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邪神の眷属になったようだが私は何をすれば良い  作者: 屯田観烏之羽(ミタミ・アノウ)
騎士覚醒編
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何処へ行っても問題だらけ

 先行偵察による情報に()ると、問題の屋敷は森の中に隠す様に存在し、数週間前から幾度(いくど)も奴隷を乗せた馬車が入っていったらしい。

当然だが個人的にもアルテーヌ(内の国)的にも奴隷は基本的に認められない。

経済的理由等の借金の(かた)として自身の自由を売った強制労働者もいるし、(うち)の国もそれは仕方がないと他国に口を出したりはしないが、それでも労働者の人権を(おか)す様な事はしない様にと常に言い続けている。


 (ちな)みにアルテーヌは決して人権保護主義者の国ではない。

人権の保護を(うた)わないと民衆の支持が離れてしまうからというのが恐らく一番大きいだろう。

隠蔽や情報統制をしてでも、と判断すれば平気で超えてくる程度には政治部も研究部も闇を抱えている。


 そして奴隷を乗せた馬車だが、屋敷に奴隷を搬入して去っていくのみで屋敷から人は出て来ないそうだ。

食料も専用の馬車が搬入しているらしい。

そもそも奴隷を搬入、つまり気絶させて物の様に運び込んでいる時点で怪しさ満点だ。

そして既に百人以上運び込まれているのに出てくる者は居ない。

ここから推測されるのは……


「人体実験の材料か……何かしらの生物の食料か……あるいは生贄を必要とする何かって所ですか。」


 アリスの予想通りだろう。

そして最後の生贄絡みの可能性を肯定する様に観測された、真面(まとも)な系統ではない術式の波形記録。

観測装備は、本来は国外持ち出し禁止とされる技術水準で作られているが、例外的に持ち出せる物の一つだ、申請は大変だそうだが。

そのして使用された観測装備の記録した情報は、所謂(いわゆる)属性魔術系統や呪術系統とはまるで違う重要な情報が観測されている。


「ちょっとこの規模の魔素変換量は見た事がないですね、それにこれ……」

「間違いなく生命力を魔素に転換しようとしてるな、成功しているかと聞かれると人数によるとしか言えないが。」


 これだけの数字が幾度も観測されてしまっているなら生命転換系の術式の研究をしているのだろう。

疑う余地等無いと思うがまだ情報だけだ、実際に確認しない事には絶対とは言えないだろう。


 そこで問題になるのがどうやって確認するかだ。

此処は他国の領土だ、戦争して良いなら屋敷に直接乗り込めばいいがそういう訳には行かない。

かと言って魔獣災害に偽装するのは難しい。

使用されている術式が発している波動の所為で近くの動物達は既に逃げ出してしまっている。

この条件で第三者の介入があった事を悟らせずに手を出すのは難しい


 しかし、今の私になら対処可能だ。

侵入するのは霧化すれば良い、魔素探知や物理的な罠等の侵入者を警戒していようが関係なく素通りできる。

結界だけは霧でも抜けられないが、結界系は本来私が最も得意とする所だ。

魔術研究が最も進んでいるアルテーヌで、上級認定まで受けた私を結界で止められるなら是非ともやって貰いたい物だ。


 そして破壊工作はもっと単純な手段がある。

禁忌と言われる魔術や呪術は、当然禁忌と言われるだけの代償が存在する。

その代償に干渉して局地的な魔素暴走を引き起こせば良いだけだ。

魔素の流れを把握でき、現実には在り得ない様な触媒を(もち)いる事が出来る今なら決して難しくない。


 その他の情報は運び込まれた奴隷の年齢性別種族と言った情報や、奴隷を連れた馬車を襲撃して得た情報が載っているが特に必要になる情報の類は無い様だ。

手早く済ませてしまいたい所だが、屋敷の内部構造や防衛設備等の情報は殆ど無い。

侵入に気が付かれても対応できるだろうが、面倒な事になるのは間違いない。

誰にも気が付かれないうちに運び込まれた奴隷を外に逃がした上で、魔素暴走を起こして撤退出来るのが良いだろう。

可能なら何をしていたかと、どれだけの成果が上がっていたかの確認もしたい所だ。


「報告御苦労、予定通りこの屋敷は此方で対処する。」

「ありがとうございます。」


 報告してくれた目の前の緑人の陸士の敬礼に返礼して、報告用に借りた天幕(テント)から出る。

天幕の外では既に補給物資から誰がどの嗜好品を貰うかを掛けて勝負が行われ始めていた。

祭りの様な熱気を感じたが、全員が無言で非常に静かだ。

嗜好品は欲しいが此処が敵国で下手に騒ぐ事の危険さを良く分かっているのだろう。

実に軍人らしい姿だ。


 緑人も鬼人も、昔研究者が魔獣に知識を与えられるかどうかの実験をする為に捕まえてきた緑鬼(ゴブリン)(オーガ)の子孫だ。

そもそも魔獣は魔素を受けて進化した動物と言える、当然進化したての生物はまだ環境に馴染んでいないのでまだ進化の余地を残している。

其処(そこ)()け込んで知的種族へ進化させられないかという、ある意味挑戦だったそうだ。

その時は知性の芽生えは確認したが子供より劣る位だと評価されたそうだが、生物は当然長期的にも進化していく。


 今の彼らを見たなら、この挑戦を始めた研究者は何を思うだろうか。

もっと先を目指したのなら他の魔獣種もと手を出すだろうか、それとも彼らを他国に認めさせる為の活動でもするだろうか。

或いはもう興味が無いだろうか?

私も研究は良くするが、他の研究者がどういった気持ちを持つのかは分からない。

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