仮面魔女シャーリー・メルク04
セレス王女からの命令……水計を凍らせろ。戦況を一変させる一手。わたしにしかできない役割。鼓動が耳に響く。失敗は許されない。
レオンに視線を送る。彼もすぐに察し、静かに後退する。あとはわたしの魔法に託された。
空に広がる青い光、その裂け目から轟音とともに滝のような水が落下する。
冷気が走る。タイミングを見誤れば、ただの洪水で終わる。ならば、わたしが氷に変える。すべてを。
「……今だ! アイスワールド!」
杖から奔った白光が滝を貫き、瞬く間に世界を変貌させていく。怒涛の水流は一瞬で凍りつき、氷の牙となって戦場を覆い尽くす。
ミノタウロスの巨体がまず捕らえられる。足から凍りつき、吠える声も氷に閉ざされ、わずか数秒で巨大な氷像と化した。
続いて、ダークエルフ……四天王バーミラ。その足元から白が広がり、冷気が衣を這い、指先から腕、胸、そして顔へ……。
氷の芸術品のように二体の像が完成する。息を呑む戦場。わたしは杖を握り締め、全身の力が抜けそうになるのを必死に堪えた。
「すげえな、お前の魔法」
レオンが笑い、親指を立てる。その頼もしさにわたしも口元が緩む。
彼はゆっくりと進み、まずミノタウロスの氷像を斬り砕いた。氷の破片が飛び散り、巨体はただの残骸に成り果てる。
勝利は目前。レオンは剣を構え、もうひとつの氷像に歩み寄る。
「これで終わりだ!」
剣が振り下ろされる。氷が裂ける音が響いた……その瞬間。
轟裂。氷像が内側から爆ぜる。氷片が刃のように飛び散り、わたしの頬をかすめる。
そこから現れたのは……なおも健在のバーミラ。
闇のオーラをまとい、氷を砕いて姿を現したその瞳は、怒りで血のように赤く燃えていた。
「危なかったわ……まさか、こんな奥の手を仕掛けてくるなんてね」
バーミラの声は低く、しかし震えるほどの怒気を帯びていた。
「逃げる時間は足りなかった。だが……闇の加護を身に纏えば、この程度、砕けるのよ!」
雷鳴が轟き、空を裂く稲妻が彼女の周囲を舞う。怒りに燃える四天王が、本当の姿をさらしたのだった……。




