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勇者かわいい ~知らんけど、たぶん猫ちゃんがオワコン世界を救うお話~  作者: PYON
第四章 魔王ミレーネ・ヴァルガス

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魔王ミレーネ・ヴァルガス03

 王座に腰かけると、玉座の間は不思議なほど静まり返った。満身創痍の勇者たちの荒い呼吸と、横にいる猫ちゃんの小さな喉の音だけが響く。

 勇者は剣を杖のように突き立て、辛うじて立っている。仮面の魔導士は血に染まった衣を押さえながら、必死にこちらを睨んでいる。

 王女は崩れ落ちそうな身体でなお、真っ直ぐな眼差しをわたしに向けていた。

 ……胸が痛む。

 わたしにとっては、ここからが本当の戦いなのだ。 

 このまま共に歩めば、確かに人と魔は手を取り合えるかもしれない。

 でもそれは「勇者の物語」だ。その瞬間から、この世界は人間の手で紡がれていくだろう。

 わたしは魔族だ。その未来は甘美だが、わたしが選んではならない道。

 魔族を、わたしの手で勝利に導かなくては。

 

「魔王様、これからどうするつもりですか」

 王女の声が澄んで響く。

「できたら、手を取り合って世界を良くしたい。魔族の王であるあなたと、人間の王女であるわたしが……共に歩めば」

 その言葉は甘い毒だ。ほんの少し、心が揺れる。だが……魔族の誇りは人間に委ねるものではない。わたしの背には、無数の魔族の怨嗟と希望があるのだから。

「それはのめない」

 声が冷え、床石を伝って震えた。

「この戦争は魔族の勝利で終わらせる。勇者を下し、わたし自身が新しい秩序を築くのだ。さあ、立て。全力でこい。どちらが勝っても恨みっこなしだ」

 

 勇者と魔導士が立ち上がる。

 その眼差しは強い。まるで王女と同じ光を宿している。彼らはすでに限界を超えているはずなのに……まだ戦おうというのか。

 猫ちゃんが、ふらりと立ち上がり、わたしと勇者の間に割って入った。「やめて」……そう訴えるように丸い瞳で見上げてくる。その姿に心が裂かれそうになる。でも、やめるわけにはいかない。

 ごめんね、猫ちゃん。あなたを裏切る。その痛みはわたしが背負う。

 わたしはゆっくりと立ち上がり、片手を掲げた。頭上に黒い球が生まれ、重苦しい光を放つ。空気が圧し潰され、王座の間の石壁が軋む。

「これが、魔王としての答えだ!」

 わたしはその黒き球を、勇者たちめがけて放った。

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