出入り口がない以上、カレンはこの中にいるはずである。
アーネストは一度大きく深呼吸をして心を落ち着け、考えた。
カレンはどこだ。
カレンなら、どういう行動をとるだろう。
カレンのことだ、きっと、不審な人間の気配に気づいて身を隠したはずである。
だとすると、カレンなら、どこに隠れるだろうか。
部屋の中を歩き回り、アーネストは可能性を一つずつつぶした。
まず、クローゼット。
開けてみたがカレンはいない。それはそうだ。カレンならば、こんなにわかりやすいところには隠れないだろう。カレンは臆病なのだ。臆病だからこそ、自分が取れる手段の中で最良を選択する。
アーネストはバスルームの扉を開けた。
使用済みタオルの籠をちらりと見て、ふっと笑う。
「詰めが甘いな、カレンは」
一度入浴するだけなのに、タオルをこれほど何枚も使う人間はいない。それらしく偽装しているが、触れてみればしっかりと乾いていて、使用済みでないこともわかる。
ならば、このタオルが入っていたところにカレンはいるはずだ。
ぐるりと脱衣所を確認したアーネストは、迷わず棚に歩み寄った。
「カレン」
怯えさせないようにできるだけ優しく呼びかけながら扉を開けたアーネストは――棚の中でぐったりしているカレンを見て、凍り付いた。
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