逃亡の果てに 6
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わたしには理解が難しい言葉を落として、お兄様が部屋から出て行くと、十五分も経たないうちに慌ただしくダイアナがやって来た。
「カレン様っ!」
部屋に飛び込むなりわたしに駆け寄ってぎゅっと抱きしめて来るダイアナに、混乱の中で行き場をなくしていた感情がぶわっと溢れて来る。
「だ、だいあなっ」
感情の制御ができなくてぼろぼろと泣き出したわたしの頭を、ダイアナが何度も撫でてくれた。
「ええ、ええ、わかっております。あのくそ殿下がすべて悪いんです。こんなところで不自由しますが、どうぞ片付くまでお待ちを……うん?」
ダイアナはそこで、わたしの足首で輝いているアンクレットとチェーンの存在に気付いたらしい。
視線を下に落として、すっと目をすがめた。
「あんの歪みまくったくそったれ陛下めなんてものをっ!」
……くそったれ陛下って、もしかしなくてもお兄様のことかしら?
お兄様の豹変が怖かったのに、いつもと変わらない様子でプンプンと怒り出したダイアナにわたしは肩の力が抜けた。
ダイアナがここに来たということは、お兄様が許可を出したということだ。
お兄様は変わってしまったように思えたけれど、ダイアナをわたしの元によこしてくれたことを考えれば、お兄様はやっぱり優しいお兄様のままなのだろう。
そうでなければ、わたしをこの場に一人ぼっちで放置していただろうから。
わたしが困らないように。そして寂しくないように、ダイアナを呼んでくれたのだ。
……混乱して、いろいろ考えすぎちゃったみたい。
確かにおかしな点はたくさんある。
さっきのアーネストお兄様の様子も変だった。
あの様子で迫られたら、また怖いと思ってしまうかもしれない。
だけど、お兄様が他人になったわけではないのだ。
「落ち着かれましたか?」
わたしの涙が止まったことに気づいて、ダイアナがにこりと微笑んでくれる。
わからないことはたくさんある。
どうしてわたしがここにいるのか、とか。
お兄様が言っていた「全部片づけたら」とはどういうことなのか、とか。
グラッドウィン殿下はわたしが戻ってきたことを知っているのか、とか。
宿で襲撃してきた人たちは、グラッドウィン殿下の手のものなのか、とか。
いろいろ。本当に、いろいろ――考えたらきりがないくらいに疑問がたくさんある。
だけど、お兄様に「少し待っておいで」と言われた。
きっと、全部片付いたらわたしに説明があるだろう。
身じろぎすれば、しゃらん、と足首のチェーンが音を立てる。
――わたしは今、籠の鳥。
お兄様が籠の鳥でいることを望んでいるのなら、今は、この甘い鳥籠の中にいよう。
少しだけ疲れたから、お兄様に守られた鳥籠の中で羽を休めたいの――
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