招集
「……全部当たってますね。」
ほぼ必然の結果に近いが、まぁ普通の人種では不可能に近いだろう。
偽装用の魔術でも考えておくか。
「まぁ問題は無さそうだ、実際にどの程度使えるかは実戦でだな。」
「……まぁ使えるんならいいんですけど……」
アリスはまだ言いたいことはありそうだが、出陣前の貴重な時間を訓練で潰すのは惜しい。
「夕刻出発だしまだ時間はあるな、アリスは出発まで身体を休めておくと良い。」
「……それは先輩も同じ、というか先輩の方がよっぽどだと思うんですけど。」
私は疲れないし、そもそも眠れないので仮眠も不要だからな、とは言わずにおく。
言ったらアリスが意地を張りそうな気がするしな。
訓練用の魔導銃を鍵箱に戻しつつ、一応魔導銃の構造を混沌で複製しておく。
そのままでは使い物にならないが、後で実機が配備されるのだから、実際に使うのはそっちでいいだろう。
所謂、蒐集品と言う物に近いだろうか。
大量に蒐集しても特に場所に困ることはないし、複製しても現物は何も変わらずに済むのだから積極的に集めておくべきだろう。
手持ちの武器は多いに越したことはないし、改善点を探すのにも情報は多いに越したことはない。
さて、アリスを休ませるのに、私も休む必要があるだろう。
早いが集合場所に行って休ませてもらうか、他に用意するものが無いといいが。
「アリス、あとするべきことはあるか?」
「特にありません。北部の支援ですから移動はまず鉄道ですし、先に車両に乗っておきましょう。」
鉄道か。
そういえばまだ一度も車両を見ていないな。
完全に軍事用……と言うわけではない筈だが、運行本数が極度に少ないだろうか、なんて考えていると丁度地上の方で車両が接近してくるのが見えた。
アリスの案内で乗車口を目指すが地上に上る気配はない。
軌道は地上にあるのだから地上で乗るものだと思ったが、軍事用に地下を走らせてあるのだろうか。
そんなことを考えているうちに乗車口に付いた。
場所は……地上の軌道の真下辺りか、地上の軌道二本に対して地下は四本並んでいる。
退避用か?いや積み込み等で同時に多数の車両で作業して、連続で発車するための措置だろうか?
しかし準備中の筈の今、一両も居ないのはおかしいな
地上の方で車両が都市内に侵入した直後に警告灯が点灯している。
地下の軌道と接続しているのだろう、稼働している軌道周辺の隔壁が地面から迫り上がって隔離されている。
無駄に仕掛けに凝った街だな此処は。
「ドゥ、アリス、もう終わったのか。」
ヴィクターも乗車口にやってきた様だ。
左肩には大きな背負い袋と魔導銃が掛かっている。
「問題なく終わりました、車両は……換装中ですか。」
換装……物騒と言うべきか、また無駄に仕掛けに凝ってそうと言うべきか。
「北で何が起きているかは分からんがな、結果的に東の国境線が手薄になっているからそっちへの増援だな。
戦車八両、俺らが乗る編成に二両積むからその所為だな。」
「戦車ですか、まぁ東はいつもの事ですし八両くらいで平気ですかね。」
戦車ねぇ、具体的な性能は……見てみないと思い出せそうにないな。
「まぁもう来るだろ、お前らの装備は二両目の士官室に積んだそうだから、装備を確認したらそのままそこで休んでていいぞ。
到着次第直ぐに移動でそのまま夜戦という事もあるだろうしな。」
ヴィクターがそう告げ終わると同時に音が響いた。
車両の警笛だろう、直ぐに一編成だけ進入してきた。
前から動力車、指揮車、高級乗員車、貨物、乗員車、機動車両積載車が三、戦車積載車……
八両編成か、動力車は編成に含めないから高級乗員車だな。
編成順的に貨物と乗員車の間で切り離しとか考えてそうだ。
「俺も指揮車に居るから何かあったら遠慮せず来い。
ただし、移動中俺は寝てるからその間お前らも寝とけ。」
確実に仮眠が取れる最後の瞬間だろうし当然だな。
ヴィクターと別れて二両目に乗り込む。
士官室は……四つあるがどれだ?と思ったらアリスが手招きしている。
「先輩と私はこっちです。通常は進行方向を向いて国の中心側が指揮官用で、逆は私達みたいな代行者や補佐官用、後ろはその他の乗員によりけりです。」
今回は北に向かうので右の部屋な訳だな。
代行者と言うのは……軍部に所属しているけど基本的には極少数の人数で活動する特殊兵科だ、大丈夫ちゃんと自分の兵科くらい思い出せる。
今回はどちらかというとヴィクターの補佐官に近いがそれは些細な違いだ。
潜入や交渉等が主な仕事になる代行者は、指揮官と情報のすり合わせ等の都合で近い部屋が用意される。
代行者が居ない場合はその変わりを補佐官が務める、基本的に代行者の方が地位は高い扱いになるのだ。
さて装備は……魔導銃と短剣に、鉈、というか鉈に氷斧の機能を付けたような感じの複合装備。
それから爆発系の効果が付与された投擲用の短剣が複数、あと斧槍と刀か。
アリスの方もほぼ同じ装備で、斧槍と刀の代わりに長剣と棒……棒?棒のような何かだ。
「アリス、その棒……?棒で合ってるか?」
「これはまぁ棒と言えば棒ですね、伸縮機能付きの機械棒です。」
なるほど伸び縮みするのか、手渡されたのでついでに複製を取る。
魔術的に歯車を動かして伸縮させる機能が付いている、だいたいアリスの身長と同じ長さだが、その倍近くまで伸びる様だ。
可動速度もかなり早い、間合いを狂わすことはもちろん、棒で地面をついてから伸ばすことで跳躍力に加算したりも出来そうだな。
「ふむ、なかなか面白そうな武器だな。」
「今となっては出番がない気もしますけどね。」
あとは、保存食と水と応急手当て用の薬品類が入った背負い袋と服。
今着ている軍服も下手な短剣の一撃程度で傷がついたりしないだろう程度に防護性能があるが、これはもっと堅いな。
あと無駄な装飾が無い、単純で使い勝手も着易さも良さそうだ。
膝や肘等の要所は分厚く作られているし、かなり硬く作られている、下手な金属鎧よりよほど硬いだろう。
何で作られているのか、これも複製しておこう。




