22.魂の防波堤、そして竜の咆哮
エリスが剣を構える。
その背後に並ぶ影。
メイダの戦士たちだった。
そのとき――
ネクロスが笑った。
「面白いもん見せたるわ」
杖を地面へ突き立てる。
黒い波が広がった。
その瞬間。
ネクロスの身体が、ぐにゃりと歪む。
一人。
二人。
三人。
同じ顔が並んだ。
モルグレイブが腹を抱えて笑う。
「ぼくもやろー!」
身体が膨れ、裂ける。
同じ姿が増える。
ヴェイルは扇を広げた。
「舞台は賑やかな方がいいですもの」
彼女もまた――増えた。
戦場に、同じ顔が並ぶ。
十。
二十。
三十。
そして空から――
ふわり。
ピンク色の影。
膨らんだ魔獣。
風船のような身体。
裂けた口。
モルグレイブのピンク風船魔獣だった。
エリスが目を細める。
「増えるか。」
キャサリンが弓を引いた。
「数で来るなら――」
矢が放たれる。
風をまとった矢が空を裂く。
風船魔獣を貫いた。
破裂。
風船が弾けるように、肉片が飛び散る。
その瞬間。
マリアが前へ出た。
クレイモアを振り上げる。
「道、開ける!」
剣が叩きつけられる。
増殖したネクロスの一体が吹き飛んだ。
アビゲイルが踏み込む。
ハルバードが低く唸る。
「足元!」
刃が横薙ぎに走る。
ヴェイルの分身体の脚がまとめて刈られ、隊列が崩れた。
そこへ――
ジュリアが飛び込む。
軽い足取りで敵の間を抜ける。
ネクロスの分身。
モルグレイブの分身。
三体同時。
だが剣が届かない。
舞うように避ける。
そのとき。
フルートの音が響いた。
クララだった。
柔らかな旋律。
増殖体たちが、一瞬よろめく。
その隙を、ヘレンが見逃さない。
二本の剣が閃く。
飛んできた呪符を――
空中で斬り落とした。
「遠距離は任せて」
その背後で。
エリザベスが消える。
一瞬だった。
次に現れたとき。
彼女はネクロスの分身体の背後にいた。
短剣が首へ突き立つ。
「指揮体、排除」
重い音。
リディアのメイスが振り下ろされる。
モルグレイブの分身の頭を叩き潰す。
「詠唱、邪魔」
同時に治癒の光が仲間へ流れる。
イザベルが目を閉じる。
精神魔法。
見えない波が広がる。
ネクロスたちの分身体が混乱する。
味方同士でぶつかり始めた。
その瞬間。
アンが叫ぶ。
「ライン!」
長槍が整然と並ぶ。
突く。
押す。
止める。
増殖体が前へ出られない。
その背後から――
ナイフが飛ぶ。
エレノアだった。
風船魔獣の口を貫く。
膨らんだ身体が破裂する。
その後方。
ソフィアが声を張る。
「矢、補充!」
「装備交換!」
戦士たちの士気を支える。
そして――
その中央。
エリスが前へ出た。
ネクロスの分身体が笑う。
「増えても意味ないか?」
モルグレイブの分身体が笑う。
「でもさぁ」
ヴェイルの分身体が優雅に言う。
「数は暴力ですわ」
エリスが剣を構えた。
静かに言う。
「メイダ」
戦士たちが答える。
「はい!」
エリスが剣を振る。
「掃除だ」
十三人が同時に踏み込んだ。
増殖するジェスターたちと、
ピンクの風船魔獣。
その群れへ――
メイダの戦士たちが突っ込んだ。
戦場が、再び爆ぜた。




