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邪神の眷属になったようだが私は何をすれば良い  作者: 屯田観烏之羽(ミタミ・アノウ)
騎士覚醒編
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話にならない相手と話をする理由は無い

 物理的に仕掛けられていた罠は、仕掛け人の高度な技術が垣間見える物だったが魔術的に張られている結界は素人丸出しと言わざる負えない程度の物だった。

とはいえその素人丸出しの結界に使用された基礎となる物が厄介過ぎる。

生半(なまなか)な術師が結界破りを行った場合には、反動で呪詛が一帯にばら撒かれる可能性もあっただろう。


 そもそも結界の構築自体が甘過ぎて既に其処彼処(そこかしこ)に呪詛が散らばっている。

その影響で動物の類がまるで居ない、この状況で魔素暴走を起こせば発生する魔獣は木獣(トレント)に成るだろうか。

首都に向かって雪崩(なだれ)込んで欲しい此方としてはあまり(よろ)しく無い。

環境の調整をするには時間が掛かり過ぎる、余り気は進まないが不死者(アンデット)系に成る様に調整するか。


 使い魔の中で一番早い個体が屋敷に辿り着いた。

時刻的には朝食が済んだ頃合いだろうか、朝駆けには少し遅いが問題は無い。


 展開されている結界全てを使い魔が掌握したのを確認する。

下手に破るよりも制御毎奪ってしまった方が簡単で確実とは酷い出来の結界だ、此方は楽だが文句の一つも付けたくなる。

そもそも結界の機能が探知に侵入者への幻覚程度しか無い上に、探知の設定が曖昧過ぎるし幻覚の強度も紙の様に無い。

探知結果の信号も術者に届くまでに十秒以上は掛かるのではないかという程に遅い。

拍子抜けな程に簡単に結界内部に侵入できてしまったし、先に侵入させた使い魔の半分は探知すらされていない。

探知された使い魔も、その信号を欠伸混じりに潰していた。


 だがまぁ、其れも仕方ない事だろうか。

そもそも純粋な人間、つまり凡人(ヒューマ)とすら定義されない古い人間の集まりがヒムニトリアだ。

余りにも古すぎて彼らには、魔獣や魔物やその他多数の人種に存在する魔臓に類する臓器がそもそも無い。

空気中に存在する魔素を体内に取り込む手段も扱う手段も無く、出来るのは空気中にある魔素をそのまま触媒に反応させる程度が精々だ、細かな調整や術式管理等が出来る筈も無い。

さらに言えば魔女狩りと称して、魔素を扱う事が出来る者達を国内から一掃した事もあった筈だ。

触媒の知識すらも、もしかしたら手探りかもしれない位に彼らの魔術に対する知識は遅れているだろう。


 大人が赤子の相手をする位の格差がと言うべきだろうか。

否、相手は赤子では無いが、此方は万全な状態なのに彼方は両手両足が縛られ目も口も塞がれている位の差がある。

赤子を相手にするよりも酷いと言うべきだろう、それで容赦する理由にも成らないが。


 使い魔に掌握している結界を全て無力化させる。

消去はしない、この使い物にならない結界も後で一つの素材として使える。


 屋敷の前に立てばその構造は全て見える。

光では見ていない、もっと別の物で見る。

其処に障害物など関係なく、壁の向こう側を透視する程度容易(たやす)い。


「屋敷は偽装だな、地下が本命か。

そうだな……アリスとウィルは此処で待機。

ウィルはもう観測機の準備に掛かって良いぞ、アリスはウィルの護衛だ。」

「了解です。」

「先輩一人で……て一人の方が確実ですよね。」

「そうなるな、護衛対象は後で増えるが使い魔を同伴させる。」

「了解。」


 アリスに言っておけば後は如何にでもするだろう。

乗ってきた車両を増えるだろう人数が乗れる物に変える、如何しても目立ってしまうが森の中で隠す手段くらい幾らでもある。

木々に干渉しておくだけでも十分だろうが、折角なので当て付けに十分に研鑽された結界を設置していく、気付きもしないだろうが。


 身体を霧状に変化させて屋敷の窓の隙間から侵入する。

陽動は使い魔にやらせればいいのだから、此方の存在に気付かれる必要は無い。

丁度入れ違いに屋敷内から狩人らしき装備の部隊が出てくるが無視だ。

二人一組(ツーマンセル)で四組が屋敷を中心に散らばって行ったが、案の定車両を隠している結界の横を素通りしていった。

アリス達も呆れているだろう。

戻ってこられても面倒なのでそのまま使い魔に後を付けさせて適当な所で始末させる。


 屋敷内部はようやく状況に気が付き始めたのだろう、慌ただしくなり始めていた。

地下の入り口に二人、下り階段の下に更に二人、それ以外は屋敷内の点検や清掃で動き回る使用人と研究者だろう。

まだ寝てる者も多い、とりあえず戦闘できそうな者で寝てる者から手を回していく。

次に使用人、そして研究者、地下の見張りの四人、(いま)だに寝てる研究者が一人居るがそいつには後でやってもらう事があるので起きないよう軽く眠らせておく。


 障害は片付いた、次は要救助対象の保護だが……

地下は酷い物だ。

屋敷の地上部分の床面積に匹敵するくらい広い牢屋、片隅に積み上げられた遺骸。

衛生観念なんて碌に無いだろう、充満した糞尿の臭いに血の臭い、腐った肉の臭い。

襤褸々々(ぼろぼろ)の布一枚だけ着た連れて来られただろう奴隷達。

予想通り実験材料扱いだったのだろうが、こんな辺鄙な森の中でそれだけな訳も無いか。


 人の形に戻って生き残っている者に集まるよう呼び掛ける。

怯える者も居たが反抗する気力も既に無いのだろう。

何人かはまだ希望を捨てていなかった様で、何時も来る者達と全く違う事に気が付いて率先して動いてくれる。

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