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邪神の眷属になったようだが私は何をすれば良い  作者: 屯田観烏之羽(ミタミ・アノウ)
学校編
76/82

新生活の幕前

 昼食を手早く済ませて部屋に戻る。

アリスは……手紙と情報紙を投げ出して悩んでいる様だ。


「おかえりなさい先輩、随分時間かかりましたね?」

「手続きが面倒なのは変わらん、三度も繰り返せばどうしても時間がかかる。

……それで?随分と不穏な動きが見えるが何事だ?」


 一瞬だけアリスが硬直する様な反応をしてから此方に身体を向ける。


「……もしかしなくても、先輩に何か迷惑を掛けに来た人が?」

「よく会う奴だな、いつもより少し圧が強いかと言った程度で()したる問題ではないが……

それを確認するという事は何か有ったな?」

「えぇ、まぁ……はい。」

「聞いた方が良いか?或いは何かした方が良いか?」

「……」


 考えている途中だったのだからまだ答えは出てないのだろう。

何とも言い難いのか、目を閉じて唸っている。


「そうだな、何にせよヴィクターには報告をした方が良い……いやヴィクターが過労で倒れるか。

そうだな……いささか命令系統から逸脱するがエヌマ統括官に報告しておくべきか。

アリスも代行者でこの国に所属している軍人なのだから、アリスに話が回されている以上少なくとも此方の軍部の責任者に話が行くのは許容範囲だろう。」

「……そうですね、この国も無関係ではありませんしトップに内々になら問題にはならないでしょう。

先輩。」

「そうだな、ヤビィ達が戻ってくる前にさっさと手続きを済ませに行くか。」


 当然だが軍事統括官、すなわち軍務大臣に会いたいと言って会える様な立場ではない。

だが代行者は好き放題やらかす反面、各国の権力者や各種族の長や実力者と縁を持っている事も多い関係で、所定の手続きを取れば会えない訳では無い。

連名で緊急と言えば多少無理を通して会う事も可能だろう。

尤も、今はかなり忙しいと推測されるのでその無理も通らない……というよりそもそも忙しくしたのは此方なので少々心苦しい所だが。


「あ、いえ、エヌマ統括官ではなくオルフェリアス統括官で。」

「……そっちでいいのか。」

「はい、私に来ている情報的にそちらの方が良いかと。」


 オルフェリアス政治統括官、つまり政務大臣だ。

エヌマ軍事統括官よりもっと会えないのだが、アリスの伝手を考えれば無理でもないか。

秘書辺りが来る気もするが、どの道先ず手続きをしないとだな。


 統括官に会う約束を取り付けるならまずはルーグに会いに行く必要がある。

ルーグは喫茶店にいる、というかあの喫茶店そもそも諜報部の拠点で、この手の話をするのに役所からより余程話は速く、かつ確実に届けられる特別な窓口の一つだ。

どうしても通常窓口経由では時間がかかるというより、途中で検閲だったり調査だったりが挟む関係で遅くなるので代行者が良く利用している。


 アリスと共に気持ち早めの足取りで喫茶店に向かう。

昼食とこの移動とでそこそこ時間が経っているが流石にまだ使い魔はハルモニクススの首都には着いていない、がもうそろそろ着けそうだな。

ルーグとの話の種にも使えるので急がせよう、情報収集用に町に住む野良猫に偽装した使い魔を降ろす必要があるので直ぐには大した情報は出せないだろうが。

それでも現在の首都の状況を確認できるだけでもまるで違うからな。


「おや、二人だけかい?」


 喫茶店に入るなりこれだ。


「客が二人である事に落胆するとは、客が二人も着た事に喜ぶべきではないのか?」

「これは手厳しい、でも二人とも何も頼んでくれない事の方が多いじゃないか。」


 確かにそれは此方が悪い……いや、客の舌に合わないと分かっている物を提供しているのが悪い。

凡人種が普通に飲める物を用意してから言え。


「はぁ、珈琲を頼む……後オリーに連絡を取りたい。」


 ここは諜報部の拠点ではあるが喫茶店であり、時には軍部に関係のない客がいる事もあるので固有名は変えて伝えるのが通常だ。

そして呼ばれるのは統括官、オリーならオルフェリアス、エナならエヌマと判り易い範囲で簡略化して伝える。

もっと暗号化した方が良いとも言われるが、統括官は十年か二十年で変わる。

暗号をそれに従って変えるのも面倒なので愛称的に呼べばいいのでは、となってから定着して今の形になっている。


「オリー?エナじゃなくて?まぁ、確かにエナは今忙しいからオリーの方が早いと思うけど。」

「えぇ、オリーさんにお願いします。」

「あーエリー絡みか、確かに最近ちょっとピリピリしてるしね、何か情報でもきた?」

「えぇ、まぁ。」


 おっと、使い魔が首都に着いたみたいだ。

流石に空路が安定している所は早い、せっかくなので空からの俯瞰(ふかん)映像を二人にも見える様に可視化しよう。

光映像を人間の視界の水準で結実させるのは本来は難しいのだが。

この国の役所等で使用している機械の操作用の画面を作るのにかなり色々な手法が研究された結果、記憶力に依存はするが高精度で再現できる術式は考案されているのでそれを使えば良い。


「ふむ、空から見る限りでは大きな問題は見えないな。

ん?二人ともどうした?」


 二人とも信じられない物を見た様な顔をしているが。


「これリアルタイム?やっぱり諜報部に来ない?」

「その件は、まぁ協力はしようという話を上にはしておいた。

それとこっちにも私の使い魔を置いておこう、連絡用だが多少なり秘書として使えるのはヴィクターが確認済みだ。」


 今は客も居ないと足元の影から人型の使い魔を呼び出す。

あまり知られ過ぎると面倒だが、必要な所なら多少大胆に使っても良いだろう。

それと顎が外れたような顔で驚くルーグも見れたので不味い珈琲代位にはなったな。

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