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勇者かわいい ~知らんけど、たぶん猫ちゃんがオワコン世界を救うお話~  作者: PYON
第三章 アルゴス王国第五王女セレス

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05

「もう遊びはやめ。お前らを舐めていたわ。人間にこんなやつらがいるなんてね」

 バーミラの瞳がぎらりと光る。杖を構え、殺気をあらわにして俺を睨みつける。とにかく、シャーリーと力を合わせて、こいつだけは。

「本気で相手をしてあげるわ」

 雷鳴が轟き、空気が震える。

「レオン、わたしの後ろに来て! 氷の壁で防ぐ!」

 シャーリーの声に従って後ろへ下がろうとした、そのとき。

 バーミラの動きがぴたりと止まった。鋭い目で俺たちの背後を見つめている。

「……あれは、なんだ?」

 嫌な予感がして俺も振り返る。

 ……そこには、とんでもない"何か"が天から降りてきていた。

 もふもふの茶色い毛に覆われた巨大な塔。

 いや、塔じゃない。まだ地面についていない。下の方には、丸くてピンクで……なんだかやわらかそうな肉球が、ぷにぷにと並んでいた。

 ……待てよ。見覚えあるぞ、このフォルム。毛、肉球、爪、あのバカでかいシルエット。

「……おいおい。あれ、猫ちゃんのおててだろ」

 顔を上げる。

 ……そこには、丸い瞳が俺たちをのぞき込んでいた。でかすぎる。地平線に月が二つ浮かんだみたいなスケール感。

 

 バーミラの顔が青ざめる。

「な、なんだこれは……! お前ら、人間が、邪神を……? ニャル……ラト……いや、まさかニャルラトテップか!?」

 勝手に誤解してくれている。いや違う。ちがうぞ。猫なんだよ。ただの。

 だが四天王は一歩退き、歯を食いしばって言った。

「……ただ、今になって出してきたということは、お前たちも制御できないのだな。わかった。今回は引こう。だが忘れるな……次は最初から全力でお前たちを潰す!」

 そう言い残し、バーミラは魔王軍を率いて撤退していった。

 ……残された俺たちは顔を見合わせ、しばし沈黙する。

 そして、上空の巨大な肉球が「どーん」と地面に押しつけられ、土煙が舞い上がる。

「……いや、ほんと。なんで戦争が猫のいたずらで終わるんだよ」

 俺は天を仰ぎ、思わずため息を漏らしたのだった。


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