お兄様の婚約者候補 2
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イヴリン先生とダイアナの勝利によってわたしのお披露目パーティーが決まったわけだけど……そこから先が大変だった。
お兄様は「考えておく」と言ったまままったく考えている素振りがなく、ダイアナとイヴリン先生が二人がかりで毎日せっついて、一か月後。
ようやく、アーネストお兄様が、わたしの十八歳の誕生日にお披露目パーティーをすると言った。
わたしは初夏生まれなので、お兄様が発表してから開催日まで一か月ほどしかなくて、ダイアナはとっても忙しそうだった。
わたし? わたしは、ダイアナに言われるままにドレスを試着したりいろいろしたけれど、忙しいというほどではなかったわ。
お披露目という名目のわたしの誕生日パーティーの招待状も、すべてお兄様が手配してくれたし。
……というか、招待客を厳選すると言って、ちょっとしか呼ばないつもりだったみたいよ。
それがダイアナにバレて、招待客を増やされたんですって。お兄様が仏頂面で教えてくれたわ。
そんなこんなで、わたし以外の周囲が慌ただしく準備を重ねて、ついに、わたしの誕生日パーティーの日がやってきた。
今日のわたしのドレスは、目が覚めるくらいに鮮やかな青色よ。
これは、お兄様が頑として「青!」と言って譲らなかったの。アーネストお兄様が青色が好きだったなんて知らなかったわ。
もっと言えば、デザインは襟の詰まったものがいいとお兄様から注文が来ていたんだけど、それについてはダイアナとイヴリン先生が凄みのある笑みを浮かべて却下した。
女性にとって流行というのがいかに大切かを延々と説教されたアーネストお兄様は、終わったころにはぐったりしていたわ。
……えーっと、なんかごめんなさい、お兄様。
今日のドレスは、前はそれほどではないのだけど、背中がとっても開いているの。
お兄様はそのデザインを見た時に「断固反対!」と叫んでいたんだけど、やっぱりダイアナとイヴリン先生の凄みのある笑顔の前に惨敗したわ。
「胸元が大きく開いているのは嫌だと騒ぐから背中が開いているデザインにしたのに、まったく、陛下と来たら……」
と、ダイアナが頭が痛そうな顔でため息をついていたわね。
たぶんだけど、胸元が開いているデザインのドレスをお兄様が嫌がるのは、わたしのためを思ってだと思うわ。
わたし、十六歳から今日までで胸が急成長をとげちゃって、ちょっと大きいのよ。
そのせいか、胸元が開いているドレスは「はしたない」んですって。
お城のメイドが数人、そんな話をこそこそとしていたのを聞いたもの。
わたしの胸が「はしたない」って陰口を叩いていたメイドは、そのあとお兄様の逆鱗に触れてどこかに飛ばされたか辞めさせられたかしたみたいで、それ以降は陰口をたたかれることはなくなったんだけど……きっと、メイドたちの言っていたことが正解なのよ。
だからアーネストお兄様も、わたしが胸元が開いているドレスを着るのを嫌がるんだわ。
「お綺麗ですよ」
ドレスに着替えた後、最後に髪を結ってくれていたダイアナが褒めてくれる。
わたしの亜麻色の髪は、左右を編みこみハーフアップにされた。カーネーションの花を模した少し大きめの銀色の髪飾りが耳の後ろから差し込まれている。この髪飾りは、アーネストお兄様が贈ってくれたの。
普段はお化粧なんてしないわたしだけど、今日はパーティーだから薄くお化粧もしてもらったわ。
「こんなにおしゃれをするのははじめてだから、ドキドキしちゃうわね」
ドレスの裾をつまみながら照れていると、ダイアナが頬に手を当ててほぅ、と息を吐く。
「本当に、はじめての記念すべきパーティーにこの色なんて、陛下にはあきれてしまいますわね」
「どうしてお兄様にあきれるの?」
「これでは、がちがちにマーキングしているようなものだからです」
「マーキング?」
何のことかしら?
「まあ、カレン様に変な虫がつくと文字通り血を見ることになりそうですから、むしろこれでいいのかもしれませんが……ハァ、あの方は本当に」
文字通り血を見るって、とっても物騒だと思うんだけど……「これでいい」?
ダイアナはたまになぞなぞみたいな言葉を使うわね。理解できないわたしがお馬鹿さんなのかもしれないけど。
「いいですか、カレン様。本日は陛下の側から離れてはいけませんよ?」
「ええ、わかっているわ。お兄様にも言われたもの」
パーティーに慣れていないわたしが無作法をしたら大変だものね。お兄様の顔に泥を塗らないように、ふらふらと一人でさ迷い歩いたりはしないわ。
わたしの誕生日パーティーだからか、恐れ多いことに、今日は国王陛下であるアーネストお兄様がわたしをエスコートしてくださるの。
人質王女であるわたしが王族席に座るのもおかしいから、お兄様ってば今日は一日、上座には座らずにパーティーホールにいるのだそうよ。
「陛下が迎えにいらっしゃるまでまだ少しお時間がありますから、休憩なさっていてくださいませ」
「ええ、ありがとうダイアナ」
わたしはダイアナに促されてソファに座ったけれど、緊張しすぎて……あんまり、休憩にはなりそうにないわね。
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