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邪神の眷属になったようだが私は何をすれば良い  作者: 屯田観烏之羽(ミタミ・アノウ)
騎士覚醒編
20/82

身体の状態

 五日が過ぎた。

五日『で』と言うべきなのか、五日『も』と言うべきなのか、それとも五日『しか』と言うべきなのか。

二日目を除けば診察室に通い詰めるような事にもならなかったのだが……研究員達がボロボロだった。


 おそらくほとんど寝てないのだろう、どこまでも研究に人生を奉げたような人達だ。


 一日目は特に何もない。

アリスと食事をして、自身で自身の身体の状態を確認するために軽く運動したり、情報端末機から国内外の情報を読み漁っているだけで終わった。


 アリスが私に勉強を教えたがっていたが、アリスの診察を一日で終わらせてしまうつもりだったらしく、そんな時間はなかった。


 二日目は朝食より前に診察室に入り、二時間後に出て遅めの朝食を取りすぐに診察室に戻ることになった。


 朝食の内容も検査用の薬剤で作りましたと言わんばかりの朝食だった。

味覚がまだ死んでいたなら多少マシだっただろうが、以前通りとまではいかずとも既に味覚自体は復活していたために酷い味に苦しめられることになった。


 聞けば岩晶人(ルプトクス)の検査用だったらしく金属類を含んでいたらしい。

人の味覚で食べていい物ではない。


 その食後の検査が二時間で終わり、次は直接胃を見ると言われて麻酔薬を渡される。


 それ自体はまぁ珍しいが無い事ではないらしい。

透視では発見できない病気や傷の類を発見する為に、身体の感覚を麻痺させて小型の撮影機(カメラ)を口等からいれるのだが……まぁ頓挫した。


 まず麻酔が効かなかった、三種類ほど麻酔を変えて試されたのだが、どれも効果がない。

服用しても効かないし吸引しても効かない、直接針を刺してみれば原因と言う名の新たな問題が発覚する。


 針は細いとはいえそれでも身体に穴が開くのだ、普通なら血が出る。

なのに一切の血が出てこない、そういえば実験後から一度も出血した記憶が無いな。

あと何か刺さっているという違和感こそあったが、痛みは感じなかった。


 さらに刺した注射器の針、その体内に侵入した分の半分が無くなっていた。

消失面を見るに、折れたのではなく『溶けた』のではないかということらしい。





 もうこの時点で研究員達は頭を抱え始めていた、同時に目が輝いていた様にも見えたが。


 そして始まったのが、ひょっとしたら拷問なのではないかと思わず思う検査だ。


 麻酔が効かないので諦めて小型撮影機(カメラ)をそのまま口から呑み込む。

蛇の様に自在に動く紐の先端に付いた、所謂(いわゆる)撮影機(カメラ)だ。


 当然のように壊れた。

口腔内から食道に侵入した瞬間に溶けたのだろう。

慌てて引き抜かれたが既に先端部分は跡形もなかった。


 わかったのは身体の表面こそ凡人(ヒューマン)を装っているが中身は全くの別物という事。

体内に侵入した異物を溶かすという性質から、粘体生物(スライム)化している可能性を示唆される。


 夕方に粘体生物(スライム)研究用の実験道具一式を手配するという事になり一端の休憩を挟んだ。


 粘体生物(スライム)研究の基本は、まず溶かされない事だ。

強酸(アシッド)粘体生物(スライム)にも使える様に対策された針で刺される。

これなら溶けたりしないだろうと思われた様だが、これも瞬く間に溶けた。


 私も含めて全員で唖然とした表情をしていたことだろう。


 その辺りから箍が緩みだしていたのだろう、粘体生物(スライム)以外の既知の生物で一番近いのは何かと予想が始まり、そこで名の上がる生物の研究に使われる物を使って確かめる。


 だが何をどうしても調べられない。

口腔内の粘膜や唾液、体毛は当然、いっそ皮膚を直接剥いで見るかという意見すら出た。

痛みを感じないならと無茶を言う。


 だがそれらから調べることも無理だった。

身体から離れたそれらは、その場で真黒に染まって霧散してしまった。


 いっそ顕微鏡で直接見ようと台に固定され、物理的にも魔術的にも凡人(ヒューマン)の体表の様にしか見えない。

そして、まさか本当にやるとは思わなかったが、皮膚を切って開いて中身を見た。


 そこまでして、しかし得られたものは大して無い。

皮膚の下から出てきたのも『表面的には』筋肉だ、特に凡人(ヒューマン)の平均から離れてもいない普通の筋肉だ。


 ただし、三秒あったかどうかというほど見られた時間は僅かだった。

切り開いた皮膚がボロボロと崩れ去って霧散し、ものすごい勢いで新しい皮膚が出来上がったのだ。


 情報(データ)収集に余念がない、何回かやられた。





 そうして二日目が終わった。

休憩を何度か挟んだとはいえ、精神的に大分疲れた。


 最後の方は開いた皮膚が塞がる前にどれだけ肉が削れるかと挑戦していたが、大して削れずに終わった。


 三日目と四日目は……二日目で大分狂気に踏み込んでいたことを反省したのか、検査自体は最初にやった程度に終わった。

変わりに絶食絶水検査が始まったが。


 まぁこれは大して問題ない。

そもそも食事自体には特に意味がないのは既に自覚している、というか判明している。


 何と言ってもこの身体で一度も生理現象を確認していない。

ついでに言えばアリスに付き合って食事を三回はしているが、水の一滴すら出していないのだ。

生命活動なんてとっくに止めていると言われても不思議ではない。


 私はもう既に、なんとなくではあるが絡繰りが読めている。





 五日目は朝から検査だった。

三日目の絶食が始まった時にした運動能力の検査をもう一度行う。

四十八時間、丸二日間水の一滴も取っていないのだから、当然三日目より結果は悪くなって妥当だ、生物なら。


 実際の結果は低下どころか向上すらしていた。


 外面だけ人を維持しているだけで、どう考えても生物ではないな。

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