羽をもがれた最愛(SIDEアーネスト) 1
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――それは、カレンが城からいなくなったと知った日の夜のことだった。
カレンの部屋の前の警護を担当していた衛兵が、自分が承認したリスト外の者――ラングトン公爵家派閥に属している者だったと知ってすぐ、アーネストは宰相マガリッジ伯爵に指示を出し、一体誰が勝手に警護担当を変更したのかを調べさせた。
同時に、該当の衛兵は尋問にかけさせたが、今のところこれといった証拠は挙がらない。
まあ、調べてすぐに黒幕にたどり着くような愚かなことはしないだろう。
ラングトン公爵家が関与しているのは確実だろうが、証拠もないのに身柄を拘束するのは難しい。
冷静さを欠いているアーネストならばラングトン公爵の顔を見れば殴りかかるくらいしそうなので、宰相から調査は自分でするので顔を出すなと言われていた。
国王が証拠もなく公爵に殴りかかったとなれば大問題になる。
アーネストは問題になろうとどうしようと気にしないが、それでカレン捜索が後回しになるのであれば別問題だ。
イラついて仕事にならないので、今日は休んでいろと言われたアーネストは、カレンが使っていた部屋を一日中捜索していた。
何か手掛かりはないかと、机の下やベッドの下などを覗き込み、大掃除をする勢いで細かくチェックをしたが、不審なものは何も残っていなかった。
アーネストはそっと息を吐き、カレンのベッドにごろんと横になる。
今日はここで寝よう。
カレンの匂いが残っているベッドなら、少しは心が落ち着くだろう。
もしもカレンがこの世のどこにもいないのならば、アーネストはすぐにでも後を追おうと考えていた。
けれども、まだ一縷の希望が残っているので、ギリギリ耐えているだけだ。
(もしもカレンがこの世にいないのなら……カレンがこの世から消える原因になった者どもを全員抹殺して、そのあとで私も死のう)
ごろんと横を向き、ここにカレンがいた痕跡を探す。
シーツの上に亜麻色をした一本の髪の毛を見つけ、アーネストはぎゅっと眉を寄せた。
昨日までいたのだ。
昨日までは、カレンが、ここに。
こんなことになるのなら、結婚を待たずして同じ部屋で休むようにすればよかった。
そうすれば、夜のうちにカレンが攫われるようなことはなかったはずなのに。
「カレン……」
横になったが到底眠れそうもない。
アーネストはベッドに上体を越して、サードテーブルの上にあったランプに火を灯した。
そして気づく。
ランプのすぐ近くに、一冊の本が置かれていることに。
「これは、私が貸した本か?」
カレンは物語を読むのが好きなので、部屋にあった神話の本を貸していたのだ。
本当は城の図書室を自由に使わせてやりたかったのだが、カレンが歩き回ると目立つ。
不埒な男どもの視線にさらされるのも気に入らないし、カレンを傷つけるような発言をするものがいないとも限らない。
カレンに対して悪意を抱くものの多くは城から追い出したが、まだ完全ではないのだ。
というか、まだグラッドウィンをはじめとする厄介な人間が残っている。
アーネストとしては母アナスタシアと同じくグラッドウィンも城から追い出したかったのだが、弟を追い出すための正当な理由がなかったのだ。
「ここに置いてあると言うことは、寝るときに読んでいたんだな」
アーネストは、貸していた本に残るカレンの痕跡を求めて手を伸ばし――ハッとした。
本に、何か挟まっている。
「これは……」
本に挟まっていたのは手紙だった。
手紙がカレンの手によるものだと気づくと、アーネストは大急ぎで封を破る。
カレンの流麗な筆跡の手紙を目で追ったアーネストは、ぎりっと奥歯を噛みしめた。
「――やってくれたな、グラッドウィン」
歯の隙間から絞り出すように漏らした声は、低く低く……静かな部屋の中に響いた。
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