アルゴス王国第五王女セレス05
アカシックレコードに映し出される戦場。すべての戦いの中で、もっとも重要なのは……四天王との一戦だ。ここで勝てば勝利は見える。ここで負ければ、すべてが瓦解する。
レオンさんとシャーリーさんは互角に戦っていた。だが、ダークエルフがミノタウロスを回復させた瞬間、均衡は崩れた。
いや、崩れたどころじゃない。こっちは消耗しているのに、敵は振り出しに戻っている。このままでは押し潰される。
撤退? 駄目だ。退けば総崩れになる。ならば、なにか、なにか手を打たねば!
ぼくが使えるのは戦略カード。火計も、地形変化も、もう切った。残るは……水計。
けれど、ただ水を浴びせるだけでは意味がない。重い水流に押し流されるのは味方も同じだ。手詰まりか? ここまでなのか?
そのとき、耳元で猫ちゃんの声が弾んだ。
「シャーリーは氷魔法が得意ニャン! 周りのものを全部凍らせるニャン!すごいニャン!」
「……!」
足りなかったピースが、音を立ててはまり込む。そうか……そういうことか!
ぼくはすぐさま呼びかける。
「シャーリーさん!」
「はい!」
「これから水計を発動します。大量の水が降り注ぎます。それを……凍らせてください!」
一瞬の沈黙。そして力強い返答。
「ええ、水を凍らせるだけなら簡単です!」
頼もしい声に胸が熱くなる。これで決める。これで、この戦いを終わらせる!
「お願いします、シャーリーさん。この戦い、終わらせましょう!」
ぼくは残された最後のカード……水計を掴む。掲げた瞬間、アカシックレコードに青い奔流が走った。カードがまばゆく輝き、戦場そのものが震える。
そして……天から、滝のような水が落下し始めたのだった。




