接触
本来なら触媒や環境の整備に、長時間の儀式や多数の術者を掻き集めて行う様な大規模術式が僅か数秒で展開していく。
術式の浸透や連鎖反応等の問題を解決できれば一秒未満でも使用できそうだが、大規模術式を高速展開する必要に迫られる事態には早々ならないだろうから優先度は低めか。
展開された術陣の下から、不死骸骨達が地上へと這い出てくる。
不死骸骨の形状は元の生物に由来する、見た感じ人型や狼型が殆どだが鳥型も少数混じっている様だ。
完全な形状を保っていない物も多いし大きさも不均一だ、別にそれで困りはしないのが不死者と言う物だが今は調整していく。
大きさはニ段階に分ける、骨の体積を移譲させたり魔素で埋め合わせたり、個体を分解して他に付け加えたりしていく。
そして大きさを基準に兵科に当て嵌めそれぞれ部隊を作っていく。
指揮を執る際に個体差を考慮する必要を省く為の措置の一つだ。
少数精鋭で他部隊との連携を考慮しない等の理由が無い限り、部隊毎に兵科や装備等を揃えてしまった方が部隊内での装備交換が容易で指揮も執り易い。
取り敢えず出来た不死骸骨の軍団は人型狼型の大型がそれぞれ一部隊、中型でそれぞれ八部隊、鳥型の大型一羽に中型の部隊が一部隊、部隊の所属人数は形状に関わらず六十体で構成される小隊だ。
それぞれに魔素と土を練り合わせて肉付けを行い、死肉鬼に偽装していく。
不死骸骨と死肉鬼は対処法が多少違うのでその誤認を狙ってもいるが、その主目的は保護だ。
骨は硬いがそれだけに衝撃には弱い、肉を纏う事で衝撃を分散させる事が出来る。
本当は肉が無い方がより危険性を高める事が出来るのだが、この国の壊滅を今狙う訳ではないのでそこまでやる必要はない。
骨だけでなく、相手に必要以上の損害を与えない為の保護だ、制限とも言えるだろう。
肉付けを終えた個体から武装を与えていく。
鉄で装備を作るのは割に合わない、骨と石を加工したもので十分だろう。
人型に剣と鎧、狼型なら爪と牙が定石だろう、中遠距離戦装備を与えてしまうとこの国の戦力では処理そのものが出来なくなってしまうかもしれないので与えない。
「……ふむ、落ち着いて見るとなかなか凶悪な絵面をしているな。」
土の色をした人や狼が骨や石で出来た武器を装備している……骨装備は少々やり過ぎだろうか。
武具としてみれば攻撃や防御に耐久の面で非常に粗末な脆い装備でしかないのだが、見た目、特に骨が醸し出す雰囲気が耐性の無い人間からは平常心を奪えそうだ。
折角だから色を……いや、放っておいても勝手に付くだろうし色は付けなくても良いだろう。
一先ず鳥型以外の中型部隊を三部隊ずつ前線に当てる。
狼型は人型の騎獣としても丁度良かったので載せていく、前線に着いたら降ろして攪乱と遊撃だ。
敵戦力の把握もしたいので一旦様子見をする。
この六部隊で前線が崩壊している様だと残りの部隊は土塊に戻すしかないのだが、簡易だろうが防衛陣地まで組めている前線が早々に崩壊する様な事は無さそうだ。
と言うより最前線に展開している彼等がかなり奮戦している様だ、この国の人間と違って魔素が扱えている分、手を抜いても十分すぎる戦果が上げられているのだろう。
今の戦力で前線を崩壊させるのは可能だろうが、混乱状態に陥らせて目的の人物を離脱させるには足りないだろう。
とはいえ想定内だ、追加で新しく不死者を創造する。
こういう時はやはり大物が判り易く、そして都合が良い。
何と言っても大きいという事はそれだけ注意を集める、注意が集まるという事は其れだけ他から意識が離れるという事だ。
とは言っても一から作るのは時間も手間も掛かる、記憶の中にある生物を模すのが良いが……そうだな、以前会った竜種にしよう。
古龍種との交渉に向かう際に遭遇した個体で、龍種と違って知能が低い魔獣扱いの弱い個体だが、あれで丁度良いくらいだろう。
今使用している術式上、死竜になってしまうので危険度は下がるが、それでも今戦闘に出ている戦力だけでは止められないだろうし、場合によってはあの国で隠されている戦力がどの程度かを測る事もできるだろう。
実に都合が良さそうだ。
死竜を作り出すのは流石に他の不死骸骨と違って時間が掛かるがそれでも十数秒程度で完成した。
竜種が死竜になって危険度が下がる理由が肉質の軟化と鱗の欠損、内臓の機能不全に保有魔素濃度の低下だ、自然発生した場合はと注釈は付くが。
今作った個体に鱗の欠損は無い、とはいっても本物の竜種の死骸から産まれた其れと比べて強度が貧弱過ぎるが問題にはならない。
というより硬く作ってしまうと死竜が倒された後、素材として利用されてしまう可能性が残るので脆い位で丁度良い。
後はこの死竜を彼等に向けて突撃させつつ、残りの部隊で他の部隊を足止めをすれば回収するのに十分な余裕が出来るだろう。
両翼にニ部隊ずつ、大型は一部隊ずつしかないので右に人型左に狼型を派遣する。
鳥型の中型部隊は首都に直接攻撃に飛ばす、相手の背後というより本丸だが、其処を攻撃すれば前線は少なくとも瞬間的には孤立するだろう。
鳥の大型が一羽だけ余っているが、こいつは死竜での誘導に失敗した時、あるいは邪魔が入った時の為に待機させておく。
後は指揮に集中していれば良さそうだ、彼等の誘導は使い魔に任せておけるだろう。
此方は安全かつ確実に回収できる状況を離脱し終わる迄維持すれば良い。




