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邪神の眷属になったようだが私は何をすれば良い  作者: 屯田観烏之羽(ミタミ・アノウ)
騎士覚醒編
38/82

特異個体

「こいつは……!」


 それの姿を認識したらしい隊員が、壁に備え付けられている端末に駆け寄って連絡を取ろうとしている。

有線式のようで何処に連絡しているかは見えないが、おそらくは指令室か情報解析室辺りだろう。


 私はもう既に正体は確認済みだが、初動を間違えると大惨事になりかねない魔物の筆頭と言えるだろう。

即座に解析するべきと行動したあの隊員は褒めるべきだろう。

他に食堂に居る隊員も騒ぐ事無く、食事がまだの者は食事を急ぎ、既に食べ終えている者は武装の点検や部隊復帰に速やかに移動を開始している。

実によく訓練された質の良い軍隊だと評価しておこう、此処の火力が不足気味にも思えるが、突出した才能か兵装無しの解決は難しいだろうしそこまで歩兵に求めるものではない。


 魔物とは何かと聞かれれば、それは自然に存在できない生物と答えるのが正しいだろう。

魔獣や魔人も、元々は魔物と分類されていたが、実際には本来存在していた形を逸脱する変化を起こしてしまった者達だ、(ある)いは進化と言ってもいい。

だが魔物にはそれが無い、その存在の基礎となる生物が無いまま生まれた生物。

(もと)になる生物が無い事による最大の違いが、物質的な肉体の有無だ。


 魔物には肉体が無い。

生きている間はそこに存在している様に振舞っている、(さわ)れるし触られる。

だが生命活動を停止してしまえば全て(つゆ)と消え去る。

それだけ聞けば儚い存在の様にも思えるが、それだけ物質的な在り方から遠い。

物質に縛られない魔物は、生物学にも当てはまらなくなりその結果、生物とは思えない様な形を持って生まれてくる。


 しかし生物学に当てはまらないとはいえ、種と言って間違い無い傾向がある。

魔物の中で最も生まれてくる数が多い種、それがまさに今映し出されている物だ。

その種の名は……


「スライム……ですか、それもレッサーじゃなさそうですね。」


 粘性生物(スライム)……

魔物と言えば真っ先に()がってくる名前だ、しかし誤解を招くので訂正するが。

所謂(いわゆる)粘性生物として名前が挙がるのは、劣等種(レッサー)の事だ。

全身液体というあまりにも無茶に過ぎる身体の代償なのか、叩けば簡単に潰れたり、あるいは本体とでも言うべき(コア)を持っていたりする。

そしてその体躯は総じて小さく、魔物と言う分類上で最も弱い種だ。


 だが劣等種ではない粘性生物は、魔物と言う分類上で最も厄介な種だ。

その最大の要因は、派生亜種を含めたほぼ全ての粘性生物は、運動(エネルギー)を食べる事だ。

物理的な攻撃のほぼ全ては粘性生物にとっての食事となる、もちろんそれを行った鉄も木も食べる。

これだけでも面倒極まりない特性だというのにその上、熱も食べられるとか魔素も食べられるとか言い出すのが粘性生物亜種だ。


 共通する弱点が一つあるのだが、その弱点を狙った攻撃方法は未だに完成していない。

余りにも危険すぎる攻撃手段で、倫理的に開発が止まっている。

そんな物に頼らなくても此処は軍の基地、正攻法で攻めるだろう。


 一先ずこの基地の対応を見学させてもらうか。

発見から十数分程度の時間が経過したが、既に各部隊に通達が飛んでいる。

今度は有線じゃないので内容を盗み見るのは簡単だ。


「ふむ、燃焼系の飽和攻撃で焼き尽くす様だな。

アリス、仕事には火が止まってから出よう。」

「ん!?先輩今どうやって……いえ、最近の先輩には言うだけ無駄そうですね。」


 おっと、まだ攻撃が始まってもいない段階で通達内容を喋ってしまった。

当たり前にやってしまったが、無線傍受に関する技術はまだまだ未成熟だ。

何と言っても傍受するべき相手がいないし、傍受を警戒するべき相手も居ない。

他国との技術格差が酷すぎる弊害だ、他国にはもっと頑張って欲しいとすら思い留学生すら受け付けているのに一向に芽が出ないという。


「あー、まぁなんだ、個人技能って事で誤魔化しておく位はできるだろうが、あんまり俺の仕事を増やしてくれるなよ?」


 確かにこの技能は研究者が調べたがるだろうが、正規で依頼を出そうとするとまずヴィクターに依頼が入る。

つまりそれだけヴィクターに仕事が集中する、以前見た執務室には大量に書類が積まれていたし、無意味にヴィクターを過労死させる訳にはいかない。

少し理性の(たが)が緩んでいる様だ、気を付けるとするか。


 壁に写されている粘性生物の映像に印が付けられた。

映像ではわからないな、使い魔の目では術式までは見えない。

もう少し高性能な使い魔にしておくべきだったか。


「長距離術式誘導印だな、まぁ()(この)んでスライムに近づこうとする酔狂な奴もそうそう居んだろうし妥当だな。」


 基地と、粘性生物に近い部隊から燃焼弾が放物線を描いて飛んでいく。

司令が戦線に出たりする位ならこれを使えよと言いたくもなったが、周辺の環境を大きく巻き込んでしまっている。

消火する事も含めて燃費は悪そうだ、あまり使いたくない装備なのだろう。

森に派手に延焼してしまっているが、スライム相手ならこれくらいは許容範囲内か。

続けて冷却弾が飛来して燃える森ごと氷漬けにしていく、やることが派手すぎる燃費が悪い原因そのものだろう。

おそらくこれ以下の威力で撃とうとすると、途中で減衰してしまって威力が大幅に落ちるのだろう。

強力ではあるが改善の余地ありだな。

誤字報告頂いておりました。ありがとうございますm(__)m

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