隣国の動き
特に何もすることは無いまま二日が経過した。
使い魔の仕事の割り振りを調整したり連動させたりはしたが、それ程手間もかからない作業だ。
私自身でやる仕事は殆ど無い、ミラの睡眠の実験の調整に協力はしたがそれも寝るだけで済む。
ヤビィ達もゼブルが殆ど対応してくれている。
つまりは……
「久しぶりに敷地の外に出た気がするな。」
「そうですね先輩。」
アリスと……一応代表としてヤビィが付いて来ている。
仕事の話もあるが、聞かると不味い話もあるのでヤビィだけだ。
私とアリスの少し離れ気味に後ろを付いて来ている。
まぁ仲睦まじげに見える男女と一緒に歩くのは辛いだろう、それも仲睦まじげに見える様に振舞っているのに微妙な距離を感じるなら尚更。
私はヤビィの感情や感覚をある程度理解できる様に、ヤビィもまた私の感情も感覚もある程度理解できるから、この精神的に開いている微妙な距離が判ってしまう様だ。
あまりに気にしない様に感覚だけで伝えておく。
時間が出来たら今の能力で出来る実験をしようと思っていたが、流石に敷地内で危険な物は使えない。
そして今の能力で実験したい物には機密も絡んでくる、家で出来るものではない。
出来たのは最近の研究結果の論文を読み漁る程度、それも本当ならもっと早く読めるのをゆっくり読むという、まさに暇つぶしというのが丁度良い時間の過ごし方だった。
ヤビィ達に手を出そうという動きも無かったのでそちらを警戒する必要も無かった。
ゼブル達の負担軽減にと思ったが、これなら家を離れていても別に良かったと思うのは結果論か。
ゆっくり歩いて丁度昼食前の時間帯に何時もの喫茶店へ入る。
約束の時間には少し早いが此方は呼び出している身だ、多少待つ位でいいし向こうの都合で時間が前後する事もあるだろう。
「で、ルーグは何をしている……」
「あ、どうもジェラルド卿、マスターなら今裏で料理してますよ、なんでも今日食事をしに来る上層部の人がいるって話で調理スタッフと一緒にあたふたしてます。」
仕切り台の向こうでルーグの代わりに対応しているのは、確かルーグが休みだったり忙しい時の交代要員だったか。
ルーグと違って彼は純粋に蜥蜴人だった筈だ。
当然彼が珈琲を入れる時は私もアリスも決して飲まない。
ルーグは半分は凡人なのでまだ飲めない事もない、彼のは毒ではないが……とまず考えてしまう程だ。
「此方も昼食は頼もうかと思ったが厳しそうだな、一応食べれる物を用意しておいて正解だったか。」
「お二人ならまぁ食べられる物を用意できない事も無いですが……初見さんにはちょっと出せないですね……」
「さっさと汎用調理免許を取れ、此処の客層的に問題は無いだろうが例外は何時でも起こりえる物だぞ。」
「あはは、いや時間無くてなかなかね?」
此処は喫茶店に偽装した諜報部の施設の一つで、その本来の用途は諜報員同士の情報交換で味は求められていないのだろうが、此処が諜報部の施設だと知らない層からの情報収集の場でもあるのだからもう少ししっかりしろと言わざる負えない。
「まったくです、碌に食事にも出れない我々が使える数少ない店なのですから、もう少し改善してもらいたい。」
後ろというか、入口から声が掛けられる。
約束の日、偉い人、昼食の三単語で予想はついていたししっかり気配も捉えていたので驚きはしない。
「いや、あはは……それはもう少し人員が欲しいですね……あはは……」
やはり早めに来て正解だったな。
約束のオルフェリアス政治統括官が到着した様だ。
「忙しいところ呼び出して悪いな、オリー。」
勿論此処では肩書等は判らない様に振舞うのが礼儀なので気安く呼ぶ。
「いえいえ、此方も外に出る良い口実になるのでたまに呼び出されるくらいがいいんですよ。」
「オリー達は……ここ数日の私が言う事でも無い気がするがもう少し外に出て仕事が出来る様にするべきだな。」
「いやはやまったく、もっと開放感のある仕事がしたいですな。」
「それも難しいだろうがな、とりあえず仕事の話は食事をしてからにしようか。」
「えぇ、最近はエナが多めに仕事をしてくれる分、ゆっくりできますから。」
「あはは、いや……奥へどうぞ、食事は直ぐ持っていきますので……あはは……」
この蜥蜴を代理にするにはまだまだ場数が足りないぞルーグ。
何処が大丈夫なのか、今週ゆっくり目にとか思ってたらもう土曜な件。
暫くペース乱れると思います、あと今回も短めで申し訳ない。




