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邪神の眷属になったようだが私は何をすれば良い  作者: 屯田観烏之羽(ミタミ・アノウ)
騎士覚醒編
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序章

 眠り……いやこれは寝てると言えるのだろうか。

目を閉じ、思考を止める、それ以上にできることがない。

意識が少し靄がかかっている様な状態だが、逆にその程度にしかならない。

閉じたままの目で月明りを感じながら、しばらく呆ける様に過ごす。


 おそらく身体が睡眠を取れなくなっている。

既に寝具(ベッド)に体を横たえてから一時間は経つが、一向に眠気すら感じないのではそう疑いたくもなる。

これは時間の無駄だなと目を開け、後回しにしていた実験の事後報告書の作成にかかる。


 情報端末機の画面が見にくいと感じた。

おそらく先程からずっと闇を見て活動していたからだろう、機械の画面に表示される文字や波形は全て光で表されるのだから見え難くて当然だ。

画面が表示する『光』を見る。

こんな単純な事を意識して行わなければならない。

これが紙に(インク)だったならその高低差が生む僅かな影で識別できるだろうが、画面は平坦で、おまけに黒色さえ光だ。

これは……存外に不便だな、先程の隠密行動と戦闘では自分で行ってて恐ろしいと思えるほどに有用だったというのに。


 まぁ時間は有限だ、いくら思考する時間が引き延ばせるとはいえ、実際に活動するには時間が掛かる。

さっさと報告書を仕上げ、他に手を出してくる勢力がいないか調べなければ。

報告書に載せる情報は……確か注意事項があった筈だが思い出せない。

研究者達とは別口で、そうだ確か上官にも報告書を上げなければ。

一先ず上官用の報告書として仕上げてしまうか。


 内容は研究の有用性と危険性と実験中に見た記憶が中心だな。

実験直前辺りと実験室内での記憶はおおよそ覚えているから問題無い。

自身の根源と(ミラ)の事については省く。

あれは書面で残して良い物ではない、直観だがそう感じるし私自身の切り札として伏せておきたくもある。

ついでに別項扱いで先程の防衛行動についての『影』属性魔術の有用性と通信端末の現行機種の欠点を纏めておくか。

おそらく相手方は訓練だったで済ませたいだろうから、先にこちらで体裁の準備をしておく。

借り一つ、と向こうが受け取ってくれれば良いが相手の性格が掴めていないから正直不安だ、しかしどうしようもないから相手の次の動向次第だな。


 上官用の報告書は纏まった、研究者(スティルバス氏)用の報告書は半分もできていないが、機密関係で何かあったと思われるので上官に要相談。

故にこれで良い。


 まだ日は昇らない。

病室に近づいてくる気配を察知する。

既に一時間近くも病棟の周りを徘徊……いや巡回していたので誰かは判っている。

故に、病室の扉の前で立ち止まった瞬間に扉を開ける。


「アリス、こんな時間に外を出歩くな。」


 彼女(アリス)は驚いた顔をし少し目尻に涙が浮いていた様だが、構わず室内に引き摺り込む。

何か言おうとしたようで言葉にもなってない音が発せられたが、そのまま寝具に放り込んだ。


「先輩……あの」

「まずは目を閉じて深呼吸だ、それから瞑想でもしてみるといい。

人間は『自身に無害』と判断できる物に対して直ぐに警戒心を無くし慣れる生物だ。

しばらく近くに居れば慣れるさ。」


 半分以上誇張だ、個人差が有り過ぎる。

早々に警戒心を無くす所か初めから警戒心すら抱かない者もいるし、いつまでたっても警戒心が薄れない者もいる。

彼女は……記憶の中では人の、というより私の話をよく聞き実行に移す(タイプ)だった筈だ。

実験の影響でどれだけ彼女の体質が変化していて、それを彼女の精神がどれだけ制御できるかどうかだが。

この手の状況では言霊が最も有効だと、思い出せる限りの知識が告げている。


 言霊というのは言葉を介した(まじな)いだ。

行使自体に何の代償も必要とせず効力も薄いが万人が行使できる魔法とすら言われる。

所謂魔術や魔法と違って(ことわり)を捻じ曲げるような力は無いが、知生体の力を引き出す事に関してはあらゆる方式の魔術の祖とすら言われる。

反対に全ての方式の呪術の祖とも言われる。

今回はその両面共に有効だ。


 彼女に『しばらく』したら『慣れる』と言った、言霊だけではなく僅かながら魔法まで混ぜたそれはある意味洗脳とすら言えるだろう。

よくよく思い出せば医者の手法の一つだな。

砂糖を薬と言って渡して効果が出てしまった実験に基づいた、『信用』という言葉ではない言霊が存在するかという研究だったか。


 記憶上彼女との付き合いは長い、魔法まで重ねてあるのだからよく効くだろう。

彼女は何か言いたげだったが、そのまま目を瞑って深呼吸しそのまま瞑想を始めた。

あの実験が明けていきなりの一騒動だ、生物的に強化されているであろう身体でも疲れているだろう。

数分もしないうちに彼女は眠りについた。


 朝が来たら起こさなければならない。

短い時間でも身体の疲れが抜ける様に眠りの魔術を掛けておく。


 さて、報告書を全て紙に印刷だな。

それから情報端末機から報告書の内容を消去しておく必要もあるか。

記憶は無くとも身体は必要なことを覚えている、とは言うがそもそもの身体が作り替えられた私にそんな希望は無い。

書類整理中に思い出した内容も含め、思い出せる限りの記憶を全て洗い出すように確認し、抜けがないかどうかを確認する。

確実に何かしら抜けは有るだろうが、最大限それ等を潰していくのが今の仕事か。


 彼女ともっと話し合う必要があるが今はそんな余裕がない。

もう少し待っててくれ。

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