仮面魔女シャーリー・メルク02
わたしはダークエルフと向かい合った。
「おまえも魔導士か。我は魔王軍四天王……轟天の雷刃、バーミラ。さあ、魔術くらべといこう。人間ごとき、我が足元にも及ばぬがな」
声と同時に、空気が震える。その存在だけで、戦場全体が圧迫されるようだ。
「わたしは氷の魔女、シャーリー。魔族の魔法、見せてもらうわ」
「ではまずご挨拶だ」
バーミラが天に杖を掲げた瞬間、空が裂けた。轟音と閃光が重なり、稲妻が地を貫く。わたしの横に、黒煙を上げる巨大な穴が生じた。ただの「挨拶」でこの威力。中級どころか、上級魔術にも匹敵する雷撃だ。
「仮面をしていようと分かるぞ。わたしの魔法に圧倒され、心は怯えと絶望に震えている」
「それはどうかしら。むしろその饒舌さ……わたしの力を探っている証拠でしょう?」
わたしが仮面をかぶる理由。シャーリーであることを隠すため……それもある。だがそれ以上に、表情を悟らせないためだ。魔術は精神のぶつかり合い。カードゲームに似ている。どのカードを切るかを読ませた方が負ける。仮面は、その揺らぎを覆い隠すための武器だ。
「ぬかせ!」
次の雷撃が放たれた。今度はわたしを狙って。
「氷壁!」
咄嗟に展開した氷の盾が、頭上に広がる。瞬間、稲妻が直撃した。
轟音と光……しかし。氷は砕けなかった。それどころか雷撃を弾き返し、逆流させる。稲妻はバーミラの足元に落ち、石畳を爆ぜさせた。
バーミラは目を細め、やがて低く笑った。
「ふふ……なるほど。思った以上にやるではないか。久しぶりに楽しめそうだ」
「ええ。わたしも同じよ」
仮面の下で息を整え、無理やり口角を上げる。戦場の空気が再び張り詰めた。これは互角……いや、互角に見えるだけ。本当は一瞬でも気を抜けば即死する戦いだ。




