接触
使い魔の記録上自己紹介もしていないな。
「ふむ、自己紹介がまだ……の様だな。」
「あ、そういえば。」
向こうも今思い出したのだろう、そもそも一対一での対話に置いて相手の名前等別に知らなくても問題ないからな。
他にも人が居るので全員いるところでするのが効率的だろうが、彼には個人的に自己紹介する程度の手間は割いてもいいだろう。
「ドゥウェインだ、ドゥウェインジェラルド、階級上は少尉になる。
とりあえずドゥと呼んでくれればいい。」
「クバノヤビトです、えっと……家名と名前は、名前の方が前で普通ですか?」
「ん……この大陸では名前が前の方が多いな。確か一部地域では家名が先に来る所もあるとは聞いたことがあるが、概ねその認識で間違いない。」
「なるほど、では名前家名で改めて、ヤビトクバノです。
呼ばれ方に特に決まりはないので言いやすい言い方でどうぞ。」
「ふむ……とりあえずはヤビィでいいか?」
「それで大丈夫です、皆には後で挨拶させるとして……とりあえずこの後の予定を聞いても?」
この後……はもう基地経由で戻るだけだな。
此処の指揮官に挨拶位はしておきたかったがまだ戻ってきていない様だし、残念ながら待っている時間もない。
応急処置をしてあるとはいえ所詮応急処置だ、状態を悪化させない様に停滞させる事は出来ても解決にはなってない。
「そうだな……昼まで休んで、昼食を摂り次第出発だな。」
「わかりました、皆にもそう伝えておきます。」
一礼して去っていく彼を見送る。
さて連絡という大事な仕事を済ませてしまおう、と言っても使い魔にこちらの状況を知らせたら後は任せるだろうが。
人型で高性能な使い魔を置いて来て正解……いや国境の基地には置いてきていないな
まぁ大佐に連絡を回してもらえば良いだろう、大した問題ではないな。
移動に一日は掛かる……いや、一度通った道を使うからもう少し早く着くか。
とはいえ行きと違い大型車両が二両だ、二十時間前後はかかるだろうから向こうも十分な準備が出来るだろう。
さて、基地に置いてきた使い魔に繋がったのを確認して連絡事項を伝達する。
最優先は国境の基地への到着予定時刻の連絡、それからベヘの医療設備とその人員に、呪術系の資料か専門家の手配。
後は連れていく人数にその対応用の人員と……それから衛生設備周りの用意に、健康診断の用意か。
生存者に彼等も合わせてそれなりの人数になるし宿泊施設も……時期的にこれもべへが丁度良いだろう。
他に連絡漏れ等が無いかは大佐に丸投げしてしまうか。
さて、私は食事は別に要らないが、この拠点に突然大量の食料を割かせてしまっているし多少でも補填しておくべきか。
既に補給要請はしているだろうが、備蓄の消費計算は大きく狂ったのは間違いないだろうし、要請した補給物資の到着までそれなりに掛かるだろう。
非常用に計上外の備蓄等はあるだろうが無いよりは良いだろうしな。
猪や鹿でも居れば良いのだが……近辺の使い魔の目を通してみても見当たらない。
よく考えれば不死者の集団が近辺に現れたのだ、周辺一帯から真面な生物は逃げ出しているのだろう。
元凶の屋敷の周辺に至ってはそもそも殆ど居なかったし仕方が無い、近辺に待機させている使い魔に遠出をさせ此処に食料を運ぶように指示を出しておく位しか出来る事は無いか。
序でにと他の使い魔の状況を確認したり追加指示を出したりしている間に朝食は済んだ様だし出発する用意もしておくか。
そういえばミラが貸していた依代毎混沌に引っ込んでいるな。
『ミラ?』
『あーごめん、彼……ヤビト君の覚醒状況的にまだ僕と直接会うのは毒にしかならないからお願いして良いかな?』
『そういう事か……まぁ問題は無いだろう、とはいえ常時面倒は見てられないぞ。』
『それくらいは大丈夫でしょ、彼は結構聡明そうだし。』
『了解。』
詳しい原理等は後で聞くとして帰投準備を進めるか。
とりあえず生存者達の乗る車両は使い魔に運転させて後ろから追従させればいい。
アリスは既に休ませてあるから夜迄は運転するだろうし、それまで使い魔の微調整ができるから車両の運転は問題無いだろう。
彼等は昨日の時点で車両に慣れている様な動きをしていたので問題なさそうだし、屋敷から連れてきた生存者の方も馬車に乗せられてきただろうから車両に乗る事自体は問題無かった。
馬車とは比べ物にならない速度なのでその点だけが不安だが、揺れの面では馬車より安定しているし其方も問題無いだろう。
車両そのものの動作にも問題は無いし、問題が起きても移動しながらでも修復できる様にしておけば十分だな。
車両の方はこれで良し、後は……あぁ生存者達にこの後の予定を伝えてないから伝えておかないとな。
あとはウィルにでも伝言を頼んでおけばいいだろう。
とりあえず生存者達から引率が出来そうな人物が居れば楽だが、昨日は碌に確認してなかったからな、これもウィルに聞いてみるか。
「ウィル、今時間はあるか?」
「ハッ!ご用件は?」
「我々は昼食後に出発する、生存者も連れていくが彼等の中で引率が出来そうな人物に心当たりはあるか?」
「それでしたら……あそこのあの赤い髪の女性が適任かと思います。」
「助かる、それから指揮官殿は昼までには戻れないか?」
「向こうも色々と立て込んでいる様ですので今日中には難しいかと。」
「では世話になったと伝えておいてくれ。」
「了解です。」
さて次は彼方か。




