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救出へ!

ミッチェさんからスヴェトラーナさん達の救助要請を受け、いらんことを口走った冒険者達をミナトが黙らせ、みんなで助けに行く!


 

 日が傾き始めてから間もないとはいえど、湿地帯の森の中は背の高い木々の葉が太陽の光を遮り一段と薄暗い様を見せている。


 湿り気のある地面を踏みしめ脇から突き出ている枝葉を気にも留めず、先頭を小走りに駆けるミッチェさんの後ろをオレ達天照のパーティーで追っていく。


 シオンを先頭にオレ、ミレニア、リセッテとクーちゃんが続き、もちろんオレやシオンは『探索』や『気配察知』等を全開にして、進行方向に魔物がいればミッチェさんに伝えて道を変えてもらっている。


 魔物をよけることで少し遠回りになるかもしれないが、戦いで時間を消費するよりも効率的な筈だ。


「ほんとにありがと。あんた達が来てくれて助かった。リーダーからも『出来ればミナト達を』って言われてたんだ―――」


 目的地へと向かいながら話してくれたミッチェさんによれば、どうやらオレ達のパーティーはスヴェトラーナさんからかなり評価されてるらしい。


 シオンの剣術、オレの氷魔法、ミレニアの光魔法、リセッテの弓の腕前にクーちゃんの魔物としての強さ、それらを総合的に見てエルクの町でも上位の実力だと思われているようだ。


 頼られて悪い気はしないし、むしろそんなこと言われたら俄然やる気が出てくるというもんである。


「ミッチェさん、ちなみにスヴェトラーナさん達の状況ってどんな感じなの?」

「うん、簡単に言えば大きな木の上にバカ含めたリーダー達が避難してるんだけど、そこに沼蜥蜴(マーシュリザード)が群がってる感じだね」


 作戦の立案にと聞いた状況はかなり切羽詰まっている様子だ。


 避難と聞こえはいいが、実際は追い詰められとみるべきだろう。


 しかしまあ、その状況を打破する作戦はいくつか思い浮かんだ。よかった! 戦術的なラノベとか読んどいて!!


「ウォンウォン<なんかすごい数がこの先に集まってるぞ>」

「うん、スヴェトラーナさん達の、気配もする」

「……うわぁ、ほんとすごい数だ」


 先に気配を捉えたクーちゃんの言う通り、少ししてシオンもオレも前方の離れた場所に群がるような気配を感知した。


 ミッチェさんの言う通り、一つの場所に五十以上の気配が囲むように展開している。


「こっから気配感じるとか……ほんとすごいね、ミナトのパーティーは」

「いえ、言っときますけど私とリセッテさんは無理ですからね?」

「ですねぇ。私も初めてお二人の索敵範囲を知ったときにはぁ、ちょっと引きましたよぉ?」


 引いたんかっ!?


 いやちょっと、ミレニアもリセッテも自分達は普通でオレ達が規格外みたいに言わないで欲しいんだけど!? 


 まあでも、よく考えたら邪神から貰ったスキルなんだからそうとも言えなくもないかなぁ……?


 微妙な悩みを抱えそうになったところでミッチェさんが止まれの合図に片手を上げ、速度を緩めたのでオレ達も小走りから静かに歩きへと変えていく。


 それからしばらくして、ミッチェさんが茂みに隠れるように移動し手招きしたのでそこへ皆で集まる。


「少し遠いけど、ここから見える。静かに覗いてみて」

「「うわぁ……」」


 茂みの影から顔を覗かせて見えた光景に、オレとミレニアの声がハモった。


 五十メートル程先にある大きな木の周りを円を描くように、殺到してる沼蜥蜴(マーシュリザード)の群れが頭上を見上げて威嚇音を響かせている。


 その上を見ればスヴェトラーナさん、モロック、軽装の見知らぬ男の冒険者が二人と、明らかに装備が貧相で新人っぽい少年冒険者二人が太い枝や幹にはりついていた。


 沼蜥蜴(マーシュリザード)は木に登れないようだが、数匹が拳大の魔法の水弾を撃ち込んでは落そうとしているが命中率は悪いようで、外れたり避けられたりで大事には至っていない。


 だけど油断も楽観視もできない状況であるし、早くあの群れをどうにかしないと危ないのは確かだ。


 一度皆が茂みの中に戻ったところでオレは考えていた作戦を話す。


「一応作戦考えたんだけど、オレとシオンとクーちゃんが左右から挟撃して、リセッテとミッチェさんは木にまとわりついている沼蜥蜴(マーシュリザード)を射落として、ミレニアは回復役兼サポートってことでどうかな?」


 群がる沼蜥蜴(マーシュリザード)を減らしつつ木の周辺の安全を確保。後は降りてきたスヴェトラーナさん達に参戦してもらえれば、掃討はできるという予想なんだけど。


 って、あれ? なんでそんなみんなでポカンとした表情なの? もしかしてオレの作戦まずかった……!?


「ミナト、かっこいい……」

「まるで歴戦のパーティーのリーダーみたいです!」

「さすがミナトさんですねぇ」

「ほんと、最近できたパーティーとは思えないわね」

「ウォフ<顔真っ赤で草>」


 なんて思ってたらまさかの絶賛の嵐で、思わず顔が熱くなってしまう。あとクーちゃんは後で覚えとけよ……。


 悠長にしてる時間はないので手短に詳細を伝え、木々や茂みを隠れ蓑にオレとシオンが左に、クーちゃんが右へと回り込んでいく。


 沼蜥蜴(マーシュリザード)に魔法が届くギリギリの距離にある木の陰にシオンと共に隠れ、早速魔法の準備を始める。


 まずはオレとクーちゃんの魔法で出来る限り数を減らす!


「『凍結球(フリーズスフィア)』!」

「ウォーン!『地雷走(ボルトラン)』!」


 オレが放ったバレーボール大の白い霧の球が群れの先頭に着弾して周辺の数匹をまとめて凍てつかせ、向こう側でクーちゃんによる地面を走る幾本もの雷が直撃した数匹を麻痺させていく。


 オレもクーちゃんも打ち合わせ通り、魔力をコントロールして威力よりも範囲重視にした魔法はうまくいった。


 普段よりも多く被害が出たことにより周辺の沼蜥蜴(マーシュリザード)のヘイトがこちらへ向き、何匹かが怒りの鳴き声を上げて身体をくねらせながら向かってくる。


「行ってくる」


 魔法を準備していたオレが頷くとシオンが双剣を抜いて茂みから駆け出し、向かって来た沼蜥蜴(マーシュリザード)と一瞬で距離を詰めると、下から掬い上げるような剣戟で円を描くように動いてその首や胴を薙いでいく。


 わあ、なんかアクション映画のワンシーンみてるみたいんだんだけど……。

 

 恐らく『身体強化』を使っていると思われるシオンがアクロバットな動きをしては次々と斬りつけていき、それを追いかけるように数匹の沼蜥蜴(マーシュリザード)達が続いていく。


 反対側では身体をバチバチ放電させたクーちゃんが体当たりしたり、爪で斬り裂いてダメージを与えつつ木の周りから沼蜥蜴(マーシュリザード)達を上手く引きはがしていくのが見えた。


「『氷針《アイスニードル》』!」


 オレの方も沼蜥蜴(マーシュリザード)から一定の距離を保ちつつ散発的に撃ち込む『氷針(アイスニードル)』が効果的なようで、見てわかるくらい格段にその動きを鈍らせていく。


 やっぱり蜥蜴は寒いのが苦手だよね。


 ふとスヴェトラーナさん達が避難している木をみれば、ミッチェさんとリセッテが放つ矢が順調にその数を減らしているようで、木に纏わりついている沼蜥蜴(マーシュリザード)も十匹程度になっていた。


「ミナト達! 助かったよ!! ここからはあたしらも反撃といくからね!」

「助かっただよ! オラもやってやるだ!!」


 そして木の周辺にいる沼蜥蜴(マーシュリザード)が五匹を下回った瞬間、飛び降りたスヴェトラーナさんが逆手に持った片手剣で沼蜥蜴(マーシュリザード)の頭を突き刺し、続いて飛び降りたモロックが足元にいた他の一匹を持っていた槍で貫く。


 次々と倒していく二人の活躍により沼蜥蜴(マーシュリザード)がいなくなったことで、ミッチェさんとリセッテ、ミレニアがそこへ合流するのが見えた。


「ミナトさん! シオンさん! クーちゃんさん! こちらは安全を確保できました! やっちゃって下さい!!」


 ミレニアの声をきっかけに事前に決めていた作戦通りに今度は引き離すことではなく、殲滅することに切り換える。


 オレから少し離れた場所ではシオンもヘイトを引き付けるのをやめて、積極的に双剣を振るって……なんか人間離れした速さで次々と沼蜥蜴(マーシュリザード)の首や胴体が真っ二つになってるぅ。


「ウォウォオオオオオンッ!<『雷撃波(ライトニング)』>!」


 かと思えば、クーちゃんの咆哮が響くと同時に雷が落ちるような音と閃光が閃いて、巻き込まれた沼蜥蜴(マーシュリザード)がまとめて黒焦げにしていく。


 スヴェトラーナさんとモロックもタッグを組んで動き、群れからはぐれた個体を確実に仕留めていっていっているようだ。


 ミッチェさんとリセッテは矢を番えつつ、木から降りてきてミレニアに光魔法で治療してもらっている他冒険者達の護衛にまわっている。


 じゃあ、オレもここで一丁はりきってみますか!


 散発的に撃っていた『氷針(アイスニードル)』をやめ、別の魔法の準備をする。


 迫ってくる沼蜥蜴(マーシュリザード)がちょっと、いやけっこう怖いけどぎりぎりまで引き付け、惜しみなく魔力を込めた魔法を放つ!


「凍結蔦花(フロストアイヴァー)!」


 地面につけた手から扇状に白い冷気が壁を這う蔦のように走り、それに触れた沼蜥蜴(マーシュリザード)達が次々と足元から急速冷凍されていき、全身を覆っていく霜がその動きと命を蝕んでいく。


 好きなラノベの美少女天才魔導士が使う魔法をイメージして作った魔法だったけど、うまくいったようで凍結された沼蜥蜴(マーシュリザード)達に慎重に近づいて様子をみてみると、呼吸も止まっていてその目から光が消えていた。


「ふぅ……これで全部倒せた、かな?」


 周囲を見れば動いている沼蜥蜴(マーシュリザード)は一匹もおらず、まさに死屍累々と言った様子であちこちにその亡骸を横たえている。


 一息ついて上を見上げれば空が黄昏色から夜の黒へとグラデーションになっていて、けっこうな時間が経っていたらしい。


「みなさーん! 一旦集まりましょう! 怪我をしてたら治しますよー!!」


 ミレニアの言葉に皆が集まっていく。


 途中でこっちに双剣を収めて歩み寄ってきたシオンの姿を見て、思わず目を見開いてちょっと気が焦る。


 離れている時は薄暗かったせいで分からなかったが、側で見るとシオンの顔や腕に血しぶきというか血痕が付着していたから。


「シ、シオン!? 血がついてるけど怪我してない? 大丈夫?」

「ん、問題ない。全部、魔物の血。ちょっと加減間違えて、派手に斬り飛ばしちゃったから」

「そっか、それならまあ、いいんだけど。ミレニアに綺麗にしてもらおっか」


 ミレニアの光魔法の『浄化(ピュリフィケイト)』は、漂白剤も真っ青なほど服や身体の汚れがとれる便利魔法。


 ていうか、シオンはなんでさっきから後ろを三歩くらい離れて歩いているんだろうか。


 いつもなら肩が触れるくらい側に来るのに。 


 ……いやまあ、側に来て欲しいっていうわけじゃなくて、その、ほら、いつもと違う態度だと気になるじゃん?


「シオン? そんな離れてどうしたの?」

「……今、血の臭い、すごいから」

「そんなの別に気にしないって。ほら、一緒に行こう?」

「……うん!」


 オレが手を伸ばすと、なぜかその手とオレの顔を二度見したシオンが嬉しそうな顔をして一足飛びに腕に飛びついて来た!?


「ちょ、ちょっとシオン。危ないって、もう……」

「ごめん。えへへ……」


 なんでかわからないけど、シオンがご機嫌ならまあいいか。


 ぎゅっと腕を絡めて身体を預けるように歩くシオンにバランスを取られつつ、ミレニアたちの元へと集まるのだった。


『ご機嫌なシオン』

挿絵(By みてみん)


中学生の頃、気になってた女の子から「作者君って小説読んでる時多いよね。何読んでるの?」と聞かれ、


「アニメもなってる天才美少女魔導士が活躍するラノベです」なんて言える筈もなく、「えーっと西洋の魔法使いが活躍する物語……?」と、内心冷や汗かきつつ、嘘でもない本当でもない答えを返したことがあります。


今となっちゃ「はーん? それが何か?」と別に恥ずかしくもなんともないですが、当時は「中学生男子が美少女系ラノベを読んでるのが恥ずかしいかも!?」という思春期な気持ちでした。


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天才美少女魔導士<ドラゴンも跨いで通るあの方だろうか 氷魔法ホント便利だなぁ 冷害効果で雑草処理に良さそうな氷魔法まで!
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