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邪神の眷属になったようだが私は何をすれば良い  作者: 屯田観烏之羽(ミタミ・アノウ)
騎士覚醒編
32/82

招集

「さて状況を説明する、まずはこれを見ろ。」


 そう言ってヴィクターは胸布嚢(ポケット)から取り出したのは、球体の様な水晶らしき物体だ。

それを膝の上あたりに保持すると光で何かを(かたど)りだした。


 光だけで構成されると見え(にく)いのだが解決策はもうある。

視力矯正用の魔術、俗に言う眼鏡魔術は目に入る情報を補正、修正する魔術だ。

つまり光を魔術的に受けて解析し、視覚情報に発生する焦点の歪みを補正する事ができる。

当然魔術で視覚情報の代用ができると考えて既に考案、構築済みだ。


 これでとりあえず光に悩まされる事は減るだろう、さて肝心の光像は……地図だな。

支援要請があったという北部の山脈を防衛拠点から見立てた地図だろうか。


 いやそれだけではないな、小さく色分けされた(マーカー)が動いている。

これは味方部隊と敵性存在だろうか。


「この情報は、ほぼリアルタイムで基地から送られてきている。

よっと、確かこの辺りに……あぁ居た居たこいつだ。」


 最新装備が使いこなせていないのか、かなり怪しい手付きで水晶球を操作しながら怪しい呻き声を上げている。

表示されている地図を拡大しながら右へ左へ彷徨い、ようやく目的の対象を発見したらしくそこで操作を止める。


 そこに映っているのは青で表示された味方部隊と、黄と赤で示された敵性存在を映していた。


「青は駐留部隊、黄色は既知の魔獣類で赤がアンノウンだ。

ん?あれどうやるんだっけか……」

「ヴィクターそっちじゃなくてこっちです。」


 おそらく画面に表示されている敵味方識別に色分けされている(マーカー)を外したいのだろうが、またしても怪しいうなり声を上げ始めたヴィクター。

見かねたアリスが操作方法を指示し始めてしまった、こんな上司で大丈夫なのかと思わず頭を抱えそうになったが耐える。


 最終的にアリスが操作を変わった。


「あーすまん、頼むわ。」


 (マーカー)が外れ、代わりに正体不明(アンノウン)の輪郭が強調されて拡大される。

その見た目は……四本腕の大男、と言うのが近いだろうか。

それぞれの腕に剣や槌が握られている、動きもかなり早い。

魔導銃による射撃攻撃を浴びているようだが、大した被害(ダメージ)にはなっていない様だ。


「四本腕の巨人……四メートルくらいはありそうですね。」


 アリスの見立てで約百三十寸(400cm)か、拡大表示されている映像では認識し辛いがなかなかの大物だ。


「ちょっとこれに一致しそうな魔獣や魔人の(たぐい)は知らないですね……」

「この情報は王都及び衛星都市の生物学者に流されてるが、類似した生物類の回答は半分も帰ってきていない。

アリス、マーカー戻してもう少し北に行って魔獣が群れている所を探してくれ。」


 アリスは首肯だけして映像の位置を北に動かす、そしてそれはすぐに見つかった。


「これも赤……しかもさっきと全然違いますね。」


 次に(マーカー)の下から現れたのは、凄く大雑把に分類するなら角のある爬虫類だろうか。

大きさ的には龍種(ドラゴン)に分類してもいいかもしれない、話は通じなさそうだから竜種フェイルドラゴンだが。


「こんな感じの既存の生物体系からはみ出した特異個体が、朝から散発的に出現し続けているらしい。

類似生物と似通った特性を持ったものも居るしそうでないやつも居るそうだが、こいつらに共通する最大の問題は魔素耐性が非常に高いって事と、身体強度が異常に高いって事だ。

倒せないわけではない、実際防衛に当たっている部隊が既に何体も倒してはいるからな。」


 つまり防衛部隊だけでも個々に対応する分には問題ないと。

なら、此方に振られる仕事は調査だな、この異常事態の原因を探ってくればいいのだろう。

解決できるかどうかは分からないが。


「では私とアリスは基地の探知圏外の捜索ですか。」

「あぁ、こういった特異個体が一頭や二頭なら騒ぐまでもないんだが、流石に何かしらの原因があると考えている。

特異個体も面倒な敵だがそれに引きずられる様に魔獣も大量発生している、ただの調査隊員では嬲り殺しになりかねない、だからこそのお前たちだ。」

「了解です、基地の探知圏外を探索優先で活動します。」

「本当はお前ら以外、というかジズ所属の代行者(エージェント)の仕事なんだがレヴのも含めて他所の国に出払ってやがるからな、すまんが頼む。」


 軍事力も政治力も含めた多くの分野で、間違いなくこの国は大陸最強の国家と言われてはいるが、実際は領土は小さいし国民の数もかなり少ない小国だ。

そして大陸最強の軍事力と政治的発言力の関係で、各国間の仲介や調停で人材があちこちに出張させられる。

行きつくのは当然人材不足だ、この状況は仕方ない。


 人間以外の労働力は大量にあるんだが、それらは単純労働か指揮者が居る状況でしか使えないからな。


 その他細かい状況を水晶球で確認しつつアリスと行動方針を詰めておく。

ヴィクターは作戦説明(ブリーフィング)は終わったと言わんばかりに何も言わない。

作戦説明っていうのはもっと細かく指示や説明を出すべきだと思うんだがな。

細かいことは任せるというのは現場主義というより放任、責任の放棄だと突っ込んでおくべきなのか。

アリスが特に何も言わない辺り、いつも通りの事だろうから無駄だろうな。

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