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勇者かわいい ~知らんけど、たぶん猫ちゃんがオワコン世界を救うお話~  作者: PYON
第三章 アルゴス王国第五王女セレス

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仮面魔女シャーリー・メルク03

 今度はわたしのターン。まだ切り札は見せない。氷の槍で十分だ。

「アイスジャベリン!」

 杖から放たれた氷槍は、いつもより数も速度も桁違いだった。十本の矢が閃光のごとく空を裂き、バーミラへ殺到する。わたし自身、目を疑う。これは……勇者の加護? 猫ちゃんの魔法?さっきのがんばれはただの激励じゃなかったの?

 驚いたのはバーミラも同じだった。闇の盾を張り、氷槍を受け止めながら目を見開く。

「……人間にしては、やるじゃない」

 その口調に焦りはない。むしろ愉しげに微笑んでいる。わたしの心臓が嫌な音を立てた。

 雷と闇、氷。わたしたちの魔法は互いに撃ち合い、ぶつかり合い、砕け散る。互角……そう思った。

 魔力勝負になれば、勝ち目はある。わたしはそう信じかけていた。だが。

 バーミラの視線がふいに逸れる。まるで、わたしとの戦いを無視するかのように。

「ミノス、大丈夫か?」

 雷の咆哮が響く戦場で、彼女は悠々と仲間の心配を口にした。わたしの氷槍はその隙を狙って飛ぶ。しかし、バーミラは片手間で闇の盾を張り、防いでみせた。余裕。……わたしなんて眼中にない。

 ミノタウロスは血にまみれ、満身創痍だった。その巨体を見やり、バーミラはあっさりと杖を掲げる。

「わかった。……立て」

 黒い闇が降り注ぎ、ミノタウロスを包む。次の瞬間、裂けた肉がふさがり、滴る血が止まり、あれほど削ってきた傷が……消えた。

「……っ!」

 喉の奥から声にならない悲鳴が漏れる。今までのレオンの必死の戦いが、すべて無駄に。わたしの魔力は、すでに底を見せ始めているのに。

 互角? 違う。わたしが勝手にそう思っていただけ。彼女は本気すら出していなかった。ただ、弄ばれていただけなんだ。心が折れそうになる。悔しさで胸が焼ける。どうして、わたしは……こんなに無力なんだろう。

 それでも、膝を折るわけにはいかない。絶望を飲み込んで、わたしは杖を握り直す。唇を噛みしめ、まだ続く雷と闇の奔流に、氷の壁を展開するのだった。


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