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勇者かわいい ~知らんけど、たぶん猫ちゃんがオワコン世界を救うお話~  作者: PYON
第三章 アルゴス王国第五王女セレス

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仮面魔女シャーリー・メルク05

 わたしたちは作戦会議室に戻る。さっきまで戦場にいたのが嘘みたいに、部屋の中は静かだった。

「ありがとうございました。おかげさまで魔王軍を退けることができました」

 セレス王女が深々と頭を下げる。

「いや……正直、引いてくれて助かっただけだ。次はどうなるかわからん」

 レオンが答える。

 わたしも同感だった。勝ったというより、延命しただけ。次は負ける可能性だって高い。もっと力を上げないといけない。

「だから、みなさんには一度王都に来てほしいんです」

 セレス王女は真剣な顔で続ける。

「父に会って、あなたたちのことを認めてもらうんです。勇者という存在を」

「そんなこと、できるの?」

「はい。ぼくがあなたたちの仲間になります。ぼくが勇者一行となったら、父も無下にはできないでしょう」

「じゃあ決まりにゃん」

 いきなり猫ちゃんが割り込む。

 後ろ足で立ち上がると、前足をひょいひょい動かす。

 すると、空中に光の球が現れ、セレス王女に降り注いだ。

 王女の前に光る本が現れる。

 セレス王女はためらいもなくそれを手に取る。その瞬間、勇者一行の仲間になる儀式が完了した。

「これでセレスも下僕にゃん」

「ちょっと!セレス様は王女よ」

 思わず口を挟んだが……

「いいんです。これでみなさんと同じです。これからよろしくお願いします。ぼくのことはセレスと呼んでください」

 王女は柔らかく微笑んで、そう言った。

 ……ほんとに下僕でいいらしい。

 まあ、猫ちゃんのやることだし。わたしは深いため息をついて肩をすくめた。


 そのとき、ドアが開く。ルシアンが胸を張って入ってきた。

「みなさん。ありがとうございます。おかげで我がランガスの砦は守られました。我々の勝利です!」

 ……は?さっき逃げようとしてたやつが、なに勝利宣言してんの。

 わたしたちは冷めた目でルシアンを見つめるのだった。

「祝勝会の用意をしろ!盛大にやりましょう。英雄たちを称えるのです!」

 ルシアンが浮かれて叫ぶ。

 はぁ?なにが祝勝会なんだ?戦場で真っ先に逃げたのはどこのどいつだ。わたしは呆れ返る。

「ルシアンさま、少しお待ちください」

 セレス王女の声は冷たかった。

「あ、王女さまも大活躍だったと聞きました!さすが王女さま、幾多の軍略を操る戦の女神!」

 ルシアンは必死に媚びを売る。

 自分の立場、まだわかってないらしい。

「ルシアンさまにはお話があります」

「なんでしょうか」

 とぼけた顔。

「わたしたちを見捨てて逃げましたよね」

「い、いえ!私は王都に報告に行こうと……」

「王女を置いて逃げる。これが何を意味するか分かりますか?」

「ち、違います!私はなにも悪いことは……」

「王に対する反逆です」

「なっ……!」

 ルシアンの顔から血の気が引く。

「いいわけは諮問機関でやってください。わたしたちは忙しいのです。……この裏切者を捕らえなさい」

 セレス王女の一声で、近衛兵たちがルシアンの両腕を押さえ込む。

「待ってください!私は悪くない!許してください!」

 ルシアンは涙声で必死に叫ぶ。その姿に、わたしはゆっくり仮面を外して近づいた。ルシアンの目が驚愕で見開かれる。

「おまえは……シャーリー……!顔は……治ったのか……頼む、王女に言ってくれ!おまえからなら……!」

「それは無理ね」

 わたしは冷たく微笑む。

「わたし、元・諮問機関の人間だから。あそこがどういう場所か、よく知っているのよ」

「ひっ……」

「諮問機関……いえ、拷問機関の先輩たちにはね。あなたみたいな"顔だけ綺麗な裏切り者"をいたぶるのが大好きな変態が山ほどいるの。彼らの楽しみを奪うわけにはいかないでしょう?」

 ルシアンの顔が恐怖に歪み、膝が笑っている。

「せいぜい、長く"可愛がって"もらってね。何を白状しても、簡単には終わらせてもらえないわ。拷問機関って、そういうところだから」

「や、やめ……助けてくれ……!」

 悲鳴は虚しく、近衛兵に引きずられていく。英雄気取りだった男の末路は、あまりにも惨めだった。

 ……ざまあみろ。

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