お邪魔虫 7
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グラッドウィン殿下から早々にノウェスナー国へ帰るように言われてから、わたしは考え込むことが増えた。
そのせいか、お兄様にもたくさん心配をかけてしまったようだ。政務の間にも様子を見に来るようになって、そのことにも、わたしは落ち込んでしまった。
……わたし、お兄様の縁談だけじゃなくて仕事の邪魔までしているのね。
グラッドウィン殿下の言う通り、わたしはこの国にとって邪魔ものなのだろう。
国交改善のために送られて来た人質が、国を乱すなんてあり得ない。きっと、わたしは人質としても役立たずなのだ。
……だったらせめて、グラッドウィン殿下の言う通り早めに出て行った方がいいんでしょうね。
遅かれ早かれ、近いうちに帰るのだ。
それが一月早くなったところで大きな問題じゃない。グラッドウィン殿下が許可を出している以上、ノウェスナー国の契約不履行とはみなされないだろう。
……出て行く前に一応、手紙に事情を書いておいた方がいいかしら?
グラッドウィン殿下のことは疑いたくはないけれど、安全策は取っておくべきだ。
お兄様に言えば邪魔をするかもしれないとグラッドウィン殿下が懸念していた。ならば、お兄様には出て行くまで相談することはできない。
もしグラッドウィン殿下がわたしが勝手に出て行ったと証言したら、ノウェスナー国とフェアクロフト国との関係にひびが入るかもしれない。それは避けなければならないので、わたしが出て行った後でお兄様が気づくだろう所に手紙を用意しておいた方がいい。
寝る前の入浴を終えて、ダイアナが控室に下がった後で、わたしはランタンに明かりを灯してライティングデスクに向かった。
お父様たちに手紙を書くのに必要だろうとお兄様がプレゼントしてくれたレターセットを取り出し、丁寧に手紙をしたためていく。
これを、お別れした後にお兄様が読むのだと思うと涙が滲んできた。
便箋に落ちてインクが滲んだら大変なので、夜着の袖で目元を何度もぬぐいながら文字を書く。
……この十年、つらいこともたくさんあったけれど、お兄様と一緒にいた時間はいつも楽しかったわ。
どうか、お兄様に優しくて思いやりのある素敵な女性が嫁いでくださいますように。
わたしはお兄様の隣に立つことは許されないけれど――欲を言えば、どうしてわたしではダメなのかしらって、ちょっと思ってしまうけれど、優しくて大好きな、この十年間、わたしをいつも守ってくれたお兄様が幸せになれるのならそれでいい。
もし、お兄様から結婚式の招待状が届いても、笑顔で祝福できる自信がないから……きっと、辞退してしまうと思うわ。
そんなわたしを、お兄様は不義理なやつだと怒るかもしれないわね。
「楽しかった……」
十年を思い出せば、つらいことの方が多かったけれど、それでも、楽しかった。
特に、城に部屋をもらってからは、毎日お兄様と会えて、ダイアナたちも優しくて、本当に本当に、楽しかったの。
こんなことを言っても仕方がないかもしれないけれど――もしも、ノウェスナー国とフェアクロフト国が戦争をしていなければ。わたしが、人質の王女でなければ。隣国の国王であるお兄様と、わたしとの間に縁談が持ち上がることも、あったのかしら。
ああでも、そうなっていたら、きっとこの十年はなかったから……お兄様との関係も違ったかもしれないけれど。
でもきっと、どんな出会い方をしても、わたしはお兄様を好きになる。そんな確信があるの。
わたしは出来上がった手紙を封筒に入れて丁寧に封をして、お兄様から借りていた本の間に挟む。
わたしがいなくなったら、お兄様は自分の本を回収するでしょう?
少しだけ端っこが見えるように挟んだ手紙の存在にも、お兄様ならきっと気づくわ。
そしてわたしはもう一つ、レターセットを取り出し、ペンを握る。
送り先は――グラッドウィン殿下だ。
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出版社 : オーバーラップ
発売日 : 2026/5/20
ISBN-10 : 4824016487
ISBN-13 : 978-4824016485
☆あらすじ☆
悪役令嬢としての断罪の未来を回避するため奔走し、無事に攻略対象・アレクの妹の病を癒やすことに成功したマリア。
一件落着でようやく平穏な学園生活を送れるかと思いきや……
お義兄様は相変わらず意地悪で振り回してくるうえに、冷たかったはずのアレクまで「君を生涯守る騎士になる」なんて言い出して、マリアを巡るバトルが勃発!?
一方、街では連日義賊が出没し混乱を極める事態に。
新たな攻略対象・ヴォルフラムとその兄・ヒルデベルトの秘密に関わる重大なイベントだったはずが、マリアのこれまでの行動の影響か、前世の知識とはかなり内容が変わってしまっているようで……?
ヒロイン不在で着々と進行する物語に困惑しながらも、目立たないように裏でこっそり事態の収束を試みるマリア。
しかし案の定一筋縄ではいかず、みんなを巻き込む大事件に発展してしまい――!?
ちょっぴりポンコツな愛され悪役令嬢による破滅回避ラブファンタジー、波乱の第2幕!









