口は禍の元。
おまたせしました!
※マーシュリザード→沼蜥蜴表記に変更しました。漢字表記があったほうがぱっとみてわかりやすいかな? と思いまして。
慌てたミッチェさんがギルドに飛び込んできて救助要請!
リセッテの露店の手伝いを終え宿に戻り着替えた後、ギルドでシオン達と合流して夕飯前の雑談タイムに洒落こんでいると、突然ギルドの扉が大きな音をして開かれた。
何事かとそちらをみれば、軽装備から覗く素肌の二の腕や顔のあちこちに切り傷をつけて立っていたのは、ボブカットの青い髪を汗で額や頬に張り付けて肩で息をするミッチェさんだった。
「どっかのアホが沼蜥蜴の卵に手を出して怒らせて、うちのパーティーが巻き添え食って群れに追い詰められて立往生してるんだ! 誰か手を貸して!!」
まさかの緊急事態にオレは「急がないと!」と思って腰を浮かそうとするが、ふと周りを見れば他の冒険者たちが苦々しい表情で顔を見合わせている。
こういう時ってみんなが一致団結して「助けに行くぜ!」的な展開になるのでは? と思っていたところにリセッテから小声で囁かれた。
「沼蜥蜴は単体ではそれほど強くないんですがぁ、群れになるとやたら数が増えてちょっと手に負えないんですぅ。
しかも夜行性でぇ、今から夜になるこの時間帯に相手をするのは非常にリスクがありましてぇ、二の足を踏んでいるんだと思いますよぉ?」
聞くところによるとマーシュリザードは沼地に住むでっかい蜥蜴で、目だった爪や牙はないもののなんと魔法を使うらしい。
拳大の水の固まりを飛ばして獲物にぶつけ、弱って動けなくなったところに尖った歯で噛みつきノコギリのように削りながら食べるのだとか。
そんなリセッテの説明を聞いて、思わず痛怖い想像が脳裏をよぎり背中に悪寒が走る。
しかしまあ、うん、そうかあ。確かに夜行性の魔物を視界が限定される夜に相手するのってリスクがあるし、そもそも軽い気持ちで自身やパーティーを分かっている危険に晒すのは現実的じゃないかもしれない。
それを考えると腰が重たくなる冒険者の気持ちも分かる……のだけど、オレの心に浮かんだ「このままスヴェトラーナさんが帰ってこなかったら、カレナちゃんが悲しむ」という気持ちが他の全てを消し飛ばした。
「ごめん、皆。オレ、ちょっと助けに行ってくる」
逆の立場だが自分も修学旅行の事故で死んでしまい親を悲しませたことを考えると、カレナちゃんにそんな思いをさせたくない。
もちろんパーティーであるシオンやミレニア、リセッテにクーちゃんを個人的な気持ちで危険な目に合わせるのは遠慮したいので、オレ一人で行けば大丈夫だろう。
日頃なんだかんだ鍛えているし、氷魔法もあるから遠距離から攻撃して注意を引くくらいはできるはずぅぅぅっ!?
「にょわぁっ!? シオン!?」
立ち上がってミッチェさんに声をかけようとしたら、なぜか急にシオンがオレのお尻を鷲掴みにして変な声が出てしまった。
みればシオンがむっとした顔でオレをみている。
「勝手に私を、置いてかないで。ミナトが行くなら、どこでもついてく」
ありがとうシオン。でも鷲掴みにしていた手でさりげなくお尻を揉むのはやめて。
「ほうれす。ふれほらーははんひはほへはにはひはひははらへ!」
ミレニア、笑顔で頷いてくれるのはいいんだけど、口いっぱいにおつまみを頬張ってハムスターみたいな顔で話されると、オレの表情筋と腹筋が試されちゃうからやめてね。
「私はぁ、皆さんに助けれた命ですからねぇ。もちろんお供しますよぉ」
「ウォフウォン<カレナちゃんはたまにおやつくれるしな>」
リセッテの言葉は感動的だがクーちゃん、お前はそれ餌付けされてるだけでは?
ともあれ皆が付いてきてくれるのは正直心強い。
「おいおい、この時期の蜥蜴の卵狙うなんてアホのすることだろ。ミナトちゃん、そんなあぶねえマネしねえで一緒に飲もうや!」
「そうだぜぇ? あの沼蜥蜴、足はそんなに速くねえんだ。よほどの間抜けじゃねえ限り逃げ切れるって」
「そんなことより、四人ともこっちきて一緒に楽しもうぜ。なんなら夜も楽しませてやってもいいぜ、なんてな!」
……は? そんなこと?
さっそくミッチェさんに話を聞こうと全員が立ち上がったところで、近くにいた冒険者三人組がジョッキを傾けながら赤らめた顔でデリカシー皆無なことを言ってきた。
なんだこいつら。酔っぱらってるとはいっても言っていいことと悪いことがあるだろうが。
しかも言うに事欠いて四人を楽しませるとかセクハラ発言? 訴えてやろうかこいつら。
なんて思っていたら頭に血が上っていたのか、気づけば三人組の席の前にいてテーブルに置いた片手から冷気が溢れていた。もう知らん、どうにでもなれ。
「お? なんだぁ? ミナトちゃんもその気になった―――」
「あはは、助けにも行けない人が余計な事言わないでくれねーかな? しかも四人を楽しませるとかぁ…………次にふざけたこと抜かしたら、ソレごと頭を凍らせてやるからな?」
「「「ひいっ!」」」
わかるように冒険者三人組の股間を笑顔で睨みつけ、冷気を強くしてテーブルに置かれたジョッキごとうっすらと凍り付かせてやると、意図が通じたのか三人共青い顔しながら股間を両手で隠しながらぶんぶんと首を縦に振る。
「ミナト、そんなの相手にしないで、行こう。時間がない」
「ですね。そんなのよりスヴェトラーナさん達の方が大事です」
「大丈夫ですよぉミナトさん。誰もそんなのを相手にしませんからぁ」
「え、あ、うん、ごめんなさい!?」
「ウォ、ウォフ・・・・・・<こ、こえ~……>」
肩に置かれた手に後ろを振り向けば、シオンを筆頭にミニレアやリセッテの微笑ながらも静かな怒りを湛えた声色に思わず反射的に謝ってしまった。
クーちゃんなんかリセッテに抱かれたまま怯えて尻尾を丸めてるし。まあ、気持ちは分かる。
しかも女の子三人からのそんなの呼ばわりは効いたのか、冒険者三人組が頭を垂れて俯かせた。
が、それだけでは終わらなかったようで。
「次、ミナトにバカなこと言ったら、刻むから」
去り際にシオンがカキンと双剣の鯉口を二度鳴らし、
「ふふ、じゃあ私が治してあげないとですね。何度でも」
「あんまり失礼な人はぁ、上の口も下の口もぉ、針と糸で縫い付けちゃいますよぉ?」
ミレニアとリセッテのコンボに冒険者三人組だけでなく、他の冒険者達もなぜか股間を隠して顔を俯かせていた。
……絶対、セクハラ発言には気を付けよう。と心に誓い、内心震えながらミッチェさんの元に向かうのだった。
ミナト「冷凍ウインナーにしてやろうか」
口は禍の元って本当ですよね。
学生の頃、放課後の教室で男数人で話しててふと「女の子のどの部分が好き?」という話題になり、お互いに胸派、脚派、腰派なんて盛り上がっていたんですが。
急に教室の扉が開いて入ってきた数人の女子グループから凍てつく視線を向けられ、その女子グループが教室から出ていく去り際に、
「最低」「変態」「ロリコン」「バーカ」と次々と言葉のミサイルが飛んできたのを覚えています⊂⌒~⊃。Д。)⊃




