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邪神の眷属になったようだが私は何をすれば良い  作者: 屯田観烏之羽(ミタミ・アノウ)
騎士覚醒編
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接触

 位置転換の都合上当然だが、車両の上空に飛び出す。

車内は狭すぎる為、位置転換時の微妙な揺らぎに車両の移動速度と危険な要素が多く、安全策として此方側の位置を車両上空にさせた訳だが、当然重力に引かれて落ちる。

それ自体は大した問題ではないのだが、車両に着地してしまうと車両が揺れるし大きな音が鳴るだろう。

回収した彼等はかなり疲れているようで何人かは眠っている様だし、そうでなくても既に真夜中なのだから朝まで眠らせてやるべきだろう。

なのでこのまま慣性と重力に任せて車両の着地するのは却下だ、霧に……いや一々身体を粒子状分解するのも面倒だし何より霧化しては高速で動けない、羽でも生やして滑空するか。

鳥のみならず、龍種や鳥人種等参考に出来そうな情報は色々あるし、風を捕まえて滑る位なら即席でも余裕で出来るだろう。


 とりあえず竜人の翼で良いだろう、羽毛より翼膜の方が風を受け止め易く扱い(コントロール)し易い。

そのまま車両の左側に付ける様に軸を滑らせ、次いで速度を合わせる。

流石にこのまま車両に入るのは難いだろうから着地しつつ翼を消して車両に並走する。

車両の最大速度を出されると置いて行かれるのだが、今は此方の全力疾走よりも遅い速度なのでそのまま扉を開けて助手席へ乗り込む。

扉の開閉の音は少々強引だが空気の塊を当てて消音した、多少揺れてしまいはしたが後ろで寝ている客が起きた気配はない。

この程度の揺れは慣れているのだろうかと思ったがそれを聞くのは後で良いだろう。


「お帰りなさい先輩、予定より遅めですけど何かありましたか?」

「ただいまアリス、首都の方で問題が起きてた様でな、次善策にもならんだろうが一応の手を打っていた。」


 後はあれが如何するか次第だが、最悪の事態にだけは成らない様に手を打って有るので心配はしていない。

良くも悪くも首都は壊滅するだろう、あれを倒せるだけの手段があの国にあるとも思えないしそこは変わらないだろう。

後はどれだけの人間が生き残れるかだろう、それ以後の細かい事は国の政治屋や軍略家にでも任せてしまえば良い、そこまで面倒見る義理は無い。

後ろの彼等が何かしら知っているかもしれないが、だから何かしようとするには遅すぎる、今更と言う物だろう。


 当初の目的だった彼等を回収したので、このまま国に帰投……と言う訳には行かない、今回の作戦行動中に保護した他の生存者は拠点に置いてきたので引き取りに行かなければならない。

予想外の事態が無くは無かったのだが、少なくともアリスに任せている範囲は順調かつ安全に進んでいるのだから連れてきても問題にはならなかったかもしれない、結果論でしかないのでそんな事は出来ないが。





 拠点には朝日が完全に地平線から離れる頃に着いた。

予定では夕方迄には戻って来れると伝えてあったのだが、予想していたよりも相手が弱過ぎた。

何処で手に入れたのか分からないが、世界に穴を空ける程の事をしたのだから危険極まりない何かが控えている可能性を考えていたのだが拍子抜けだ。

あるいは其れ等全てを抱えて上が逃げたか……此処で考えても仕方無いか。

取り敢えずアリスには昼まで休む様に伝えておこう、昼食が済むまではゆっくりしてから出発で良いだろう。


「あの……すいません、どこかで身体を洗いたいのですが。」


 話しかけてきたのは……ミラが保護を要請していた者だな。

成程、何となくと言う程度でしかないが繋がりを感じる。

見た目は十代後半の凡人、黒髪黒目はこの大陸では珍しいが何処だったかの島国では普通とか聞いた覚えがある。

背丈は大体五尺五寸(約165センチ)辺り、肉付きは普段から運動や筋力強化を行う類の人種ではなさそうだが、苦手としてる訳でもないだろう。

服は見た事のない材質、形状は本国以外ではまだ流通してない型に近いな。


「流石に此処に衛生設備は揃ってないな、川で行水程度で良いなら案内するが?」

「あ、いえ行水程度なら魔法使います、お国柄というかお湯に浸かれないとなかなか休んだ気になれなくて。」

「成程、本国に戻れば入浴設備が有るのでもう一日だけ我慢してくれ。」

「ありがとうございます、いやもうあの国本っ当に酷くて……」


 愚痴が始まりそうになったが直ぐに止まる。

そういえばまだ彼等に付けておいた使い魔から報告を受けてないな、取得情報が混じって面倒なので個々の使い魔からの情報は、此方が必要とした時か使い魔の判断で必要と判断された時以外は五感も思考領域も記憶領域も独立させてあるのでまだ彼とは初対面だ。

彼以外は全員補足できる位置にこそ居るが、呑気に寝ている使い魔に接続して情報を貰う。


 ……殆ど必要最低限の情報のやり取りしかしてないな。

目の前の彼が情報の扱いや周囲の人間の動きにかなり気を使っていた様だ、そういった訓練を受けた様には見えないがどうすればいいかだけは知っているからそれに従って警戒していた感じだろうか。


「……いや失礼、ようやくまともだろう文明人に会えたので少し気が緩みました。

まずはあなたに感謝を、あの国を早々に脱出する方法を考えてはいたのですが、碌な装備も情報も無く頭を抱えている所で貴方から情報を提供して貰えて助かりました。

その上迎えにまで来ていただいて、おかげさまで仲間も全員無事なままあの国から離れられました、ありがとうございます。」


 非常に礼儀正しい、教育がしっかりされている証拠だ、どう考えてもあの国の人間ではない証拠になるだろう。

ついでに何かしら未知の情報を持っていてくれれば国に連れて行った後の待遇も安泰だがその確認は後回しだな。


「私は友人に頼まれただけだからな、それに君の事を聞いて直ぐに来た訳でもないからそこまで畏まらなくていい。」

「例えそうであっても、助けてくださったことに変わりはありません。

とはいえ……こうして敬語で喋る機会は今まであまりなかったので畏まらなくていいと言っていただけるならそうさせていただきたい。」

「私になら敬語も不要だ、時と場合によっては(わきま)えてもらいたいが。」

「私……いえ、俺もTPO(時と場所と場合)位は考えて行動できると思うのでそれくらいは大丈夫です。」


 む、時と場合だけでなく場所も考慮するべき……と、国の教育科や外交部辺りも彼等の話を聞く意義を見出してくれそうだな。

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