06
とりあえず、戦争は終わった。兵士たちもぞろぞろと砦に戻ってくる。死地をくぐり抜けたあとの安堵で、みんな浮かれている。
肩を組んで歌うやつ。剣を振り回して踊るやつ。勝利の歌は波のように広がっていった。
そんななか……砦の入り口でやたら騒がしい集団があった。
どうやら兵士たちに囲まれているのは……じじいだ。
「……おい、じじい?」
「おお、レオン。ようやく帰ったか。わしもここを守りきったぞ」
え?今なんて言った?
「聞いてください!このおじいさん、すごかったんですよ!」
兵士のひとりが興奮気味に語り出す。
「魔王軍の魔法をぜんぶ、そのフライパンで打ち返したんです!まるで、テニスの名選手みたいに!」
「いやいや、嘘だろ……」
「本当なんです!あの火球も!あの雷撃も!ぜんぶ跳ね返したんです!なんなんですかこのおじいさんは」
「わしはただの料理人じゃよ」
じじいは頭をポリポリかきながら照れている。
……いやいやいやいや。
ただの料理人がフライパンで雷弾打ち返すな。
「でも、どうやって返したんだ?」
「簡単なことじゃ。フライパンの扱いには慣れておる。厨房で暇なときに、こうしてパンでボールを打ち合ってな。皆からは"厨房のマッケンロー"と呼ばれておったんじゃ」
…………。
厨房のマッケンロー?知らんぞそんな二つ名。
じじいの世代の昔のテニス選手なのか?俺は知らんぞ。
「じじい、いくぞ」
「おう。ではおぬしたち、またのう」
兵士たちの歓声を背に、じじいは胸を張って俺のあとに続いてくる。
なんで戦場の英雄扱いになってんだ、このフライパンじじい。役に立ったのは確かだが、突っ込みどころが多すぎる。本当に何者なんだよ、じじい。




