お兄様の婚約者候補 3
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パーティー開始時間の少し前になって、アーネストお兄様がわたしを迎えにやって来た。
お兄様は、白い布地の詰襟の服だ。襟と袖にはわたしの髪の毛のような亜麻色の糸で刺繍が入れてある。
マントは緋色なんだけど、裏地はわたしの瞳の色のような茶色だった。裏と表で色が違うなんて珍しいわ。
艶々の銀色の髪は後ろに撫でつけていて、これまた、亜麻色の糸の刺繍が入った白い手袋をはめている。
胸ポケットには……あら、あのハンカチ、わたしが刺繍を入れたものだわ。
わたしはお兄様の素敵な出で立ちに、ついぽーっとなってしまったのだけど、それを隣で見ていたダイアナがぼそりと。
「そこまで執着が強いと、怖いです。そのうち逃げられますよ」
「余計なことを言うな」
お兄様はじろりとダイアナに視線をむけて、わたしににっこりと微笑みかけた。
「さあ行こうかカレン。今日は私の手を離してはいけないよ」
「わかりました」
お兄様の手を取ると、手袋越しに少しひんやりとしたお兄様の体温を感じる。
夕日が差し込む廊下を、わたしはお兄様にエスコートされながらゆっくりと歩く。
きゅっとお兄様の手を繋ぐわたしを、お兄様が小さく笑って見下ろしてきた。
「緊張している?」
「はい、とっても」
だって、パーティーだ。
しかも、人質になってはじめて、わたしの誕生日パーティーが開かれる。
これまではお兄様やダイアナ、イヴリン先生が祝ってくれていたけれど、パーティーははじめてだ。ノウェスナー国にいた頃も、社交デビュー前の子供だったので、家族に祝われた記憶しかない。
「カレンは型通りの綺麗なダンスを踊るし、何かあれば私がフォローするから大丈夫だ」
「はい……」
そうだった。ダンスの問題もあったんだったわ。
わたしの誕生日パーティーである以上、一応主役のわたしが踊らないわけにはいかない。
相手はお兄様が務めてくれるけれど、人前で踊るのははじめてだ。足がもつれたらどうしよう。
「カレン」
緊張しすぎてうつむいたわたしに、お兄様がすっとポケットから小さな箱を取り出した。
「緊張するのならお守りを上げよう」
お守りってなにかしらと、立ち止まってお兄様を見上げる。
お兄様が小箱を開けると、中にはサファイアだろうか、青い石の可愛らしい指輪が入っていた。
わたしの指にすっと指輪をはめて、お兄様が満足そうに頷く。
「サイズもいいようだ。本当はパーティーが終わってから渡そうと思っていたんだけど、ドレスにも合うし、今渡して正解だったな」
お兄様が親指の腹で指輪とわたしの指を撫でるのがくすぐったい。
「朝も言ったが、誕生日おめでとう、カレン」
「ありがとうございます、お兄様」
「お兄様、か……」
アーネストお兄様は口の中でつぶやくと微苦笑を浮かべて、わたしの手を繋ぎ直すと歩き出す。
「さあ、行こう。主役は遅れてもいいものだが、はじめてのパーティーだ。時間どおりの方が印象がいい」
「はい!」
まだまだ緊張しているけれど、お兄様のくれたお守りのおかげか、少しだけ気が楽になった気がする。
……お兄様の瞳の色みたいで綺麗な石。
わたしがこの国にいられるものあとわずか。
最後にこんな素敵なプレゼントが貰えたなんて、嬉しくってちょっとだけ泣きそうよ。
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