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邪神の眷属になったようだが私は何をすれば良い  作者: 屯田観烏之羽(ミタミ・アノウ)
騎士覚醒編
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一休み

 アリスが起き出してきたのは昼前と言うべき時間だった。

昨日は休暇が突然返上され、そのまま車両に揺られて前線へ、休憩こそ挟んでいるがそのまま日付が変わるまで連戦だ。

生物なら疲れていて当然だろうしもっと休ませてやりたい所だが、生物には休眠だけではなく食事も必要である。


「おはようアリス。」

「……おはようございます。」


 まだ大分気怠そうな返事が返ってきたが、昼食を抜くのはアリスの健康上許容できない。

とはいえわざわざ食堂に行く必要はない、この部屋でも食事は摂れるようになっているし既に用意させてある。


「まだ休んでいたいだろうが、せめて昼食は食べてくれ。」

「……はぁい。」


 目を擦り欠伸をしながら寝具(ベッド)の中で服を着てから出てくる。

まだ休暇気分も抜けていないのだろう、本来ならまだ休暇中で人前でもないので誰も注意はしないだろうが。


 アリスが服を着たのを確認してから合図用に用意されている手鐘(ベル)を鳴らす。

手鐘の音が響き終わると同時に部屋の扉が開き、昨日と同じ案内役の兵が食事を運び込んでくる。

随分と凝った小道具だが実用には特に問題も無いし、個人的には見栄えするので味気ない釦型入力機(ボタン)よりも好ましい。


 昼食は一人用の鍋の野菜煮込み、それから米と漬物。

栄養価高めで食し易い物で頼んでおいたが、態々(わざわざ)用意してくれたのだろう。

基地内での食事でこういった一人用の鍋を扱う様な料理は無い筈だ。


 まぁそもそも来賓用の部屋なので食事もそれに見合う様にと変えられているのだろう。

昨日は食堂にこそ行きはしたが、私は食べていないので味の質を比べる事は出来ないが、アリスが満足そうに食べているので食堂で出された昨日の食事より良かったのだろう。


 食事を終えてからまた手鐘を鳴らすと食器を下げに入室してくる。

その姿は正直兵というより執事の様だ、案内役を任される兵ならその方面の勉強もしているのだろうし、実に様になっている。

尉官にもなると流石にこう言った事でも抜かりない様だ。


「アリスはもう少し休んでいると良い、私は少し外の空気を吸ってくる。」

「……了解です。」


 此方を見て付いて行くべきか少し悩んだのだろう、少し間が開いてから返事が返ってきた。

正直私も態々外に出る必要は無いのだが、何となく外の空気を吸いたい気分なのだ。





 案内は頼まず一人でしばらく基地内を歩く。

建物内ではなく野外訓練場や車庫等が中心だ、今は丁度時間が空いているので滞っている記憶の整理をするのに良い。

訓練場や車庫を中心に歩いている理由は、特殊階級にいるとはいえ自分は軍人なのだから、こういった場所の方が記憶の連想がし易いと考えたからだ。


 まぁそもそも既に記憶は殆ど思い出せるようにはなっているのだが。

まだ時系列が整理されていないので、完全に思い出したとは言い難い。

意図的に思い出せなくしてある記憶は今は如何にもならないので放置するしかないが、おそらく誰かと会っていた時とその名前の記憶だというのは既に特定している。


 記憶の中の登場人物の外見の年齢、軍関係の設備の新旧、自身の視点の高さや装備等と言った情報から時期を特定していく。

散らばった本の(ページ)を掻き集めて順番通りに並べていく作業の様な物だ、厄介なのは頁番号が無い事だが日付や時間が判る物もある、それらを一つの基準にして整理していく。


 こうして思い出せる記憶を振り返ると幼少の記憶は殆ど無いな。

純粋に抜け落ちて思い出せないのではなく、殆どが思い出せない様に鍵が掛けら(ロックさ)れている。

思い出せなくなっている誰かは肉親或いは血縁だろうか。


『思い出せない様にしてあるのなら、思い出さない方が良いよ。』


 ミラの声が聞こえる。

そもそもの記憶喪失の原因を作ったのはミラだ、だがミラがそういった失敗をするとは不思議と思わない。

それにこの記憶の鍵はほぼ間違いなく自分で掛けている。

おそらくあの実験室に意識を戻す時に、自分で鍵を掛けた上でミラに頼み、()れが誰なのかが判らない様に記憶を()らして貰ったのだろう。


 そのミラが思い出さない方が良いと言う。

つまりミラは其れが誰なのかを知っているのだろう。

家に居たゼブルも間違いなく知っている筈だ、おそらくはアリスも。

そういえばアリスは実験後の一時帰宅でゼブルに何か囁いていたな。

ならアリスにとって思い出して欲しくない事だろうか、いやアリスにとって『も』だろうか。


 おそらく記憶喪失になったならアリスはこう動くだろうと予想もしていただろうし、実際アリスは他に知っているだろう人物に口止めをした。

そして予想される人物は肉親か血縁、本当に思い出さない方が良いのだろう。

ならミラに確認するべきことは一つだけだ。


『ミラ、この記憶の鍵は時が来たら勝手に開くのか、ミラが鍵を持っているのか、それとも二度と思い出さない様に掛けてあるのか、それだけは教えてくれ。』

『……やっぱり君は自分でそこまでたどり着いてしまうんだね。

答えは前二つともだよ、君の深層心理が思い出すべきだと判断した時か、あるいは僕がもう大丈夫だと判断した時って約束だよ。』

『そうか……面倒掛けて済まないな。』

『これくらい全然良いよ、なんと言っても君は僕に、いや僕達にとって大切な人だからね。』


 僕達……か、ミラ以外は知らないんだがな。


 鍵のかかっている記憶以外の整理が殆ど終わった。

軍事関係でアリスに面倒を掛ける事はもう無いだろうが、アリスは何かと私の世話をしたがるからその辺りの安定(バランス)は必要だろう。

後は迷惑を掛けた……いや掛けてない筈だ、心配位はしただろうが、とりあえず大佐と後あの研究者に報告位はしておくべきだろう。

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