お邪魔虫 2
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「ってことがあったんですよ!」
あのあと、お茶会は穏やかにはじまって終わり、わたしは城に戻ってお兄様に今日あったことを報告していた。
本日の夕食はダイニングではなくお兄様の部屋で二人きりだ。
週に一度くらいはダイニングでグラッドウィン殿下を交えて晩餐が開かれるのだけど、わたしは晩餐よりお兄様の部屋で二人で夕食を取る時間の方が好き。
「それは大変だったな」
お兄様はわたしのお皿にローストポークを一口大に切って乗せながら、クツクツと喉を鳴らして笑った。
わたしはついついダーラがエレインを撃退したときのことを武勇伝よろしく語ってしまったあとで、ハッとした。
……エレインはお兄様の婚約者候補だったわ!
不快に思わなかっただろうかと心配になったけれど、お兄様は楽しそうだから大丈夫かしら?
きっとお兄様にしてみたら、子供の喧嘩のように思えたのかしらね。
「それにしても、ダーラ・ギブソン公爵令嬢は英断だったな。場を乱すようなことをするものは、とっとと追い出しておくのに限る」
「ええっと、じゃあ、ダーラは罪には問われませんよね?」
「何故ダーラ・ギブソンが罪になる? 公爵令嬢でありお茶会の主催者でもある彼女が、お茶会の邪魔にしかならない身分も下の侯爵令嬢を追い出しても何ら問題ないだろう?」
「そうですか」
わたしはホッと胸をなでおろした。
エレインがお兄様や王太后様、ラングトン公爵に今日のことを告げ口したらどうなるかしらと、ちょっぴり不安だったのだ。
もちろん、お兄様は公正な方だから、ダーラを咎めるようなことはしないだろうけど、王太后様やラングトン公爵はわからない。
だけど、お兄様がダーラの行動は罪にならないと断言してくれたから、たとえ王太后様やラングトン公爵が騒いでだとしても大丈夫だ。
「それよりも、ほら。しっかり食べなさい」
「お兄様、料理を取り分けてくださるのは嬉しいですけど、こんなに食べられませんよ?」
わたしの取り皿にこんもりと盛られたローストポークに、わたしは途方に暮れてしまった。
ガーリックの香りが食欲をそそるローストポークはわたしも好きだけれど、限度があると思う。
「そうか? では半分は私が食べよう」
「ぜひそうしてくださいませ。こんなに食べたらお腹が苦しくなって動けなくなります」
「動けなくなったら責任を取ってわたしが部屋まで運んであげるよ?」
「そんなことをしたら目立ってしまいます」
「いいじゃないか。むしろ目立つくらいがちょうどいい」
……なにが?
子供みたいに抱っこされて部屋に運ばれるなんて恥ずかしいだけなのに、お兄様ったら何を言っているのかしらね。
お兄様に半分にしてもらったローストポークを口に運ぶ。
わたしの口のサイズを熟知しているお兄様は、とっても食べやすい大きさにしてくれるの。自分で切り分けられますよって言うんだけど、塊のお肉が出たらいつも切り分けてくれるのよね。
お兄様ったらどういわけか「カレンに刃物を持たせるなんて危険なことはさせられない」なんて意味不明なことを言って、食事用のナイフを取り上げちゃうの。わたし、どれだけ不器用だと思われているのかしら? お昼ご飯の時はちゃんと自分でナイフを使っているわよ?
「そうだ、カレン。また新しいハンカチに刺繍を頼む」
「いいですけど、お兄様のハンカチ全部にわたしの刺繍が入っていていいんですか?」
普通、ハンカチに刺繍を入れるのは恋人や妻の特権だと思うのよ。あとはまあ、イニシャルとかを業者に頼む人もいるけど。
「もちろんだ。私のハンカチに刺繍を入れていいのはカレンだけだよ」
「わかりました。じゃあ、刺繍を入れておきますね」
わたしばっかりいいのかしらと思うけれど、お兄様のハンカチに刺繍を入れられるのは嬉しい。
わたしがフェアクロフト国にいられるのもあともう少し。
その間にできるだけ……わたしが、この国にいたことを忘れられないためにも、わたしの小さな爪痕を残しておきたいの。
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