04
いける。ようやく、勝機が見えた。
斧の軌道が読めてきた。最初の圧倒的な恐怖はもうない。俺は猫のように低く、しなやかに身をひねり、剣を刻み込む。浅い傷ばかりだが、確実に奴の身体を削っている。
巨体が揺らぐ。呼吸が荒い。俺と同じように、疲労している。そうだ、これは根比べ。先に折れたほうが負ける。勝てる……勝てるぞ。
俺はさらに踏み込む。斧の影をすり抜け、剣を打ち込む。鉄の皮膚に手応え。傷が積み重なり、ミノスは血で染まっていた。
「……これで、終わりだ!」
俺は勝利を確信していた。そのときだった。
稲妻のような轟音が背後から走る。バーミラ。あの雷の魔女が、一瞬だけこちらに視線を向けていた。
「ミノス、大丈夫か」
「はい……しかし苦戦を……」
「ならば、立て」
バーミラの杖が天を裂く。次の瞬間、ミノスの頭上に闇が降り注いだ。それは炎でも雷でもない。癒しの闇。
裂けた肉がふさがる。血が止まり、皮膚が再び硬化していく。刻んできた傷が、瞬く間に消えていく。
「……嘘だろ」
全身が冷える。積み上げてきたものが、音を立てて崩れ去る。
「バーミラ様……感謝いたします!」
ミノスが雄叫びを上げた。さっきまで疲弊していたはずの声が、獣の咆哮へと変わる。さながら死地から蘇った怪物。まるで、すごろくのゴール直前で「振り出しに戻る」に止まった気分だ。いや、それ以上だ。今度のミノスは、最初よりも速く、強くなっている。希望が、粉々に砕けていく音がした。
勝てない。そう悟りながらも、俺は剣を構えるしかなかった。




