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狐の嫁入りを見てしまったら、九尾の狐の婿になりました。〜異世界スイートテイル〜  作者: 2番目のインク
第四章:ジプシー編 ― 星を渡る者たち ―

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4-7.二つの故郷

復興祭の灯りが夜の街を彩っていた。


城のバルコニーから見下ろせば、まるで地上に星が降りたようだ。


笑い声。楽器の音。乾杯の声。


戦いの傷跡を忘れさせるほどの賑わいだった。


パパタローは手すりに寄りかかり、街を眺めていた。


「見つけました」


「ん?」


後ろから声がする。


振り返ると静が立っていた。


片手には酒瓶と、もう片方にはグラスが二つ。


「お酒もらってきちゃいましたー」


「その言い方だと盗んできたみたいだな」


「失礼ですね」


「違うのか?」


「たぶん大丈夫です」


「たぶんって何だ」


静は笑いながら隣へ並んだ。


グラスに酒を注ぐ。


小さく乾杯して、一口。


夜風が心地よかった。


「銀髪幼女は酒飲んでいいのか?」


「硬いなぁ」


「まぁ、このネタも飽きたな」


「あはは。そうだねぇ。」


静はグラスを揺らしながら笑った。


「でも、お酒おいしくないのよねぇー。舌が子供化したからかなぁ?」


「それって、飲んじゃダメなんじゃね?」


「えー。」


「えー、じゃない。」


「昔はもっと美味しかったんだけどなぁ。」


「本当に中身そのままなんだな。」


「失礼な。ちゃんと大人です。」


「見た目が説得力ゼロなんだよ。」


「ひどい。見た目変えたのパパタローじゃん!」


そう言いながらも、静はどこか楽しそうだった。


一方その頃、少し離れた柱の陰に

カリンがじっと様子を窺っていた。


(あやしい)

(変なことしたら、ルミエルちゃんとエリスちゃんに言ってやる)


そっと耳を澄ませる。


「なあ」


「はい?」


「もし帰れるって言われたらどうする?」


静は少しだけ首を傾げた。


「急ですね」


「なんとなく聞いてみた」


「そうですねぇ……」


静は祭りの灯りを見つめる。


「以前なら帰りたいって言ってたかなぁ」


「以前?今は?」


「分かりません」


(帰る?)


カリンは首を傾げた。


パパタローもグラスを揺らす。


「俺も分からんな」


「意外だなぁー」


「そうか?」


「なんだかんだで、帰りたい派かと思ってました。」


「最初はな」


パパタローは苦笑する。


「でも知り合い増えたし」


「ですね」


「仲間もいる」


「いますね」


「面倒なのも増えた」


「私ですか?」


二人が笑う。


「向こうの方が安全だったけどな」


「こっちは危険だらけです」


「生きてる実感はあるけどなぁ、毎月死にかけると、流石にぁ」


「ははは…」


「でも」


パパタローは街を見下ろした。


灯りが広がる。


人々の笑い声が届く。


「元の世界より幸せそうな自分もいるんだよな」


静は少し驚いたような顔をした。


そして静かに笑う。


「それは分かります」


(幸せの話だった)




不思議と居心地の悪い沈黙ではない。


祭りの音だけが遠くから聞こえてくる。


やがてパパタローが呟いた。


「故郷って何だろうな」


「パパタロー、さらに語るねぇ~。」


「酒飲んでるからな」


「便利な言い訳だなぁ」


静は笑い、街を見た。


「普通なら生まれた場所ですよね」


「それだけかな」


「違う気もするなぁ」


「だよな」




「帰れる場所……ですかね」


「帰れなくなってもか?」


「だからこそ、かもしれません」




「それなら…」


グラスを傾ける。


「人は死ぬ間際に見るんじゃないかな」


「何をです?」


「一番帰りたかった場所を」




カリンは空を見上げた。


(うん)

(全然あやしくない)


パパタローは昔話。


静も昔話。


二人とも懐かしそうに話しているだけだった。


(心配して損した。寝よ。)


最後に一度だけ振り返った。


バルコニーではまだ二人が酒を飲みながら話していた。


カリンは何も言わず、その場を後にした。



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