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邪神の眷属になったようだが私は何をすれば良い  作者: 屯田観烏之羽(ミタミ・アノウ)
騎士覚醒編
31/82

招集

 身体が車両の進行方向に向かって引っ張られる感覚がする。

車両が急減速し始めたのだろう、慣性の法則に従って流される身体を車両に固定して待つ。


 既に最高速度から速度を落としていた車両は、十秒と経たずに停止した。

同時に後部車両から隔壁が開く音と機械の始動音が響いてくる、これは三両連結されていた機動車両とその隔壁だろう。


 さて、軍事行動ならまず最初は作戦説明(ブリーフィング)だろうか?

それなら移動中に、いや移動前に済ませるべきだと思うが。


「行きましょう先輩。」


 アリスはどうするべきか分かっているだろうし付いていくか。

そもそも通路を挟んで隣の指揮官室からは音がしていない、寝ているのなら起こすところからだろうか。


 そんなことを考えていたらアリスが当たり前の顔をして指揮官室の扉を開けはなった。

扉を叩いたりもせずにいきなりだ、それでいいのか……


「起きてください大佐、つきましたよ。」


 車両に響き渡るという程ではないが、室内には響き渡る程度には大きな声でアリスが叫ぶ。

これは本来私の仕事か?アリスはいつも通りの事の様な自然さだったが、アリスがやる仕事だと言われるよりは私がやっていた仕事と言われた方がしっくりくる。


 まぁ覚えていないし、アリスがもう既にやってしまったので良いだろう。

壁に(もた)れ掛かる様に眠るヴィクターも流石に起きて……ないな、やはり私の仕事か。


 仮にも軍人が作戦前とはいえ熟睡して起床できないというのはどうなんだ。

前線に出る人間なら飛び起きるだろう方法でも試してみるか。


 とりあえず気配を消す、細かいやり方は忘れているので感覚で誤魔化そう。

アリスの目の前だが、まぁアリスには隠す必要もない。


 自分の身体の輪郭を崩せば、表面だけ人の真似をしている私の身体の内側を埋める闇が溢れ出す。

以前の下っ端諜報員に行ったそれと同じだ、闇に同化していく。


 アリスが驚いて声を上げそうになったが、口に指を上げるように闇を押し付けて黙らせる。

……余計に驚いかせたようだが声は上げなかった。


 そのままヴィクターのすぐ傍まで闇の一端を近づける。

今回は音だけで十分だろう、耳元に近づけた闇から声を発する。


「いつまで寝ているつもりだヴィクター、さっさと起きろ。」


 瞬間、跳ねる様にヴィクターの腕が傍にあった短剣を掴んで斬りつけてきた、のでさっさとアリスの横で人型に戻る。


「んあ?一体なんだ。」

「大佐、もう着きましたよ。」


 寝ぼけ気味な反応をするヴィクターに、アリスが被せ気味に声を掛ける。

直ぐに状況は把握したのだろう装備を確認し始める。

壁に凭れ掛かっていた時点でわかっていたが、装備を着けて寝ていたので直ぐに立ち上がって部屋から出てきた。

そのまま降車口に向かうので付いていく。


「で、さっきのは何だドゥ。」

「そうです先輩、さっきのは何ですか。」


 ヴィクターだけなら(とぼ)けるつもりだったのに、アリスが便乗して聞いてきた。

アリスに聞かれては仕方ないな。


「先日やった諜報員を逆襲撃に使った手です、変身(メタモル)系統の単純な魔術ですよ。」


 実際に単純な魔術にするのにはほぼ不可能な前提を超える必要があるし、どちらかというと変身ではなく擬態(ミミクル)よりなのだが。

再現できるまともな人間は居ないので詳細な情報は要らないだろう。


 二人とも首を捻って絶対違うだろうとは思いながらも検討している。

こういう所は二人とも学術研究都市の名に恥じない一員だなと思うが、今は関係ない。


 車両から降りると機動車両に物資の積み込みをしている部隊がいる。

彼らは車両に乗り込むより前に既に作戦説明を受けているだろう。

迷う事無く手際良く作業を進めているが、すべて終わらせて動けるようになるには少しかかりそうだ。


 そんなことを思っていたら、既に一台だけ積み込み作業を終えたのだろう車両が近づいてくる。


「トリガー大佐、乗ってください。」


 先行するために先んじて積み込みを始めていたのだろう、……トリガー?ヴィクターの家名だっただろうか?

ヴィクターが乗るなら私達もだな、とアリスに目線だけで確認したら小さく(うなず)かれた、あっているようだ。


「御苦労、他に先行する人員は居るか?」

「いえ、お三方だけです。」

「わかった、後ろの二人は車内でブリーフィングを受けるから、可能な限り静かに走れるルートを選んでくれ。」

「了解です。」


 車内後部の両開き扉から乗り込むヴィクターに続いて車両に乗る。

既に積み込まれた物資で、運転席と後部扉の傍以外に殆ど空間(スペース)が無く非常に狭い。


 後部扉が閉められ、運転席からも扉が閉まる音がしてから声がかかる。


「では出発します、先行隊到着予定は二丸(ふたまる)分後です。」


 二丸……二十か、この国の住人は職種にもよるが色んな言い回しや言語で喋る者が多い。

この国には母国語に相当する物はない、強いて言うなら大陸内の多国間で使用されている交易共通語を基に改造された言語がそれに当たるだろう、アリスやヴィクターもこれを喋っている。

今の兵のはただの交易共通語から改交易共通語の中間みたいな言い回しだった。

ちなみに私は汎用魔術言語で喋っている……筈だ、翻訳魔術に任せているのであまり意識してはいないが。


 一応国内で使用される全ての言語の自動翻訳を行う魔術は、喋り手も聞き手も使っている筈なのだが微妙な言い回しで翻訳に失敗していることはそれなりにある。

言語関連は翻訳魔術に任せて後回しにしているが、落ち着いたらそういった知識も思い出すようにしないといけないか。

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