私の最愛(SIDEアーネスト) 2
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それは、アーネストが水面下でカレンを妻にするために画策を続けていた、ある日のことだった。
「もう一度言ってくれ」
早朝。
乳兄妹であるダイアナが蒼白な顔でアーネストの部屋へと突撃してきた。
アーネストは寝起きで耳がおかしくなったのかと。そうであるならどんなにいいかと思いながら、早鐘を打ちはじめた心臓の上を押さえていると、ダイアナが震える唇で口返す。
「カレン様が、どこにもいらっしゃいません……」
「すぐに騎士を呼んで国中を捜索させろ! それからカレンの部屋に荒らされた痕跡がないかどうかも徹底的に調べ上げるんだ!」
昨夜まで部屋にいたカレンが、今朝突然いなくなるなんて明らかにおかしい。
誰かに攫われた可能性も否めず、アーネストは声を張り上げた。
ダイアナにはカレンの部屋に戻っているように告げ、急いで着替えをすませると、宰相に午前の会議を休むと伝えてカレンの部屋へ走る。
カレンの立場は、ノウェスナー国からの人質王女だ。カレンがいなくなったとなれば騒動になるのであまり大勢の人間に知られるわけにはいかない。
宰相であるマガリッジ伯爵には事情を説明し、情報規制を頼んでおいた。
カレンの部屋は、ダイアナが人を入れないようにしているようで、部屋の外の衛兵以外はダイアナしかいない。
衛兵は夜通し警護をしているはずだが、間で何度か交代があるはずだ。
昨日の夜から今朝にかけてカレンの部屋の警護をしていた衛兵には、変わったことがなかったか、あとで話を聞く必要があるだろう。
「ダイアナ。どうだ」
「窓が割られた形跡や、室内が荒らされた形跡などはありません。もしカレン様が攫われたのならば、考えられるのは……」
「深夜、寝ているうちに運ばれたか、もしくは睡眠薬か何かで眠らされて運ばれたか、か」
その他の可能性がもう一つあるが、これは考えたくない。
だが、ダイアナも最悪の可能性が脳裏をよぎったのだろう。泣きそうな顔で「まさか、殺害されたなんてことは……」と言い出した。
「余計なことを言うな!」
「す、すみません」
アーネストだってわかっている。
カレンが攫われたと仮定して、その犯人の目的が何なのかはわからないが、カレンをこの国から消すことが目的ならば生死を問わない可能性が高い。
カレンの周りからはラングトン公爵家派閥の人間を遠ざけているが、彼らがもし画策したのならば――過去に、カレンに危害を加えてアーネストが罰した人間の家族や親戚が、カレン相手に復讐しようと考えたとも考えられた。
アーネストはゾッとして、部屋の捜索を引き続きダイアナに頼むと、宰相の元へ向かった。
「マガリッジ伯爵、昨夜カレンの部屋の警護に当たっていた衛兵を私の部屋に全員呼んでくれ。騒ぎが大きくならないように頼む」
「かしこまりました」
「……カレン」
アーネストは顔を覆って叫びたくなるのをぐっとこらえて、大きく息を吐き出した。
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