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勇者かわいい ~知らんけど、たぶん猫ちゃんがオワコン世界を救うお話~  作者: PYON
第三章 アルゴス王国第五王女セレス

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仮面魔女シャーリー・メルク04

 セレス王女からの命令……水計を凍らせろ。戦況を一変させる一手。わたしにしかできない役割。鼓動が耳に響く。失敗は許されない。

 レオンに視線を送る。彼もすぐに察し、静かに後退する。あとはわたしの魔法に託された。

 空に広がる青い光、その裂け目から轟音とともに滝のような水が落下する。

 冷気が走る。タイミングを見誤れば、ただの洪水で終わる。ならば、わたしが氷に変える。すべてを。

「……今だ! アイスワールド!」

 杖から奔った白光が滝を貫き、瞬く間に世界を変貌させていく。怒涛の水流は一瞬で凍りつき、氷の牙となって戦場を覆い尽くす。

 ミノタウロスの巨体がまず捕らえられる。足から凍りつき、吠える声も氷に閉ざされ、わずか数秒で巨大な氷像と化した。

 続いて、ダークエルフ……四天王バーミラ。その足元から白が広がり、冷気が衣を這い、指先から腕、胸、そして顔へ……。

 氷の芸術品のように二体の像が完成する。息を呑む戦場。わたしは杖を握り締め、全身の力が抜けそうになるのを必死に堪えた。

「すげえな、お前の魔法」

 レオンが笑い、親指を立てる。その頼もしさにわたしも口元が緩む。

 彼はゆっくりと進み、まずミノタウロスの氷像を斬り砕いた。氷の破片が飛び散り、巨体はただの残骸に成り果てる。

 勝利は目前。レオンは剣を構え、もうひとつの氷像に歩み寄る。

「これで終わりだ!」

 剣が振り下ろされる。氷が裂ける音が響いた……その瞬間。

 轟裂。氷像が内側から爆ぜる。氷片が刃のように飛び散り、わたしの頬をかすめる。

 そこから現れたのは……なおも健在のバーミラ。

 闇のオーラをまとい、氷を砕いて姿を現したその瞳は、怒りで血のように赤く燃えていた。

「危なかったわ……まさか、こんな奥の手を仕掛けてくるなんてね」

 バーミラの声は低く、しかし震えるほどの怒気を帯びていた。

「逃げる時間は足りなかった。だが……闇の加護を身に纏えば、この程度、砕けるのよ!」

 雷鳴が轟き、空を裂く稲妻が彼女の周囲を舞う。怒りに燃える四天王が、本当の姿をさらしたのだった……。


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